〜プロローグ〜
この物語を通して、私の作品の世界観を説明していきます。笑い有、涙も有。皆さんと一緒に、作品を完成させていけたら幸せです。
〜プロローグ〜
それは、見渡す限りの“死”であった。
小さな名もなき村――決して裕福ではなかったが、そこは豊かな自然に囲まれた安らぎの土地だった。
だが、今は絶息しそうな“死”の気配に包まれている。
破壊の限りを尽くされた、理不尽な暴力。
予兆もなく訪れた死神の、冷酷な大掃除。
その悪夢が具現化した世界に一人、少年は生き残った。
見上げた空は、ずっとずっと泣いている。
「――へぇ。生き残った幸福者がいたんだ」
力なく動けずにいた少年を見下ろす、薄青の瞳。
それは彼の意識を吸い込むように輝いていた。
「――君の名前は?」
乾いた喉から、少年はそれでも必死に訴える。この機会を逃がせば、もう絶対に助からないと知っていたからか。
「――ぼ、ぼく、は――」
彼女は、四苦八苦する彼をずっと待っていた。
その微笑みは、少年を応援しているかに優しくて。
「――ア、ル・ラー、ズ……」
頭を撫でる手は、まるで聖母のように温かい。
「――偉いぞ。よく言えたね」
だから、彼女は少年に努力の御褒美をあげたのだ。
「――私はクリスティーヌ・ルパン。
初めまして、アル・ラーズくん」
それが、今から200年前の話。
僕と義姉さんが出会った、奇跡の朝。
1515年、12月10日のことだった。
〜プロローグ 終〜