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第一話「終わりの日始まりの日」

 自分がやられて嫌なことは人にしてはいけません、いったい何人の人がこの言葉を聴いてきたのだろう、しかし実際に実行している人たちは皆無に等しい。



 そしてちょうど僕の目の前でも一般的に「カツアゲ」と呼ばれる行為が行われている。



 図体のでかい男達数人が小柄な少年を囲んでいる、男たちはにやにやしていて少年はとても怖がった様子だ。



 よからぬことをしようとしているのは明確、携帯で写真とムービーもとったし証拠も押さえた、さてと、仕事をしよう。



「えーっと君達ちょっといいかな?」



 恐る恐るぼくは声をかける、すると案の定ひらがなの「あ」に濁点を付けたような返事が返ってきた。



 こんな返事をするのはやっぱり不良の証拠だろうか?そんなことを考えていると痺れを切らした不良がこちらを睨む。



「何だぁお前は?正義の味方のつもりですか、あ?」



 ですかと付けて悪く聞こえたりいちいち語尾にあ?とか付けたりもう悪いにおいがぷんぷんするなこの人ら、やっぱり仕事をするしかないのかな。



とりあえず「弱いものいじめはよくないと思います」と言っておいたら案の定相手は怒り出した、何とも分かりやすい人たちだ。



 なめんじゃねえぞ!とか調子に乗るな!とかやっちまえ!とかお約束じみたことを言いながら数人の男が手を開いた。



 そこから不可思議なことが起こる。



 一人の手の平から雷が迸る、かなり圧縮されて野球のボールぐらいの大きさだが目がくらむような閃光を放つそれは雷と呼ぶに相応しいものだ。



 さらに別の男の手には草が生え、別の男は腕か鋼鉄と化し、別の男からは水の塊が出現する。



 この男たちは魔法が使える、だから男たちは水を使ったり雷を出したりできるのだ。



 でも僕は焦ることはしない、なぜなら僕も









 この人たちと同様に魔法が使えるからだ。















私立魔法学高等学校、この三十秒ぐらいで決めたような名前の学校が今僕達の町の上空に浮かんでいる。



 なぜ空に浮いているのかは分からない、町のみんなに聞いても「気がついたらあった」と答えるだけだ。



 一見ふざけている(特に名前が)様にも見えるこの学校だが入学希望者は意外と多い。



 理由のほとんどは空から町を見てみたいというものだった。



 そんな理由でも入学できる人がいるこの学校はいい加減だと思われがちだが入学できる人数はほとんどの高等学校と変わらない。



 今年の参加希望者は約千人ほどいたのだがそこで入学できるのは二百四十人、文字道理一握りである。



 そして僕、火守翔太(かがみしょうた)はその一握りの中に運よく入れた人間の一人だ。



 僕がこの学校に入学した動機は「なんとなく」である。



 なんとなくこの学校を希望した、そして一次審査であるペーパーテストを受けた、たったそれだけのことで一次試験を通過できてしまった。何とも拍子抜けした気分だ。



 ただ僕は動機がなんとなくのために通過できて嬉しいとかそういうことは思わなかった。



 僕と同じ学校だった友人も一次審査を通過した、このときに通過できた人間は千人中約六百人、後で聞いたけどこの人数は豊作だそうだ。



 一次審査を通過した僕達が次に受ける二次審査は「魔法能力開花」と呼ばれる審査。



 この学校の全ての人間は魔法が使える、理由はこの第二次審査で魔法能力を開花できた人間だけを生徒にしているから、すなわちここで能力が開花しないと入学できない、ということだ。



 テストの内容は簡単なものだった、集中し、自分の中に眠っている本質を呼び覚ませ、と言う内容だ。



 自分の魂の奥底に眠っているイメージを呼び、そのイメージが頭の中で具現化したら能力が開花すると説明を受ける、要するに目を閉じて集中してなにか見えたら成功と言うことらしい。



 僕はこの試験にあっさり合格した、目を閉じたら五分、いや三分としないうちに僕のまぶたの裏に小さな火がともった、たったこれだけのことで合格だというんだから拍子抜けもいいところだ。



 しかし友人は十分以上目を閉じたままいたのに何も見えず危うく夢の中に旅立ってしまいそうになったらしくそのまま友人は不合格となってしまった。



 そんなに難しいことでもなかったのにと思っていたら総合合格発表に移ると言うアナウンスが聞こえる、試験当日に合格発表だなんてせっかちすぎなんじゃないのだろうか?



 とにかく合格発表、今回通過できたのは四百名と半分以上が残っていた、その中で第一次審査の筆記試験の点数が高い人が入学できる。






 わずか数分で合格者の名前が記入された紙が張り出される、試験が終わって三十分も立っていないのにもう名前が書かれているなんて、これも魔法とやらの力なのかと考えながら僕は名前を見ていく。



 そして僕は自分の名前を見つける、ものの見事に合格してしまったのだ。



 何度も言うが僕はなんとなくで試験を受けたためあまり感動とかそんなのはなく、むしろ落ちた友人が可哀相だなと思うぐらいだった。



 何はともあれはれて僕は私立魔法高等学校の生徒のひとりとなったのだった。






 入学から二週間ぐらいしたある日、午後の授業に部活発表会というものが体育館で行われた。



 内容は説明するまでも無くその部の部員及び部長が部活動を紹介していくだけのものだった。



 僕は興味が無かったので聞き逃していたがとある部活動紹介のときに何故か惹かれてしまった。



 部活の名前は、生徒会。



 この学校の生徒会は部活動扱いなのかと何気ないことを思った、最初はそれだけだった、しかしこの生徒会と言う響きが何故か僕の耳に残った、残ってしまった。



 紹介が全て終わり生徒たちが体育館から出て行く、僕もそれに続こうとしたが壁に貼られた一枚の紙が目に留まった、それは生徒会に入部希望の生徒は生徒会室に来てくださいという内容と生徒会室への地図が描かれていた。



 しばらくボーっと見ていると行って見るかという考えが僕の中に浮かんだ、なんとなくでは行ったこの学校の部活動になぜ自分が興味を持ったのかは分からないがとにかく行ってみることにした。



 今思うとそれが終わりで始まりだったのかもしれない。



 今までの中身の無い生活の終わり、そして徐々に中身ができてくる人生の始まりは、これがきっかけだったのかもしれない。




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