転生したくらいで許されることなんてない
目にとめていただきありがとうございます。
どうぞよろしくお願いします。お正月からすみません、暗い話です。
私はフロランタン男爵家の養子だった。今はただのフローラ、23歳。
5年前に魔法学園で高位貴族の子どもたちを翻弄したかどで修道院に送られた娘。
魔法学園の卒業パーティーで、公爵令嬢に断罪返しをされた時に前世を思い出した。
「あ、これ、『薔薇は美しく咲く〜フローラの錬金生活〜』だったんだ」
ヒロインのフローラが様々なアイテムを錬金・錬成しながら幸せを掴んでいく、そんなゲームだったが、そのヒロインだったはずの私は攻略対象の第二王子、ジークフリード様の婚約者である侯爵令嬢アナベラ様に断罪返しをされたのだった。
おそらくアナベラ様は転生者だったのだろう。
でも私がそのことに気付いた時には既に、ヒロインとして多くの男の人をたぶらかし、女性陣に無礼を働き、嫌われていた。
だから、前世を思い出した時には
『もう少し早く思い出していれば…』
と思いましたとも。
でも、すでに断罪&断罪返しは行われた後。
私は大人しく修道院に行った。
この意識の『私』がしたことではないが、ガワであるフローラがしでかしたことだから仕方がない。そもそも親からも兄妹からも疎まれ、絶縁され、それしか選択肢はなかった。
だからと言って、自棄になったわけではない。真面目に生活した。
最初の一ヶ月は他の修道女たちから嫌われないように様子を見、その後は自分の魔力を込めた刺繍をしたお守りや元気薬を作りまくった。
脅威の売上を叩き出した私を修道院は『これは使える』と思ってくれたようで、冷遇することもなく、他の修道女たちと同様に扱ってくれた。
そして5年。
とうとう親が私に会いに来た。
「お前が人々の役に立とうと努力していると聞いた」
と。
本当はそのまま修道院で生活しても構わなかった。
何故なら、私は思い出した前世でも実はろくでなしだったから。
親友の彼氏を寝取って、そのことで親友から復讐されて命を落とし、転生したのだった。それが27歳の時。
そして今世でもトンデモなヒロインに転生してしまった。
なので、
『ああ、私は友人をあんなにも苦しめたのだ。そして今世でも…』
と反省した。それもあって真面目に生活したのだ。
前世の記憶を頼りにここでなにかしら世のため人のために生きて行こうと思っての5年間だった。
しかし、5年経って、両親から
「お前のその能力が男爵家を救うかもしれないのだ」
と言われ、心が動いた。
「お前が無礼を働いたアナベラ王妃が、現在妊娠中なのだが、体調が思わしくない。
もしもアナベラ様が助かれば、お前も許してもらい、うちもお前のせいで失った信用を取り戻すことができるかもしれない」
ゲームでは父親が外で作った子を養子に迎えたという身も蓋もない立場だったが、ここで数年生きていれば、まあのっぴきならない事情もあったのかもしれないと思えるようにはなり、また養子となり学園の生活で得たものもあったわけで…
私は一時という約束で男爵家に戻った。
「…お久しぶりね」
「その節は大変申し訳ないことを…」
5年ぶりに会ったアナベラ王妃は私を見て大層渋い顔だったが、
「では、悪阻の軽減をはかります…」
と私が手を差し出すと素直に握ってくださった。
この私に頼るなど、相当具合が悪いのだろう。
結局アナベラ様の悪阻は私の治癒能力で改善し、元気な男の子を出産された。
その後。
修道院に戻るか、持ち直した男爵家で暮らすかと問われた私は修道院に戻ることにした。
何故って、アナベラ様の治療のために王宮に滞在している数カ月に、多くの男性から誘われたからだ。
私はヒロインならではの魔力量と見た目でもって、殿方を惹きつける。それはいつまで経っても変わらないようだった。そして声をかけられた私は、正直、満更でもなかった。
満更でもない…それは恐ろしいことだった。
記憶が戻る前とは言え、学園でしでかし、修道院に送られ、反省したつもりだったのに、たった5年をそこで過ごし、元の場所に数ヶ月戻っただけで、『満更でもない』?…結局私と元のフローラは何も変わっていないのだと感じた。
どうも私は男性から好まれ易く、それをよしとする性質であるらしい。
でも、その先にあるのは誰にとっても地獄だと、私は知っている。
だから、大人しく修道院に戻ることにしたのだ。そこで、薬を作ったりお守りを作ったり、働きながら静かに真面目に生きていくことを選んだのだ。
「よく戻りましたね…でも本当に良かったのですか?」
修道院でシスターアグネスに訊かれた時、私は
「はい。私が生きていきたいと思うのはここなのです。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
と即答した。
私は自分を信じることができない。
どこまでいっても男性との関係とトラブルがついて回るように感じるし、多分その通りなのだろう。
ならばなるべくそのような場に身を置かないこと。それが私にできること。
「もしも、今回のアナベラ様のように困っている方がいらっしゃれば、お助けしたいと思っています。でもその後はここに戻ってきたいのです」
シスターアグネスは優しく微笑んでくださった。
「では、そのように」
「ありがとうございます」
私は自分の部屋に戻りながら前世の最後を思い出していた。
友人が背中を押した手の感触。人々の悲鳴。
落ちた線路の冷たさと硬さ。
迫りくる電車。
ホームで叫ぶ人々。
私を見下ろす友人の顔。
そして、衝撃。
それが私への罰。
転生しても私の罪は消えることはない。前世でも、今世でも。
今回のことで、同じことを繰り返す可能性を感じた今、私は修道院での暮らしを選んだ。
もう二度とあんなことをしでかさないように。
もう二度とあんな終わりを迎えることがないように。
そして私は修道院で2回の罪を償って生きていく。
もし、転生に気付くのがもう少し早くて、断罪返しを回避できていたら。また今回のことで還俗し、普通の生活に戻ったら…おそらく私は本当の意味で前世を反省せずにまた他人を傷つけた。
前世を反省したつもりで、幸せを掴み、自分本位に生きただろう。
転生したって、人間の本質はそう変わるものではない。
それでも、反省はできるのだ。
もしもこの先、本当に人々の役に立ちながら生きて、死を迎えることができたなら…その時こそ、本当の終わりを迎え、安らかな最期を得ることができるかもしれない。
それを願って、私は生きていく。
お読みくださりどうもありがとうございました。
フローラを転生させた神様は、彼女が人のために生涯の捧げたことを見届けて、彼女の次の生をまっさらな状態で準備します。もしもフローラが自分の欲を優先したならば、再び悲惨な最期を準備し、その記憶を持ったまま転生させるつもりでした。
転生しても人間の中身はそう変わりはないのではないか、結局は今の生き方に繋がるのではないか、自分の生き方は自分で責任を取るしかないだろう、という思いからで書きましたが厳しいでしょうか。死んだら終わり、では裏切られた方はたまったものではないかな、と。
後で読み返してあまりにどうかと思ったら削除するかもしれません、すみません。




