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変人おれごん未来の第6作執筆もよう悶々エッセイ  作者: おれごん未来


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第17話 進撃の日田

 進撃の巨人の作者であられます諫山創先生の地元、大分県は日田を訪ねてきました。ミュージアムで原画などの展示を目に焼きつけてきたのですけども、それ以上に印象的だったのはその日田という土地。とくに風土に目がいきました。


 大山ダムをシガンシナ区の壁に見立て、幼少期のエレンたちの銅像が設置されており。よい演出でした、実に雰囲気のある。驚くべき高さの壁をさらに上回る、恐るべき高さの巨人から見下ろされる恐怖。

 よくできていますがあれって、威圧するダムにインスパイアされて作品を起こしたのではないのですね。作品を世に問うたのは2006年で、ダムの完成は2012年。それ以前は建設中でしたし、先生は工事現場を見上げることもなかったでしょうし。


 私はダムとは別のインスパイア先をみつけました。

 日田に実際に行ってみて感じたのは山あいの土地であること。それほど高くない山はしかしすぐそこに迫っていて、ぐるり360度を囲い、敢えて非難される言葉を選べば圧迫感のある。たいへん窮屈な土地。まるで壁内、シガンシナ区のようでした。

 少子高齢化は当然のこと、あの土地で盛んな林業は衰退の一途、明るい未来は見えづらく。真綿で首が締まるような閉塞感。それらを諫山先生が当時、憎からず思っていたとはおれごんには考えられないのです。

 先生が壁に感じておられた。それはダムではなく、あの山々だった。若き日の諫山先生はおそらく、あの窮屈なシガンシナ区を出て海を見たかったのでしょう。


 では海とはいったい。

 日田という地域は海に面した大分県でも内陸部に位置し、九州を人体に見立てたならみぞおちくらいに位置するど真ん中のまち。物理的に海は遠い。

 電車は急峻な山あいを縫うぶん道路よりも遠く、値段は張る。向かうのならバス。自転車だったら一泊二日は覚悟が必要。学生の身分であったなら、心理的な遠さは推して知るべし。

 でも海とはそんな物質的な意味じゃない。

 作品内と同様、海とは外界の象徴だったのだろうと思います。明るいかどうかすら未知の、しかし未来のあるところ。


 部活の先輩という、わけのわからない奇行種を倒して。

 受験とかいう、わけのわからない知性型の巨人たちの首を懸命に薙いで。

 やっとの思いで幾多のハードルを超え、かんたんに県外くらいは出られるようになって。海を。外界に出たら。


 世界はただ、綺麗な景色が存在するだけの場所ではなかった。ヒトが無数に住み、ヒトの争いの絶えない土地でしかなかった。これがほとほと残念で。

 おれごんは愚推します。おそらく諫山先生はそうした幼少期からの実体験を作品に落とし込んだのではないでしょうか。


 サンタクロースを信じていた私たちは、無闇にヒトの世を信じていました。ところが成長するほどに手に入れるのは醜聞ばかり。歴史の教科書も、毎朝のニュースでも。知ってはいたけれど。それだけじゃないとどこかで信じていた。信じていたのに。


 当初ヒト対得体の知れない巨人だと想像した物語は、結局ヒト対ヒトでしかなかった。これを残念に感じるのはお門違い。諫山先生はこう描きたいと志し、そう描き切った。


 ヒトを見限ったのかと思いきや。作品はヒットし、あらゆるものを得た先生の、故郷へ相対した行動は恩返しでした。イラストひとつの寄稿も時間をかけ、何点であっても応じる。

 故郷はやがて(いづ)る場所ではあったけれど、なにも忌み嫌う場所じゃなかった。何もかもを一度捨てて出てきたけれど、唾棄すべき土地ではなかった。錦を飾るなんてどこかでおこがましいと感じるけれど、失いたくない、かけがえのない地だった。

 人間社会はもう、どうしようもないほど残念だけれど、もっと小さく、隣人だけは信じられる。一人ひとりは信じられる。信じていたい。

 あの作品にはきっと、諦めと同じくらいに希望が詰まっているのだと、私は思います。

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