表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/20

平凡な事務員、救出される

残酷な表現が続きます。ご注意ください。

ふと意識に灯がともり、徐々に感覚が戻ってくる。

ひどい頭痛と身体の痛み。

冷たいタイルの感触が、体温を奪っていくようで、寒い。

目を開けることさえ億劫だ。


少しずつ覚醒する中で、知らない男達の声がする。


「一体これはどういうことだ」

「これを着た男が潜伏していました」

「この紋章は!王城関係者か・・・なぜここが!」

「分かりません」


切迫した様子。言葉が、この国のものと違う・・・。

これは隣国フリューゲル帝国の言語。


ここはどこだ?なんで俺はこんなところにいるのだろうか・・・。


「そこに転がっている男がそうか?」

「はい。対応したものの話では、戦闘訓練を受けてはいないだろうと。グレル・アースレムと制服に刺繍がありましたが、こちらの情報に該当者はおりませんでした」

「最近入宮したのか、あるいは・・・王宮の状況は?」

「潜入部隊からは、第二皇女殿下に関する計画は成功した、と早朝に報告が」

「予定通り、ということか・・・」


王宮、潜入・・・。

まさか、この男たちが、第二皇女殿下を・・・。

タイルを靴底が叩く音が近づいてくる。

まぶたの裏が明るくなったと思うと、急に髪を引っ張られた。


「があっ・・・!」


たまらず目を開けるが、視界がマーブル状に歪み、気持ちが悪い。


「・・・おい、お前は誰だ?」


気持ち悪さと頭部の激痛で、口をはくはくさせるしかなかった。


「吐かせようとしたそうですが、頭をやりすぎてしまったようで」

「ふん・・・」


頭部の痛みがふっと消えると、顔がタイルとぶつかる。

痛みと口の中の血の味にしばらく咳こむしかなかった。


「どのようにいたしましょうか」

「酒を飲ませて、川に放り込んでおけ。王宮職員のスキャンダルにでもなれば、計画も運びやすい」

「こちらの衣服については?」

「後々使えるかもしれない。潜入部隊にでも渡しておけ」

「御意に」

「閣下!衛兵に囲まれています!」

「何!?」


タイル越しに突然振動が伝わってきた。多くの人間が走っている気配だ。


「一体、どうして・・・」

「どうしてだろうね?」


急に、知っている声が俺の頭上で聞こえた。


「隊長!人が一人倒れています!」

「王国騎士団だ!貴殿らを暴行罪の疑いで連行する」

「・・・転移魔法・・なのか。そんな、こんな人数を」


ぼんやりとした視界でも分かるほどの人影が急に目の前に現れた。

俺の髪を掴んでいただろう男と、その部下はあっという間に取り囲まれ拘束されていた。


「離せ!王国にこんな魔法技術があるなんて聞いたことはないぞ!外交問題にしてやる!」

「貴殿の顔には覚えがあります。フリューゲル帝国の大使殿。なぜ、こんな場所に」

「尋問は尋問室でいいよね?とりあえず送っていこうか?」

「ああ、通常連行ではそれこそ外交問題になりそうだ」


やはり、一人だけ声に聞き覚えがある。


「意識はありますか?グレル・アースレム事務官っすよね?」


誰かに声をかけられている。が、反応できない。頭痛がひどい。


「隊長!アースレム事務官の様子が・・・」


ああ、痛い。逃れたい・・・。

激痛から逃れるように、俺は意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ