【腹が減っては】肉はいくらあっても困らない【戦はできぬ】
ことって入力して変換すると「殊」になるのどうにかなんねぇかな。普通「事」だと思うだけどなァ
池袋東ダンジョンの深層7層でオークディザスターを数時間狩り続け、俺は満足した。し、肉の仕込みもあるのでさっさと帰ることにする。今日は妹は友人と遊びに行っているみたいだが19時頃には帰ってくるからな。これ以上潜っていると妹の帰還ピッタリにあったかい晩飯を提供できないかもしれん。それは緊急事態だ。
「じゃ、そろそろ帰る。」
:もちろん最速でな!
:喋るなよ?舌噛むぜェ
「【憑依転換】フウ」
あくまで憑依は眷属の実体化ではなく、眷属の魔力を纏う行為なので何度憑依し直そうが特に眷属たちの負担にはならない。仮に負担があるなら頻繁に憑依なんてできないし。ま、負担があろうとなかろうと今度上質な魔石をあげる。眷属たちは魔力の塊なので実体化しても俺と同じ飯を食っても意味がないのだ。残念なことに。
このダンジョンはそれなりの頻度で来るので各階層の最短ルートは覚えている。そうでなくとも最悪上空に跳んで道を確認すればいい。あと道中の魔物はやばそうなの以外全力で無視。
「……20分でダンジョン抜ける。」
:深層7層から上層1層まで20分かぁ…
:これ絶対多めに見積もってるぅ
:RTAかな?
:帰宅部RTAですね間違いない。
宣言したしさっさと行く。好都合なことに深層を探索している同業者にはほぼ会わないので素通り。でも一応配信だ。無言はつまらないか。軽い雑談でもする。
「ん。風になるのは中々良い。お前らもやってみるべき」
:いや~、ドローンがギリギリ追える今の速度でもちょ~っと無理ですね。
:わぁ楽しそー(白目)
:イヤー、オレ風属性の適正ないからデキナイワー。アー、ザンネンダナァ(棒)
:なお、深層4層到達の模様。
:早すぎぃ!
:そういえば今日のご飯何にするの?
「んー……生姜焼き。」
:オークディザスターの生姜焼きかぁ。うまそー。
:あー、俺も生姜焼き食いたくなってきたな。生姜チューブあったかな。
:白狐さんは酒飲むの?
「飲まない。てか飲めない。まだ18」
:え!?高3ってことォ⁉
「高卒。探索者で稼いでるから就職必要ナシ。」
:マジかぁ良いなァ
:考え直せ?この人が特殊なだけや
:せやぞ。この人の配信だと忘れられがちだけどダンジョンなんて本来危険地帯やからな
:凡人は普通に働いた方がいい定期
:なお、下層9層到達。5分経過
:階層報告ニキ有能
それから視聴者と雑談しながら中層5層に辿り着いた。
「ここからは壁沿いに行った方が速い。」
:下層以降は極端に広くなるもんなぁ
:現在11分経過。
:階層報告ニキありがとう!
:まじではえーな。これでドローンが追従できるギリギリの速度なんやろ?
中層3層に到達したとき、事件は起こった。俺にじゃないけど。
何かがすごい勢いで壁にたたきつけられる音がした。方向的に丁度俺の行く先と被っている。…探索者同士のトラブルならスルーしよう。一応法律でダンジョン内での私闘及び探索者同士の殺し合いは禁止だけど、それを無視する輩は一定数いる。そういうのは関わるだけ無駄。
「……」
:お?急に止まってどしたん?
:これは白狐さんのお耳が何か事件を捉えたと見たわ!
「……スピードアップ。ドローン抱える。」
:マジでなにかあるっぽいな
:え?え?カメラ何も音拾ってないっスよ?
:この人耳がはちゃめちゃに良いのよ。この階層程度ならフロア全体の音も聞こうと思えば聞こえるんじゃないかしら。
音の方へ向かうとなにやら女性が壁にもたれ掛かっていた。そしてそこに迫る一匹のオーク。んー。アレは…斥候か。ってことはオークキングダムかな。稀にいる階層移動が可能な変異個体に違いない。
変異個体自体はどこのダンジョン、どこの階層でも誕生しうるけど、その中で階層移動が可能なやつがたまに生まれる。普通、変異個体は強さのランクが通常個体よりも跳ね上がるけどこの手の個体は変異性を階層移動に振っているのか強さは元の個体と変わらないことが多い。
そしてあれが一匹の斥候ならまだ今回のオークキングダムはまだ軍団生み出してないな。なら旨い肉が落ちるかも?……でも横入りと漁夫はタブー。まぁ今はオークディザスターの肉が大量にあるからなくても良いな。俺は減速することなくそのまま斥候オークに近づき撥ね飛ばした。
「ん、邪魔」
:邪w魔w
「お姉さん、大丈夫?」
声をかけてみるが目の前の女性は意識が朦朧としかかっているかな。
:この子…人気ダンチューバーの風繰天音ちゃんじゃないか?
:え!?あの数多のダンチューバーを輩出している【プリズム☆ステラ】事務所所属でチャンネル登録者70万人越えで探索者歴1年未満で中層までソロでいける系女子高生の風繰天音ちゃんだと⁉
:めちゃ詳しい解説するじゃん。ワンピースのモブかよテメェはよォ?
:くっそ早口で言ってそう(偏見)
「【眷属召喚】モエ。よろしく」「コン!」
今回召喚したのはモエ。火属性の子だ。そして出来ることはなんと回復。イメージとしては某海賊王漫画の不死鳥の能力者みたいな感じで治癒の炎を扱える。
俺が使える唯一の回復だったりする。一応全ての属性に回復魔法は存在するけど、うちの眷属は一つのことに特化している。モエなら回復。ホウなら索敵。フウなら身体強化みたいに。
「あ!私の目の前にいたオーク!どうなりましたか⁉変異個体だったんです!」
あ、そうだった。斥候に手を出す気はないんだった。うっかり轢き殺してしまった。嫌っていた漁夫になったので相手の性格は分からんが謝罪はしとこ。
「ん?……獲物を横取りして申し訳ない。帰り道に居て邪魔だった。」
「え?獲物…邪魔…え?」
何やら困惑しているみたいだがきっとまだぼんやりしているのだろう。
:誰だってそーなる。俺もこーなるもん。
:明らかに獲物だったのは天音ちゃんの方なんだよなぁ…
:白狐さんっていつもそうですよね!他の探索者も割と気軽に下層の魔物くらい倒せると思ってる!探索者のことなんだと思ってるんですか⁉
:白狐さん「?下層くらいならソロでもいける。違う?」
:言いそうww
「ん。でも安心するのはまだ早い。本命が来る」
「本命…?」
「そう。さっきのアレはただの斥候。証拠にほら、ドロップない。」
「ホントだ…」
オークキングダムのイヤな所だよココ。奴の生み出す軍隊は魔力を持って生み出しているから倒しても旨味が無い。しかも魔力を消耗したらドロップ品質は下がる。割に合わない。そして斥候が居た場所から影溜まりが広がり本体が姿を現す。全長3M越え、一丁前に王冠のようなものを被ったモンスター。しかも軍隊を自前で魔力のある限り生み出せるからな。
「ブモォッ!」
随分と血気盛んな王様だ。登場するや俺に殴りかかってくるのだから。きっと自ら前線に立ち部下を困らせる系の獅子王なのかもしれない。こいつは豚だが。しかし俺はこの王様の拳をなんなく受け止める。
「ん。こいつはオークキングダム。下層第5層フロアボス、そして6層以降の徘徊系雑魚。」
「こいつは魔力を使って軍隊を生み出す。そしてそれはキングを討たない限り終わらない。だから【オークの王国】。そして、こいつが落とす肉は死ぬほど旨い。」
「え?」
:大事な事なので二度は言わずとも強調しています。
:でもこの人明らかに軍隊呼ばせる気だよ!
:なんだろうな…初見の僕でも分かりますこのあと一方的な蹂躙が待ってそうですね。
:この人絶対どうやって軍隊捌きつつ肉を落とすかしか考えてないゾ。
:狩人の目してるもんな。
……適度に軍隊を呼ばせたうえで肉のドロップ狙う。
主人公視点でも1話に合流しました。あ、苦戦はないです。
そういや白狐さんの仮面どういう仕組みやねん⁉→Vtuberみたいな感じで動いてる思ってくださいな。




