大人になるんだって
子供はいつか大人になる。
それが世界の理で、覆ることはない。
20だった基準は18になり、大人へのカウントダウンは短くなった。
幼い頃、僕は早く大人になりたいと純粋に願っていた。
けれど今は、大人になりたくない。
――大人というものが、よく分からなくなったからだ。
昔、大人は無条件にかっこよくて、強くて、僕を助けてくれる存在だと思っていた。
でも、実際は違った。
大人だって滑稽で、我儘で、矛盾している。
社会は理不尽で、不条理がまかり通る。
そんな世界で生きる大人になりたくなかった。
そもそも、どうしたら大人になれるのだろう。
事務的な電話を取ることもできない。
書類の書き方も分からない。
礼儀作法もおぼつかないし、年中行事なんて覚えていない。
夢ばかり見て、現実逃避をしている。
こんな僕のどこに、大人になれる要素があるのだろうか。
ねえ、大人たち。
僕に教えてほしい。
どうすれば大人になれる?
何をすればいい? 何を捨てればいい?
――こんな残酷な問いを投げかける僕は、もう大人に近いのかもしれない。
あと数年で、僕は大人になる。
それは変わらない事実だ。
でも、きっと、大人になれないままなのだろう。
だって、夢を捨てきれないから。
大人になりたいと願ったあの日から、僕は何も変わっていない。
ただ、夢を捨てる覚悟を持っただけだ。
誰のためでもなく。
自分のためでもなく。
ただ、世界の理に沿って。
「僕は今日、大人になった」