ハンカチ
誕生日にハンカチをもらった。
うすいピンクですみっこにウサギのししゅうがされている。
少しだけ大人っぽくてかわいい
『ありがとう、おじいちゃん』
中学生になってソフトテニス部に入った。
大事な大会のとき、右のポケットに入ってるハンカチはあの日貰ったもので、最近は少し子供っぽいのではと思っている。
『大丈夫、大丈夫、一人じゃない』軽くハンカチを握った。
『ほら、行こう』
同じハンカチを持っていたペアの子が手を引いて、私たちはコートに足を踏み入れた。
夏は終わった。悲しいはずなのにどこかすがすがしい。
軽く汗を拭きたくて取り出したのは、あのハンカチだった。
『あのさ、一緒にできて良かった』
『私もだよ』
二匹のウサギが向かい合っていた。
ハンカチは手巾とも書く。基本的にはシュキと読むが、手切れ(テギレ)と読むときもあるそうだ。昔の人は手切れから縁を切るという連想をし、今でも贈り物としてはあまり喜ばれないことがあるらしい。
でも、おじいちゃんがくれたから出会えた仲間・恩師がいる。
私は縁を繋ぐのを助けるものだと思っている。水で悪い縁を流して、それを拭き取ってくれる、そう思うことにしとく。
『いってきます!』新しい制服を身にまとって私は一歩を踏み出した。
もちろん、右ポケットにはあのハンカチが入っている。