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太眉は呆気なく息絶えた
静まった夜、ふと視界の隅に影を感じた。
振り返り目をやると、そこには何もない。
いや、何もいなかった。そう言い聞かせる。
カーテンの裾をめくる勇気もなく作業を続ける。
だが数分もしないうちにまた影は現れた。
今度は端末画面越し、その視界の先に捉えてしまった。
距離は1メートルと少し。
急ぎつつ振動を立てないよう、殺虫缶まで駆け寄る。
振り返ると太い眉毛が、部屋の隅へと歩を進める。
今しかない、殺るんだ。
そう心に決め、トリガーに指をかけた。
白い煙が立ち上る。
入念に執念深く吹き付ける。
太眉は呆気なく息絶えた。
彼に羽を与えなかった事を神に感謝した。
死体を自然に帰し、元いた場所へ還れと願う。
ドアを閉めて部屋へと戻った。
静かな夜を取り戻……
「ブブッ」
新たな羽音に背筋が伸びた。