掴め!! 新たな世界
たぶん、聞き間違え。そう、キキマチガエ......
「あのぉ〜 女王様? すみません、私の耳がおかしいみたいです。『私の娘を貰ってくれますか』って聞こえてしまって......」
「いえ、ユミナ様の耳は正常です。私の娘......」
マリアさんが自分の娘さんの名前を言おうとした瞬間———
「女王様っ!!!」
広間の両扉が勢いよく開かれる。
入ってきたのは女騎士さんだった。
私とマリアさんの前にマリアさんの護衛が立つ。
「騒々しいぞ、何事だ」
息を切らす女騎士さん。
「姫様が......脱走しました!!!」
女騎士さんの言葉で広間がざわつく。
「はぁ〜 あの子はまた......」
深いため息だった。さっきまでの柔らかい微笑みが嘘に見えるくらい残念な表情を浮かべてる。
姫様って事は......マリアさんの娘さん。てか、脱走って......
「申し訳ありません、ユミナ様。みなさん、リーナを探してください」
女王からの命令で一斉に動き出す従者達。広間に残ったのはマリアさんの護衛二人と私とアイリスだけ。
「あんなに人がいたのに......」
「かなりの人数を動員しないとリーナは捕まらなくて......昔から脱走癖がありまして」
心底悩んでいるのか、頭を抱えているマリアさん。
「長年悩んでいましたが、お母様から助言をいただきまして」
「『助言』ですか?」
「はい、ユミナ様の従者達は一癖も二癖もある方々。彼女らを一斉に束ね、ユミナ様のためだけに行動する忠義心溢れる方々。ユミナ様の下にいれば、アホ娘も幸せになれると......」
首だけを後ろに向ける。首を人間の限界ギリギリまで傾ける。
「ア〜イ〜リ〜ス〜」
私と目線を合わせない。口笛まで吹く始末。
クッソー......アイリスの用件はこれか!!要は自分の娘が苦労しているから他の人になすりつけようって事か。
正直めんどくさい事この上ない。
「一応、言っておくが......ここで逃げれば吸血鬼族を敵に回すぞ」
一瞬にして移動したアイリスは耳元で脅迫してきた。
「脅迫反対。てか、なんで、こんな厄介事に巻き込むのよ!?」
「いや〜 妾もな、孫娘をどうにかしたいと悩んでいたが解決策が一向に閃かなくてな。そんな時、天は妾を救ってくれた。吸血鬼族の恩人でもある星霊族のヴァルゴの心を溶かしてくれた者の登場だ。この娘ならリーナもなんとかしてくれると思ってな」
「私は別に大層な事はしてないけど?」
「謙遜するな。では、ヨロシク!!」
「なんて勝手な......」
............いや、待てよユミナちゃん。これはチャンスではないか。
ヴァルゴ達に抱きついても香りを楽しめなかった。
王族、しかも女王様の娘、つまり姫様。高貴な人にはオーラが出ているはず......
自分の思考が残念になってはいるが、私の心を完全回復するために。私は恐れない!!
女の香りを求めて、加速する




