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ソロプレイ中に人外NPCを助けたら、女型ユニークモンスターだけに囲まれるVR女王に就任した件  作者: 麻莉
シーズン1 2章 絶望は断ち切れ、希望は繋ぎ紡がれる
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頭脳プレイは似合わない人もいる

サブタイを”キラキラばにーがーるを着たい集団は正座がデフォルト”、”アナタの言葉が理性を崩壊することに気づかないといけない”、”微かな望みをカードにカケヨ”と悩んでいました。



「助けてくれて、ありがとう。私はクイーンと言う」


「あ、初めまして…………ユ、ユミナと申します」


 クイーンさんは顎に手を置き、クスクス微笑む。

「そんなに畏まることはないよ」


「すみません、私……人見知りで」

 やっぱり初めて会う人に対しては現実でもゲームでも慣れない。そう、慣れないんだ。でも......

 なんだろう。初めて会った気がしない。

 と、とりあえず何か言わないと。静寂の空間は落ち着かない。



「えっと、大丈夫ですか? 急に倒れてビックリしました」


「アハハ、すまない。道に迷ったことと状態異常になってしまって」


 まさか、過去に一度進んで以来のこの場所に別ステージがあるとは思わなかった。初めて遭遇する敵の攻撃を喰らってしまい、火傷・軽い麻痺・毒・腕の一部が凍傷の状態異常のフルコースを受けてしまい、そのまま倒れてしまった。


 全く情けない。もしもここにヴェインがいれば腹を抱えて爆笑していたかもしれない。



「状態異常は私が解除しましたので、もう大丈夫ですよ」


 私が受けたのはそこそこに上位の状態異常攻撃になっていた。序盤のモンスターが繰り出す状態異常攻撃なら持っている回復アイテムだけで事足りるが、この森で出くわしたモンスターが放った攻撃はどれも強力で持っていた回復アイテムでは焼け石に水だった。

 それをこの桃髪の女の子は簡単に解除してくれた。中々に”できる”プレイヤーだと感じた。

 あのアホ(ヴェイン)はユミナの後ろにいる女騎士にご執心だけど、私は目の前にいるユミナが少々、気になっている。防具類は序盤って位のレア度。でも、持っている武器が釣り合わない。おそらく神々しい杖の性能のおかげで私の状態異常が治ったと考えている。




「で、早速本題に移るんですが……ここで何をやってたんですか?」


 当然の反応。街やその周辺で遭遇するなら単なる偶然で済む。が、今私たちがいるのは森の最奥。出会うこと事態、奇跡に近い。

 ここは変な例え話とかでお茶を濁す手も勿論、ある。しかし、このユミナと名乗るプレイヤーの背後にいる人物からの濃度の高い威圧が私にのしかかる。

 ヴェインの目的の人物が私の目の前にいるのは朗報。初めてその素顔を見たときには女として負けたと感じた。ゲームの一キャラに対して何言ってるんだと思うが、それだけの美貌を女騎士は持っている。

 それとは裏腹に危険人物でもあった。


 女騎士から放たれる威圧。「オニキス・オンライン」で現在、解放されている十二番目の街「サングリエ」。終盤の街ということで出現するモンスターはどれも強力だった。ギルドの最大戦力でやっと倒せるレベルのモンスターたち。しかし、そんな凶悪なモンスターとは雲泥の差を見せつけられた。


 ここで下手なことを言えば、女騎士が持っている禍々しい片手剣で首と胴体が分離される。

 と、重く考えた私だがよくよく考えれば目的は達成している。


 ”件の女騎士を見つける”。それがヴェインが私に言った罰。もう見つけたのなら、後は私の勝手に動いても問題はない。ヴェインにその後、何かを言われても”明確な指示を出さなかったヤツが悪い”と言える。

 ヴェインは変な所で頭が堅いから、苦悩顔になると思うけど、許してくれる。


 なら、ここは......


「実は、ユミナの後ろにいる女騎士さんを見つけるようにとギルマスから言われてね」


 そう、ここはバカ正直に答えることが最も安全でリスクの少ない行動。



「やっぱり......」

 しばし考えているユミナ。

 それにしてもユミナとは完全に初対面であるはずなのに、初めて会った気がしない。

 もしかしたら、どこかの街やフィールドなどで見たことがあるかもしれない。

 まぁ、今考えることはそんなことではない。


「やっぱり、さぁ~ ヴァルゴとの冒険は諦めるしかないかな」


 ユミナの反応に周りがざわつく。

 牛みたいな人と聖女アシリアちゃんに似ている女の子は爆笑。赤髪の女の子はユミナに何か言っている。

 そして、私を威圧して警戒度マックスの女騎士は顔面蒼白になりながら四つん這いになっていた。


「お嬢......ユミナ様。やはり私はいらない子なんですね」


「いや、そうじゃなくて」


「ヴァルゴ、お疲れさま~ アハハ!」


「安心しろ。お嬢のことはアタイたちが守るから~ アハハ!」


「ちょっと、ユミナ。それは酷くない?」


「いや、だから。そうじゃなくて」


「私の何が不満なんですか? 魅力ですか? お嬢様との歳の差で価値観が違うからですか? ()ですか? もっとお嬢様を()()ないといけないんですか? 欲求不満なんですか、お嬢様は。もしくは私に飽きてしまったんですか? 新しい女性を次々捕まえて、古い女は用済みってことですか? 」


「あのね、うん。ちゃんとした訳を言うから......その口、閉じてくれるかしら」


「お嬢様の言うことはなんでも従いますから。以前装備した”ばにーがーる”? なる物も着ますから」


「えっ、ユミナ!? アンタ、ヴァルゴにバニーガール装備、着させたの? スクショしてない? お願い、あんなダイナマイトボディのバニーガール姿なんてユニークモンスターよりもレア度が高いよ。全部はレーティング的に見られないと思うけど、一部でも見られるなんて至福の粋よ。なんなら私に受けた罰ゲームを私に何倍にして実行していいから。お願い、ユミナ様~~」


「アクイローネさんがあそこまでテンションが高いということは余程の装備。あの、ユミナ様。アタシにもその”ばにーがーる”を着てみたいです!!」


「面白そうだから、アタイも!!」









「おいっ!」


 私から発せられたドスの効いた声が響く。

 四人ともビクつく。私を見た四人は小刻みに震えていた。


「正座」


 一糸乱れない動きで私の前に正座になる四人。

 仁王立ちになった私は四人を見下した。


「まずは私の言葉を聞きなさい」



 私が声を出す度に震えが増幅していった四人。


「始めにヴァルゴ。私が言ったのはこれ以上、人目につくと貴女との旅が困難になるから、解決策を用意しよう、ということです。決して貴女を見捨てたりしません」


「はい......」


 そこから皆に冷酷な声で時間をかけてしゃべったが、自分が何を言ったのか覚えていなかった。



「そこで待ってなさい」



 なんか苦笑いをしているクイーンさん。

「すみません、お見苦しい光景を見せてしまって」


「いや、私は気にしていないが......なんというかスゴいな。ユミナは」


「慣れれば......誰でもできますよ。まぁ、時々適当にあしらっていることもありますけど」


「あと......すまないな。私のせいで」


「いえ、私がもっと用心すればよかったんです」


 ヴァルゴたちとの旅。口では言うのは簡単だ。三番目の街での人集り。先程戦ったレッドプレイヤー。現時点ではなんとか対処できているが、この先どうなるのか私でも分からない。

 下手したらみんなが危険に晒される可能性だってある。人里離れてのゲーム生活もサバイバル感があってまた別の楽しみもあるが......やっぱりクイーンさんのように別のプレイヤーとも一緒に楽しみたい。それを言うならヴァルゴたちと新しい街の散策もしたい。同時に叶う方法はないのか。要はどちらかがどちらを見られず楽しめればいい。


 見られず......見えない......えない。透明人間ならどうだ。


 このゲームのプレイヤー総人口は分からない。NPCもしかり。なので、全ての人間を透明人間にすることは現実的に不可能。まぁ、みんながかくれんぼガチ勢で毎日やれるなら可能かもしれない、が。兎に角、全員はできなくても数人なら......条件次第でできるかも。

 で、今私がいる場所はまさにうってつけの場所。タイミング良すぎるのも困り者。


 と、なれば私の最優先事項は......やっぱり。


「タウロス」


 後ろ向きでもタウロスがビクッと体を揺らすのが分かる。

 未だに私が怖くて、動けずにいる。少しやり過ぎたと感じているけど......まぁ、いいか。


「な、なんでしょうか。ユミナ様......」


「いつも通りで良いわ。相談なんだけど、あの洋館にいる幽霊モンスターからドロップするアイテムで忍者......人から隠れれる装備品とか生産できたりは可能?」


「お化けみたいに完全に透けることが可能な装備品はできないけど、時間制限アリの程度は」


「なら、今から今後の行動をお伝えします」


 振り返った私を見て、背筋を伸ばす。正座姿だけど......


「みんなにはあの洋館に生息している幽霊モンスターのドロップ品並びに回収可能なアイテムを全て回収します」


「全てですか......」


「そうよ、アリエス。数が多ければ多いほど。透明人間になれる装備が作れる。それをみんなに着させれば、街中でも私と散策ができる。人目を気にせずに、ね」


 みんなには申し訳ないと思っている。現状はこれを軸にプレイヤーからの捜索を回避していく。もしも、より効率的な解決法ができたときにはそれも取り入れる。


「ですが、今のみんなは少々落ち込んでいます」


 まぁ、私が完全に主犯なんだけど。


「そこで、だれが多くドロップ品や採取可能なアイテムを獲得できるか勝負をしてもらいます」


 私のゲームに三人の目に精気が宿る。





「一位の人には私が()()()()()()()()()()()()()






 三人の圧がスゴい。やる気に満ちている。分かりやすいといえばそうなんだけど。ムチを与えたんだ、次はアメを与えなくてはモチベーションがだだ下がりとなる。

 本当は順番が逆だけど。三人が元気になったのでどうでも良い。


「でもよ、お嬢。アタイは......」


「大丈夫よ。『ウラニア』が使用不能だったとしても通常のストレージは使えるでしょう。それにタウロスにはその後の作業を加点するから」


「お嬢が求めている装備を作ることができれば......」


「優勝よ!!」


「頑張るぜ」


「二人は......アイテム一つにつき、一点。一種類を何個回収しても問題ありません」


「あの洋館のモンスターを根絶やしにしても」


「可能なら」


「どうやら、私の勝ちのようですね」


「アタシの聖なる力があればアイテムなんて楽勝です」


「では、用意はいいですか」


 上半身は元気一杯だが、下半身は生まれたての子鹿みたいだけどなんとかなるでしょう。


「仁義なき戦い。スタート」


 三人は己のスキルで洋館へ走り出す。


「ユ、ユミナ」


 今も正座しているアクイローネ。


「あのさ、私も」


「良いけど、このままじゃ最下位よ」


「それって」


「当然、罰ゲームを用意しているから。覚悟していてね」


「覚えてろぉぉおおおおおおお!!!!!!!!!!!」


 奇行じみた動きを出しながらアクイローネも走り出す。足の焦点が定まっていないのか真っ直ぐ歩けないでいた。










「ユミナ」


「はい、クイーンさん」


「君は行かなくても良いのか?」


「私は......ここにいます」


 だって、怖いし......なんて最低な発想なのか。我ながら恐ろしい。


「もしもだが、彼女たちが共謀して同点ならどうするんだ? 監視とかはしないのか?」


「ならないですよ。みんな、私()一緒にいたいんですよ。みんなが協力すれば私と二人だけでいられる時間がなくなります。そんな非効率的な考え......??」


「同点ってことはみんな同率一位になればそれぞれ、ユミナに命令ができるんじゃないのか」


 あれ? もしかして......私の現状って。


「タウロスというNPCはユミナに最高の装備品を作る手筈となっている。しかし、ユミナは加点方式を採用した。彼女たちが多分、ユミナならこのくらいの点数を付けるとある程度予想するかもしれない」


 あれ? 結構ヤバめな展開か、これ......


「NPCが予想を立てなくても、あのアクイローネはプレイヤーで君のリア友なんだろ。なら、当然リアルのユミナを十分理解しているはず。自らの知識をNPCに与えてしまうかもしれない」


「と、言うことは......」


「ここで油を売っていると最悪の展開になるんじゃないのか、勿論ユミナがそれを望んでいるのなら私の話は聞かなかったフリをしてくれて構わない」



 私はクイーンさんに小者ムーブを発動。偉い立場の人に対して行うご機嫌取りのように手を動かす。

 人生で初めてゴマスリすることになるとは夢にも思わなかった。


「あの、物は相談なんですが......私と一緒にあの洋館に入ってくれませんか。勿論報酬は弾みますので」


「それは、遠慮しておくよ。元を辿れば私がユミナたちの前にで出てしまったことが原因だ。これでチャラと言うことでどうだ」


「はい!! それで大丈夫です」


「分かった。改めてよろしく」


 私はクイーンさんとフレンド登録とパーティー申請を行い、洋館内に入ることになった。

 私に頭脳プレイは似合わないか、と実感したのであった。


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