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黙っていた罪

 私は何とかオフィュキュースが出現させた蛇たちを倒した。

 一番苦労したのは橙色の蛇。砂と土を融合したかのようなブレスを吐いた時は終わったと感じたけど、どうやら橙色の蛇だけ【魅惑の笑顔(キュア・フレッシュ)】が効いた。

 橙蛇が魅力状態で行動不能の隙に星刻の錫杖(アストロ・ワンド)を投擲した。


 勿論、スキル発動中は武器防具の耐久値が減らない効果がある【牙城の(ガーディアンズ・)幻影(ファントム)】を起動。更に投げた星刻の錫杖(アストロ・ワンド)の貫通力を上げて敵を貫こうと考えていた。


 そこで活躍したのがあの餌ボリボリネズ公こと尨大(きょだい)の鼠二世さん。

 尨大(きょだい)の鼠二世を倒すために使用した【投げ弾(イクイップ・シュート)】が進化して【加速する弾丸(イグナイト・バレット)】というスキルに変化した。


 私がただ物を投げれば多少のズレが生じてしまい狙った場所に当たらない可能性もある。

 この【加速する弾丸(イグナイト・バレット)】はまるで拳銃から発射される銃弾の様に真っ直ぐ標的相手に進む補正が加わっている。


 四匹の色蛇たちは胴体をくり抜かれて、そこから自分が持っている呪文を補正プラスで放ったことで命を断った。



 ヴァルゴの様子を確認するために後ろを振り向く。ヴァルゴも蛇たちを倒した後だった。

「さぁ、次は......!?」


 ヴァルゴに対して出現させた無幻のムチ(ケバルライ)の蛇たちは囮だった。


「ヴァ......」


 死角から出てきたオフィュキュースはヴァルゴの懐に杖の先端を置く。私の声は遅かった。


 一瞬にして距離を詰められたことで後方へ逃げようとするヴァルゴ。

 しかし予め決めていた行動と予期せぬ行動では反応速度は段違い。


「もう『呪縛ロック』は発動している」


 ヴァルゴの攻撃を間一髪回避したオフィュキュースが後ろへ飛び退いた。


「アンタがあの小娘の従者なら……見せないとね。本当の姿を」






「何を……がっ!」


 ヴァルゴの体から煙が立ちこめる。持っていた彼岸の星剣(ノヴァ・ブラッド)赫岸の星劍(デモニック・ステラ)が床に落ちる。悶え叫びながら床に倒れるヴァルゴ。


 近づこうにもヴァルゴの周囲は熱がこもっていた。同時に私は全身が震えているのが分かった。

 ヴァルゴが装備している乙女の星騎鎧シリーズは溶けていく。装備だけじゃんなく青紫色をしていた髪の毛はなくなり焼けたような髪質に変わっていた。顔は酷くただれて、ヴァルゴの体も変わっていく。眩しい肢体は一瞬にして血が付着している包帯が全身に巻かれた姿へ変貌する。



「えっ……」


 咄嗟に出てしまった私の驚く声。私の声に反応したヴァルゴ。

 怪訝に思い自分の顔や腕などを触る。

 そこにあったのは主に見せたことがなく()()()()()()()()()()()()醜い自分がいた。

 ヴァルゴの顔から一雫落ちる。それは涙や汗などではない。黒く変色した血、そのものだった。


「私の『呪縛ロック』はどんな魔法もスキルも封じることができる」


「ヴァルゴは何も発動していない」


 嬉々として私に話すオフィュキュース。


「発動していたわ、ずっとね……【形態変更モデリング】というスキルを」


「……【形態変更モデリング】?」


「星霊に選ばれた者だけが持つことを許されたスキル。効果は単純。自分の姿を自分勝手に書き換えれるスキル。半永続的に発動が可能となっている」


 その【形態変更モデリング】たるスキルをオフィュキュースは私の『ファイディ』と同様に『呪縛ロック』で封印した。その結果は今私の目の前に存在するヴァルゴの姿……真の姿である。


 恐怖の顔になるヴァルゴ。自分の体を後ろへ後ろへ後退していき、私との距離を取る。


「み、見ないでください……お嬢様」


「貴方はそこの小娘の従者になったんでしょう? 真名ならともかく、自分の本当の容姿を見せないと、ね〜 貴方と小娘の反応からして初めてよね。ヴァルゴも絶対に知られないようにしていたみたいだけど……それって主に隠し事してるってことよね。とんだ裏切り者だね〜〜 それに主の名前も呼ばないなんて......ずっと”お嬢様”か〜あ!」


「ヴァルゴ......」


「そいつは悪魔の中でも爵位の地位を与えられた一人。本来なら強壮にして強力な公爵。その美しさは少女から乙女、全ての女性の愛を得る......のはずだった」


「愛を得る......」


「でも、そいつは愛とは真逆で無縁の人生を送っていた。全てを破壊に注いだ。より強い敵と戦うことに快感を覚えた。その結果、ソイツの全身は傷や火傷、血が止まることのない姿になったけど〜 ねぇ、知ってる? そいつの持っている二振りの剣。血を接種しないと無価値な武器なのよね〜 昔、吸血鬼って種族に脅して作らせたんだって〜」



 近づく私に気づき、後ずさるヴァルゴ。怯えていてボロボロ泣いていた。


「星霊になっても、誰とでも友好な関係を結ばず非常に冷酷に振る舞い、鬱陶しさを覚えていたはず。近づく者は全て剣と制裁で対応した。徹底的に無慈悲かつ残酷に攻撃を加えた結果、そいつの前には誰もいなかった。」


『友好な関係を結ばず』? 『鬱陶しさ』? コイツは何を言ってるんだ、と私は思った。


 私は知っている。

 私の手が触れただけでドギマギしているヴァルゴ。

 少し頬を膨らませて可愛いヴァルゴ。

 他の人と喋っている時でも決して私の腕を離さない中々に嫉妬深く可愛いヴァルゴ。

 威風堂々として綺麗な女騎士のヴァルゴ。

 一緒にモンスターを倒して、達成感を味わってくれたヴァルゴ。


 正直、突然のことで慌ててしまった。昔のことは分からない。

 でも、()()私に分かるのは石化から解放され一緒に過ごしたヴァルゴだけ。


 


 私にとっては最高の従者。







「ねぇ、ヴァルゴ......」



 再び近づく主に心が決壊したかのような表情を出しているヴァルゴ。

 それでも私は一歩ずつ足を進めた。


 そして————————————






 私は座り込んでいるヴァルゴと目線を合わせる。


「ユミナチョップ!!」


 オフィュキュースと主からの手刀で頭を抑えるヴァルゴはきょとんとしていた。

ユミナはいつだって、そうだよね!!!! 

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