私を見なさい!
スコーピオンはショッピングモール内へ戻ってきた。
「いた! スコーピオン」
聞き覚えのある声に反応。視線の先にはユミナ。
「何処にいたのよ」
「ごめんね〜 ちょっと散歩〜」
「心配したじゃん」
「えぇ〜! ユミナちゃん、心配してくれたの!! お姉さん嬉しいわ!」
ユミナに抱きつくスコーピオン。往来では中々に刺激的なイチャイチャ行動。
「あ〜幸せ!!!!!!!!! ユミナちゃん成分補給〜」
「嗅ぐな!?!? ってか、別れて、大した時間経っていないはずだけど」
「何言っているのよ!!? 例え1秒でもユミナちゃんに離れただけで全身に震えが生じるのよ」
「私はタバコの類なの......」
スコーピオンが歩いてきた場所に目をやるユミナ。
「で、何やっていたのよ」
「鋭いわね。流石私が見込んだ女の子。ファリーナ家が依頼した集団の一員と遭遇してね」
「対処は?」
「愚問だわ。ちゃんと成敗しました。少しゲームを組み込んで、だけど」
「”ゲーム”?」
「男って単純よね。無防備な状況を作り、セクシーな姿を見せつけたら、ホイホイと釣れたわ。私の試練も疑う事なく承諾したし」
「あーもしかして......『一発攻撃して、立ってられたら、アナタの女になってあげる』だっけ?」
「正解。ユミナちゃんも一度受けたから知っているわよね」
「結果は......」
「心配しなくても、相手、無様に倒れ込んだわ。程なくして死んだわ」
「そっか。HP全損したのね」
「まったく......ユミナちゃんと同種なのに、通常攻撃にも耐えれないなんて」
「スコーピオンが強いから、仕方がないんじゃない」
「......ユミナちゃん。自分の行動を覚えてないでしょう......」
「うん??」
「私の攻撃を受けた後、速攻で攻撃を仕掛けてきたよね。あんなに激しい殺陣、久しぶりだったわ......」
「戦闘の師匠に叩き込まれたから〜」
「......あの筋肉ゴリラ」
ため息を吐くスコーピオン。
「ま、良いけど〜 それに......名前忘れちゃったけど」
「多分、数分前に出会った相手だよね」
「知らないわ! 私が愛してるユミナちゃんをバカにしたのよ。虫ケラと呼称しても差して問題ないわ。もー最悪! やっぱり、一発じゃ怒りが治らない。探し出して、万物の蛇蝎星鞭でボコボコに......若しくは、新薬の実験台にするしかないわ」
「ありがとう! 私の為に怒ってくれて」
「当然よ! 私はユミナちゃんなら王に相応しいと確信しているのよ」
「元女王様からのお言葉、重みを感じるよ」
「私の攻撃程度に負けるような腑抜けに、何故私が付き従わないといけないのよ。バカじゃないの......。一回、生命活動やめてから出直して来い、と思うわ。あの腐れ肉団子———」
「はい。ステイステイ」
「初めからキモかったのよ。いきなり口説くし、キモい目つきで私を舐め回すように見てくるし」
「あはは———......それは災難だったね」
「本当よ。私の趣味を妨害した」
「あー人間観察だっけ?」
「人の行動は面白い。科学者冥利に尽きるわ」
「スコーピオンが好きなのは人間を観察すること。人間自体には興味ないのよね〜」
「ユミナちゃんやアシリアちゃん等、私が認めた人間なら、心から愛するわ。それ以外は論外。あーでも、脳味噌だけなら好きになって良いかな〜」
不意にスコーピオンに唇を奪われたユミナ。
「ちょ!!? いきなり何よ!?!?」
「だからね、ユミナちゃん......」
強くユミナを抱きしめるスコーピオン。頬が紅潮していた。恥ずかしさに陶酔を深める。
「もっと......私を知って欲しい............です」
ユミナは優しい微笑む。
「私も知りたい、スコーピオンの全てを」
ユミナとスコーピオンの一幕を眺めているNPCたち。
「アレが......大人のイチャイチャ......ですか」
「エマ......出来るか不安になってきた」
「やはり念密な作戦が必要ですね———リブラの為に」
悪魔のアガレスとセーレは感心していた。
「なるほど。アレがヴァルゴを堕とした技ですか」
「星霊を最も簡単に......末恐ろしい少女だ———ユミナさんは」
◇◆◇◆
ショッピングも終わり、私たちは船外の甲板に到着した。
ヴェロニカがプレイヤーの戦闘を見てみたいと言われたので、案内した。
「おぉ! やってるやってる!」
「皆さん、水棲モンスターと戦っていますね」
デカいタコ、巨大な口が付いたイカ、群れで攻撃してくる傷だらけのイルカと多くのプレイヤーが戦闘していた。
「うわぁ〜」
プレイヤーがタコの足に捕まる。タコさん、執拗に男性プレイヤーだけを狙っているのは気のせいだろう。
にしても、触手プレイは男が対象だとまったく色気がない。むしろ吐き気がしてきた......オェ〜
「ヴェロニカ、エマ。ここから先に出ると、2人ともアイツらの攻撃対象になるからね」
「分かりました」
「それにしても、皆さん勇猛果敢に挑みますね」
乗船できたプレイヤーの多くは、クエストを完了させないといけない。規定数のモンスターを討伐しないと船から出されるのかも。途中下船出来ないから、ダイブ一択か......
「ピスケス、何やっているんだろう」
プレイヤーに混じって、イルカを討伐してるピスケスを発見した。
二本一対の鎌型武器を装備して、向かってくる複数体イルカを斬っていく。
水面から伊勢海老に似たモンスターが飛び出す。
「食料っ!!」
ピスケスがドードー型のモンスターを二匹召喚。一匹は赤色、もう一匹は黄色の身体。二匹に触れたピスケス。渦巻に吸い込まれたようなエフェクト。ドードーが形を変え、羽をモチーフにした二振りの剣が誕生。燃える剣と稲妻が迸る剣。
「良い感じ!」
伊勢海老は討伐された。素材と食料としてアイテム化された。身の部分はちゃんと調理された状態になっている。なんか......美味しそう!
「ねぇ、ピスケス。わたしの分は〜」
タオルで汗を拭いていたアクエリアス。ゲリラ演奏が終わったばかりなのだろう。
「ホイ〜!」
「ありがとう!」
ボイル焼きと刺身を貰ったアクエリアス。食事している姿も美しい。アイドルの食事風景。非常に絵になる。
「ご馳走様」
アクエリアスはまた、歌い始める。アクエリアスの美声に響いていた。高らかに響き渡る声が観客の心を掴んでいた。クエストを放棄してアクエリアスの演奏を聴いているプレイヤーまで出始めていた。
「あっ!?」
タコモンスターが茹で蛸みたいになっている。『何、他の女の所に行ってるのよ』と思わせるモーションの繰り出し、足が増加。より一層触手プレイされる男性プレイヤー。
気にせず歌い続けていたアクエリアス。哀れなプレイヤーを忘却する観客。




