最新家具はバックハグ機能が搭載されている
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ヴェロニカ・アーミサと彼女の執事アガレスは気まずい空間にいた。
聖女アシリアと彼女の伴侶であるユミナの部屋。2人の部屋は明らかに他の部屋よりも超豪華。完全特別製のスイートルーム。聖女アシリア筆頭に、完全オーダーメイド。使用されている素材からも他の追随を許さないレベル。いくらお金を掛けなのか分からない。アシリア個人の資産を利用したとか貴族の間で噂になっていた。そんなやる事成す事、大胆な今代の聖女アシリアは元気とは程遠い雰囲気を醸し出していた。
クッションを抱きしめ、顔を紅潮してるアシリア。隣に座っているユミナも同じく顔を真っ赤に染めている。夫婦なのでナニをするのも夫婦間では自由。ヴェロニカとて、ある種覚悟はしていた。
初々しい夫婦の朝を目撃した。けど、来客2人は別の光景に言葉が出ずにいた。
意を決してヴェロニカは口を開く。
「あの〜 ユミナさん。降りられてはどうでしょうか?」
いきなり何を聞いているのか、誰もが疑問に思う。
が、ヴェロニカの質問は納得せざるを得ない。
現在ユミナはソファに座っていない。では、何に座り、ヴェロニカの対面にいるのか?
答えは簡単。
「離れたいけど、離してくれないのよね〜」
ユミナは今、従者でもあるヴァルゴの膝に座っている。振り解きたいがユミナの腰を抱きしめているヴァルゴ。
「私のことは気にしないでください」
そう言ったヴァルゴは視線をユミナのうなじに戻した。
鼻を当てて、クンカクンカとユミナの匂いを嗅いでいた。幸せの絶頂にいるヴァルゴはユミナの腰を自分の方へ引き寄せ、真っ白な手は上へ移動する。
「おいぃ!!? 人前で胸揉むな!!!」
「毎朝の日課なので、無理です(キリッ!)」
「今日初めて知ったルーティーンなんだけど......」
流石にヴァルゴの奇行を咎める勇気をヴェロニカは持ち合わせていなかった。
「............ねぇ、アガレス」
ヴェロニカは執事でもあり、契約悪魔のアガレスに助けを求めた。
「私、何を見せられているのでしょうか」
ヴェロニカには少々、刺激が強かったみたいだ。顔が僅かに紅潮していた。
渋いオジ様の容姿をしているアガレス。長年悪魔として、生きてきた彼も、この空気に耐えることが出来ずにいた。
「人の幸せは千差万別。無理矢理にでも納得するしかない」
背一杯の言葉だった。
「アガレスに聞いていた特徴に一切、当てはまらないけど」
「私も驚いております。現魔王よりも魔王に相応しいと評されていた彼女が、このような............」
アガレスは知ってる。リリス様に認められた存在。圧倒的武力・知略で他の追随を許さない女悪魔。同僚であっても敵意剥き出し。挑んでも一度も勝てない。悪魔の中でも悪魔。他の種族から恐れられていた。魔王の席は、リリス様に止めさせた。代わりに星霊に就任。この時のリリス様は英断だった。彼女が魔王に就いたら、人間種は間違えなく滅亡し、同時に弱い種族も根絶やしになっていただろう。
「そもそも、私のうなじに顔を近づけることできないじゃん!?」
「お忘れですか? 星霊全員が所持しているスキル、【形態変更】を発動したまで」
「あ——————............だから感触がいつもと違うのか」
「類い稀ない棒読みですね......」
「てか、いつから見ていたのよ?」
ユミナは自称椅子に話しかけていた。
自称椅子はすんなりと答えた。
「アシリアがお嬢様とキスしていた時から、ですね〜」
結構前からいるな......
アシリアのジャブが、ヴァルゴの腕に直撃。
ジャブを食らっても、何か当たりましたか? と平然のヴァルゴと、クッションに頭を埋めて唸るアシリア。
湧き上がる羞恥に全身を打ち震えながら、アシリアは思いのまま言葉を吐いた。
「バカヴァルゴ! 私だってゆっくりユミナのイチャラブしたかったのよ! いつもいつも仕事に追われて帰ってきても、特注ベットはいつも満員! 悲しみの中、自室で1人寝ているのよ! 今日やっと、僅かでも2人っきりになれたのに———」
ヴァルゴがスッと紙を取り出す。
「貴女に余裕があると思っているのですか?」
紙の内容。アシリアの2日目のスケジュール。朝から夜までびっしり。秒刻みの行動を強いられていた。
伊達メガネをかけるヴァルゴ。ドS女教師スタイル、イイネ!
「今日の護衛は私です。私が居る限り、全てを完遂させます。船内に居る不埒な者どもは私が対処しましょう。アシリアは存分に聖女業を行なってください」
「............ヴァルゴが寝室にいた理由になっていません」
「ちっ! このままやり過ごす手筈が。理由はありますよ、ちゃんとした理由が」
「面白くなかったんでしょう」
小さく笑うヴァルゴ。
「流石、お嬢様。私のこと、なんでも分かっておりますね! そうです。私だって、隙あらばお嬢様と大人のイチャイチャしたかったのに! 私が性欲を抑えているのに抜け駆けは許さない!」
「貴女の事情なんて、どうだって良いのです!! 私が正妻なんですから、ユミナとイチャイチャする権利は私が先です!」
鼻で笑うヴァルゴ。
「嫁順位など、無意味。誰が一番寵愛を受けているか。これに勝る答えは存在しない」
いつの間にかカプリコーンも嫁アピールし始め、恋人たちも触発され、部屋が更に混沌と化した。
朝から痴話喧嘩が始まってしまった。
(だから、お客さんの前だって.......)




