乗船
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【サングリエ】の港。人だかりと陽気な音楽が流れていた。
「デカい!!?」
「デカいですね......」
私とアシリアは棒立ちしていた。事前に船の大きさは確認済みでも実物で見ると言葉が出なくなる。
(首、痛い......)
「完全にプレイヤーの仕業だね」
「船のオーナーが旅人さんと仲良くなって......今のような造りになりました」
申し訳ない表情のアシリア。
ま、同情するよ。元々のインペリアル・アペクス号も巨大な客船。にもかからわずプレイヤー、主に生産職が心血を注いだ結果、現代風の外航船で横500メートル・縦100メートルの大型船に改修されてしまった。
(うん。巨大すぎて......脳の処理が追いつかないよ〜)
「これだけの大きさ。結構な金が動いたんじゃない」
「私の為らしく......」
「アシリアの聖女のお仕事がもうすぐ終わるから、今からでも注ぎ込もうってことかな」
推しに最大限貢がないと、が容易に想像つく......
アシリアの顔を見る限り、相当量のルターが動いただろうね。
大貴族の中だと資金提供はブリジット王国が筆頭らしい。王様直々とは太っ腹ですよ。
残りはアシリア推しのプレイヤーだね。後は———
「カジノのオーナーが聖女様に資金を提供するとはね」
「私もびっくりしました。【ムートン】にあるカジノのオーナーさんは【裏社会の女帝】と呼ばれている存在。文字通り、裏社会を牛耳る組の一つ。何かあるとは思います」
カジノか......そう言えば、ヴェラ、元気かな〜
昨日、話を聞いていたけど......【オニキス・オンライン】の設定上は、裏社会に存在する”組”と呼ばれている集まりは、盗賊団よりも洗礼された存在と表現されていた。腕っぷしは勿論、頭脳で相手を陥れる戦略を取る集団らしい。で、今裏社会では次の聖女は誰なのかと賭けが行われている。一瞬の余興らしい。同時に現聖女のアシリアに恨みを持つ組もいる。反発してる貴族も怪しい集団を雇い、船の中で命を奪う計画を企てているのも、昨日聞いた。
私たちの目的は3日間のクルージングを無事に終わらせ、アシリアの命を完璧に護り抜くこと。
次々と荷物が運ばれていく。招待状を持つ人々が続々と乗船。
私たちは敷かれたレッドカーペットを歩き出す。重要人物専用道。
アシリアが歩く度に観客から黄色の歓声が鳴る。鳴り止まない。
オマケでもないけど、私のオトモにも歓声が鳴っている。
「怪しい者は皆殺しすればいいのです。私なら1日で【裏社会】なるふざけた連中を殺し回りますが」
そんなハシゴしてくる感覚で【裏社会】を崩壊させます、とか言わないでよ。
「......ヴァルゴ。その案は却下と言ったじゃん」
「ぶぅ〜!」
相変わらずのぶっ飛んだ思考の持ち主だね。後膨れた顔をしても可愛いのは反則♡。
「まったく貴女は、即殺すしか考えれないのですか?」
「そうですよ。せめて骨の半分を砕くで妥協しないと」
カプリコーンとアリエスはヴァルゴに呆れていた。
(アリエスさん......貴女も中々エグいこと言ってる自覚あります)
メイド服を着た黒エルフが私に声を掛けてきた。
「ユミナ様。我々も何か言うべきですか?」
「星霊に合わせる必要ないよ、ナターシャ」
「か、かしこまりました」
アシリアの護衛として白・黒エルフを着かせていた。星霊がアシリアの護衛をしている時もあった。
中でもナターシャは黒エルフ種で位の高い地位にいて尚且つエルフ間の戦争では黒エルフ陣営の副官をしていたNPC。
「ディラン、アレックス、ナタリーもアシリアをよろしくね!」
『はい! ユミナ様』
ナターシャとアレックスが黒エルフ。ディランとナタリーが白エルフだ。レベル帯だと”200”は超えていたはず......
うん、なんて素直な子たちなんだ......( ; ; )
見習えよ、星霊ども。
乗船口に入る。
「スコーピオンの策が当たったね」
乗る前の身体検査、手荷物検査、招待状の確認などスタッフが行なっていた。
バツの悪い乗船予定者は強面スタッフにより、何処かに連行されてしまった。
「ふ〜ん。プレイヤーの結構、乗るんだね」
プレイヤーの中には裏社会の連中と関わっている者もいる。プレイヤーにはストレージがあるから検査はパスできす。想定内。
私たちは制服を着たスタッフに招待状を呈示。客室専用カードキーを一人一人貰う。検査はなし。フリーパスで移動する。
「皆さん、正直にカードキーを貰いますね」
ヴァルゴが自分のカードキーを指に乗せて回しながら言った。
「カードキーがないと客室に入れない。当然と言えば当然の選択ですが......」
「スコーピオンがラボで作ったGPS付きカードキーとは誰も思わないでしょうね」
貴族や有名なNPCたちは面白い様子でカードキーと説明書を眺めていた。対照的にプレイヤーは、『何故カードキー???』と首を傾げている。
「キャンサーたちが部屋のドア一つ一つにカードリーダーを設置しましたし...」
キャンサーと部下の女型アンドロイド1000人が頑張ってくれました!
渡り廊下に似たタラップを通り、インペリアル・アペクス号に乗る。
「ヘェ〜!」
「綺麗ですね!」
広々とした船内のロビー。
豪華なホテルを思わせる雰囲気の内装。煌びやか。金を基調とした様式美。高級感溢れる赤絨毯。天井に吊るされている明るいシャンデリア。絵画や大理石の像、金色の馬とか、美術品の数々。
静かな音楽が流れていく。乗客を歓迎してくれる生演奏。既に音楽に聴き惚れ、集まりが形成されていた。
乗ってから全員の目付きが変わっている。警戒。インペリアル・アペクス号の図面は頭に叩き込んでいるし、内部構造は完璧に把握してある。
「......ヴァルゴ。さっきの言葉、少し訂正するね」
「......?」
「向かってくる敵は全て排除しろ」
会釈するヴァルゴ。
「かしこまりました、お嬢様」
生産職プレイヤーと船大工NPCが結託して改修されたインペリアル・アペクス号を更に魔改造した従者一同
実はここだけのお話。
一部噂になっている。生産職プレイヤーの数人が妙な奴と行動を共にしてから建築技術が跳ね上がったらしい。
その結果、近代的な客船が出来上がったと。件の生産職プレイヤーたちは詳細な情報を誰にも明かしていない。
妙な奴とは......誰だろうね〜
噂の生産職プレイヤーは以下2名。
プレイヤー名:秋天久茶
プレイヤー名:え〜ぴぃーだぶりゅー




