スキルを盗む怪盗紳士は師匠を探している その16
サブタイのサブタイ
【召喚】悪魔兵士が出てきたよ!
古びた教会。正面の扉が開く。
「やぁ! いらっしゃい!」
ファントムが侵入者に声をかける。
真夜中の教会の中は月の光がステンドガラスに当たる。薄暗いため良く見えないが、壁は白を基調とし、所謂正統派な作りだと思う。頭上には美しいステンドガラスがはまっており王道な雰囲気になっている。
「中はちゃんとしている」
フフン、と鼻を鳴らすファントム。
「中身を大事にする性格でね」
青白い孤月を抜くファントム。カードが2枚。青白い孤月に吸収された。
「君が僕と間違えられた子か」
「悪いと思うなら、さっさと捕まってくれない」
耀金妃叛銃から放たれたエネルギー弾。弾丸はファントムに直撃するはなかった。ファントムを囲む薄いドーム状の結界。何十発と撃たれた弾丸は全てファントムに辿り着く前に結界に阻まれ消滅した。
「ちっ」
耀金妃叛銃をくるくる回すクイーン。
上手くいったファントム。解説を始めた。
「【変化】。自分の武器を対象者の武器に変形する」
青白い孤月の外見が変形していた。
私は皮肉を込めてファントムに言った。
「良い杖じゃない。欲しいんだけど〜」
ファントムが持つ杖———星刻の錫杖だった。
「ユミナちゃん。君......面白いスキル持っているね」
ファントムが【変化】と同時に武器に差し込んだのは【星なる領域Lv.10】。私の星霜の女王専用スキル。10分間の絶対防御結界を張る事ができる。
いくら盗まれた【星なる領域Lv.10】でも星刻の錫杖が無ければ発動しない。当然解決済みということか......
星刻の錫杖から裁紅の短剣に変更。
思った通りだ。武器が変更されたことで青白い孤月に戻った。同時に【星なる領域Lv.10】の効果がキャンセルされる。
耀金妃叛銃のエネルギー弾を華麗に避けるファントム。
「ありゃりゃ......」
青白い孤月から吐き出された【変化】と【星なる領域Lv.10】。
「武器が変わっても無意味だけど〜」
再び【変化】で私をターゲットにした。
「あれ?」
鍔迫り合い。金属音と火花が飛び交う。
「嫌われちゃったね!」
「盗めない物があるとは......驚きだよ」
どうやら【変化】の効果範囲に対象外があったとは。それが裁紅の短剣。リリス様の物を許可なきモノが触れるなってことか。
「よそ見している場合か」
背後に忍び寄っていたラキ。奇術師の幻影がファントムの首筋に。
「【消える人生】」
「ちっ」
悪態をつくラキ。離れた場所に現れるファントム。彼は可笑しな笑みを出していた。
まるで、ようやく大好きな人に出会えた瞬間の笑みのようだった。
「そうだよ、それだよ。僕が本当に会いたかった”師匠”は」
「私は貴方を止めます。主と一緒に———」
真剣な眼差しと心の底から誓った者への決意。ラキの顔を見たファントムは微笑む。
「師匠を縛っているのはユミナちゃんか。なら確実に殺すしか師匠と一緒になる未来が訪れない訳ね」
【分身する幻影】に複製されたファントム。私たち3人を囲む大量の複製体ファントム。
『僕らは......僕さ』
トランプカードと青白い孤月が四方八方から飛んで来る。
回避準備するが足が動かない。3人の足首を掴む手を模した雲。
迫る鋭利な刃物はヒトに刺さる。
獲物を仕留めた喜びはなく、関心するファントム。
「どこから出した......その兵士?」
3人を取り囲むように配置された黒の兵士。悪魔を模した鎧を着用し、剣、大楯、杖などの武器を装備している兵士たち。
「これでも女王だからね! 従う兵はちゃんといるのよ」
黒の兵士。正式名称、悪魔の兵士。魔術本:『グリモワール』から召喚された悪魔タイプの兵士。グリモワールが使用可能になってからアクセサリー枠として装備が可能になった。現状上限1500体を保有している。大量の複製体ファントムには大量の悪魔の兵士に任せた。
「3 VS 1は気が引けるけど、勝たせてもらうよ」
『3 VS 2だ』
ファントムの怪盗服。黒色の服が蠢く。ファントムから剥がれ落ち床へ。ドロドロとした液体はヒトの形へ。
「人型のライオン?」
黒の革ジャンには動物のステッカーが貼られていた。右腕には巨大なガトリング砲が同化している。
「オレはヴァレフォール。悪魔だ」
「悪いね、僕一人でやると言った手前」
「気にするな。オレはお前を気に入った。お前の師匠と怪盗擬きはオレが引き受けよう」
ライオンの手を模したガントレットがラキとクイーンを襲う。二人と1体は外へ。
「師匠と戦いたかったんじゃないの?」
「......鈍るから」
「で、私なら手元が狂う事なく戦えると」
「師匠よりかは」
「OK! やりましょう」




