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ソロプレイ中に人外NPCを助けたら、女型ユニークモンスターに囲まれるVR女王に就任した件  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【2章:【 】】
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スキルを盗む怪盗紳士は師匠を探している その11

サブタイのサブタイ

怪盗紳士、現る

 

 頭に手を置き痛みを味わっているクラス。


「痛いっ......頭が割れる。チョップは反則です!!?」


「”お尻丸出し高速ぺんぺん叩き”か”強制破廉恥衣装ランウェイ”か”真剣白刃取り禁止”の罰の中から選んだ自分のせいでしょう」


「残りの二つを選ぶ勇気がありません......城内なら百歩譲ってまだしも街中で実行するのは鬼畜です、ユミナ様」


「私は恥じらっているクラスを眺めながら、その光景をスクショ(永久保存)するだけ!」


「時々思います。ほんのちょっぴりですよ。私、ユミナ様と出逢わなければ良かったと。私......もうお嫁には絶対行けません」


「だからぁ! 私が貰ってあげるから!」


 実にくだらないやり取りをしている私たち。

 裏通りを進む。メニュー画面を開く。項目から【異空間転送の把手(安住の地へ)】を探す。


「結局、怪盗何某は現れなかったね」


「獲物が居なかったのでしょう」


「やっぱり、クラスが破廉恥衣装を着用して注目を集めれば、ホイホイ釣られて参上するかもしれない」


「私......あまり肌を露出した衣装は」


「レオタード着ている奴が今更かい!!? 奇術師時代にも際どい衣装着てたでしょう」


「ユミナ様が持っている破廉恥衣装よりは抑えられていました」


 収穫はなし。もう時期クイーン用のアイテムが完成する時刻。一度城に戻って作戦会議。


「見っけ! 帰ろ———」


『貰うよ』



 安堵の表情。一瞬の緩み。この時を待っていた。

 音もなく闇から出現した影。影は形成し、実体を持つ人へ。

 黒き仮面。漆黒の怪盗服。ファントムは狙った獲物を逃さない。

 声の主は背後を確かめる少女よりも早く首筋にナイフを突き刺す——————


「グボッ...!」


 背中の巨拳に顔を殴られ、勢いよく吹っ飛んだ。


「やっと現れた。初めまして怪盗さん〜」


「な、なんで......確かに首を」


 ナイフを少女に叩き込んだ。確かな事実。だが、何故か少女は平然としている。加えて正体不明の武器に自分が攻撃された事に焦る。


「あーこれ」


 少女は自分に刺さっているナイフを抜く。傷口はない、目立った外傷もない。まったくの無傷。


「人工の皮膚。よく出来ているでしょう!」


 刺した首筋が溶けた。肌色から銀色へ。ドロドロとした液体は少女の身体を生き物のように這う。自分の家へ帰宅するように少女の腕輪へ返る。同じく背中に生えている巨大な拳も同様に戻っていく。


「貴方がずっと私たちを尾行していたのは知っていました。ヴェインさんとして〜」


「バレていたとは......」


 ファントムは苦笑した。ファントムには模倣の短剣(コピーキャット)がある。効果は刺した人物と同じ人物に変身する。所謂変装能力。模倣の短剣(コピーキャット)で刺された人物にダメージは入らない。奪われるのは自分の容姿。ファントムは模倣の短剣(コピーキャット)を利用して追跡から逃れ、特定の人物に接触。目的の物を盗む。模倣の短剣(コピーキャット)で得られるのは容姿だけではない。1日分の記憶(ログ)



「種明かしをすると、ヴェインさんのギルドで私が被っていたのはゑヰ裏晏(エイリアン)という頭装備」


「気味が悪いね。肌色も不気味だ」


「そうでしょう! 驚き咽び泣き満載。だから忘れる訳がないんですよ」


「目星を付けていたのかな?」


「全然!! 怪盗が相手のスキルを奪うなら身近な人に変装して警戒が緩んだ隙に盗む。なら今日会う人にそれぞれ敢えて間違った情報を伝えました。ヴェインさんの場合は『悪魔のマスク』とか」


「自信満々に言うから僕も信じてしまい、肯定した」


「本人なら訂正してくれますので......」


「そこは修正しないと、ね。で、君たちの狙いは僕。目的は盗まれたスキルかな」


「いや、まったく」


 私の言葉に呆気取られるファントム。目元仮面がズレた気がした。


「えっ!!? じょ、冗談はよしてよ」


「いや、本当に」


「嘘でしょう!? なら、どうしてここに来たんだ……」


「友人が貴方と風貌が似ているだけで狙われている。だから捕まえる。それだけよ、怪盗さん」


「それは失礼したね。それと怪盗さんじゃあ呼びづらいだろう? ”ファントム”。そう名乗ってる、ユミナちゃん」


 ”ファントム”ね。本名じゃないにしろ、敵の情報は貴重だ。

 もう少し情報を引き出したいが、ファントムさんは許さない。


 やれやれ、と態度を取るファントム。


「こんな獲物は初めてだ。これもまた一興か」


 ナイフが二振り。右手は横持ち、左手は逆手持ち。


「君たちのスキル、頂くよ」


 ファントムは駆ける。己の欲望のために。大切な人と再会するために。


 迎え撃つ。が、先に動いたのはクラスだった。

 火花が散る。甲高い音が裏通りに響く。


「メイドさんもナイフとは」


 クラスの武器、【奇術師の幻影(ミス・ディレクション)】とファントムの【青白い孤月(ペイル・ムーン)】がぶつかり合う。

 クラスとファントムが後ろへ跳ぶ。すかわず私が肉薄。【裁紅の短剣(ピュニ・レガ)】で攻撃。

 だが、ファントムは左手に持っていたナイフを投げてきた。


「っ!!?」


 向かってくるナイフを弾くつもりだった。が、【裁紅の短剣(ピュニ・レガ)】に当たる直前に二つに分離。左右からナイフが飛んでくる。


「【ダブル・リフト】」


 こなくそっ!!


 身体を捻り【裁紅の短剣(ピュニ・レガ)】で一本を払う。残り一本は足で蹴った。

 着地した私に賞賛するファントム。


「ユミナちゃんやるじゃん!! でも......」


 払ったナイフは二本とも地面に刺さっている。


「【爆弾刃(ボム・ナイフ)】」


 二本のナイフが光る。爆発した。

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