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ソロプレイ中に人外NPCを助けたら、女型ユニークモンスターだけに囲まれるVR女王に就任した件  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【1章:アグネス女学園の乙女生活】
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元天使は勇気が足りなかった

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 カプリコーンは元天使だ。天界から下界を観測し、時に人々を助け、時に世界の均衡を護っていた。

 しかしながら、天使と言えば万能な種族ではない。同種族の素肌を見るだけで堕ちる脆い種族だ。さらに下界に棲む人間・知能がある魔物は善良な存在だけではない。悪人もいる。悪人だけではない。下界は刺激が強すぎる。それらを称して天界では負のオーラと呼んでいた。負のオーラにあてられると天使の身体は蝕む。最後は天使は堕天する。だから、天使は俗物を直接観ることはできない。必ず視界を隠す。


 大天使ミカエルも例外ではない。ミカエルも下界をずっと観測してきた。時が流れると共に醜い数々の惨劇を。

 ミカエルが下界に嫌気が差したのは必然だった。長年ミカエルを勤めていた彼女はとある組織から召集がかかった。世界(オニキス)を内外から護る組織———星霊。


 多くの種族の中から選ばれた優秀・最強の個々。更に選別され残った13人の個。

 彼女も残った一人だ。山羊座を襲名した時、天使ではなくなった。しかし長年下界の刺激を遮ってきた習慣は消えない。創始者で宇宙神リリスから負のオーラを極限まで防ぐ施しを受けた。


 星霊を務めた彼女は、視界を隠す必要がなくなった。彼女は見続けた、何千年も。そしてやはり自分の考えは間違っていないと証明された。

 彼女は疲れたのだ。星霊になっても世界を護らないといけない。しかし下界には苦痛・苦悩が溢れかえっていた。


 彼女は世界に興味を失くした。堅苦しい執事を着続けているのも彼女の心を護るためだった。解放すれば自身の自我が崩壊する。それを決めつけ彼女は殻に籠った。


 悪神を討伐後、仲間に裏切られた。毎回13人で衝突していたが、何度も世界を救ってきた戦友。彼女は分からなかった。石化して自問自答しても答えは判明できず。


 星霊の存在が人々から消えた時、一人の少女と出会った。


 自分の石化を解いた桃髪でオッドアイの少女。星霊神殿に祀られていた星刻の錫杖を持ち、3人の星霊を従者にしていた。

 3人も彼女と同じように少女に救われ、自らの意思で少女の従者になった。


 彼女は初め、救われた事への恩として少女に仕えていた。単なる気まぐれだった。だが、少女と過ごす日々は毎日が刺激的だった。嫌な思いを抱くことはなく、むしろ少女と過ごす日常が楽しかった。次第に彼女から気まぐれで仕えることを止めて、本当の従者になった。


 だが彼女は想う。果たして自分は本当に少女と一緒に過ごして良いのだろうか、と。星霊には特殊な規則がある。それを伝えるから己の勇気次第。彼女は迷っていた。自分は受け入れてくれるのか。壊れそうだった。もしも、伝えたて拒否されたら。押し潰される心を必死で隠す。長年天使として下界を平然とした態度で観測したように。自分の想いを執事服と言う殻に閉じ込めて——————







 ........................................................................


 ....................................


 ............


 ......











 カプリコーンは目を覚ました。薄暗かった。周囲は石の壁しかなかった。整理された石ではなく粗削りが目立つ壁だった。石しかない空間でも人工物があった。鉄格子だ。


 カプリコーンは直感した。今自分は鉄格子の外側ではなく内側にいるのだと。


「よっほど牢屋に縁があるようですね、私は......」


 苦笑いをするしかなかった。然し笑って過ごすほど悠長ではない。

 情報を得るために身体を起こす。周囲を確認。どうやら先客がいたようだ。


「これはまた......」


 数にして100人。同じ服を着ている少女たち。彼女たちの服装には見覚えがある。この数日、毎秒目撃した服装。


「どうやら......貴女達も捕まってしまったのですね」


 牢屋にいる100人。数人は起きていた。


 カプリコーンは目を覚ました数名に近づく。


「ケガは?」


 怯えている生徒達は小さく横に首を振った。

 目立った外傷はない。だが彼女たちは自分たちの身に起きた事実を理解し恐怖していた。


 震える彼女たちの手を優しく握るカプリコーン。


「私が必ず皆さまを救います」


 カプリコーンは言った。その後。


「先ずは他のお方を起こしましょう」


 敵が戻って来る前に————————————

























「あらあら〜」


 手を頬に添え、わざとらしい仕草をするオリバー。

 オリバーの視線の先、捕獲した100名ばかりの女子生徒を入れていた牢屋。しかし今誰もいない。忽然と姿を消していた。


「折角儀式に使うつもりだったのに〜」


 オリバーには必要だった。他者を寄せ付けない絶対的な(チカラ)を。


 (チカラ)が有れば、叶えられる。


 (チカラ)が持っていれば、愛が手に入る。


 (チカラ)を得るには犠牲は付きもの。


 (チカラ)には対価が必要だった。


 (チカラ)を与えるために対価を所望された。



『人間を100人、オレに捧げろぉ。そうすればお前に、更にオレの(チカラ)を与えるぅ』



 (チカラ)に条件を付けた。


 何かを獲るには、何かを失わないといけない。


 オリバーは決めた。


 自分の目的()の為に、他者を、未来ある若者を、切り捨てた。


「遠くには行ってないわね」


 オリバーの後ろにはレイチェル・ライラックとシャリー・エラーブルが立っていた。二人とも正常な意識をしていなかった。虚な眼で前に居る主の命令を待っているようだった。


「二人に任せます」


 主からの合図。彼女たちに異変が起きる。身体がぶるぶると震え始めた。二人の背中から【願き者の源水】が誕生した。姿はテイラー・ブロッサム同様、おぞましく不気味な水状のモンスターが動き出す。



 一人になったオリバー。


「この洞窟からは誰も逃れれないわ。助けも来ない。見つける事もできない」


 オリバーは歩く。


「さて、少ないけど7人だけで儀式始めましょうか」


 オリバーは儀式場に向かった。悪魔に対価を支払うために。


「待ってて、シフォン。もうすぐ二人だけの楽園が完成するわ」


 全てが終われば迎えにいく。目的を達成させるべくオリバーは奥へ足を向けた。


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