360度フル回転する机と椅子と目障りな生徒たち
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そこは隔離された空間だった。
「不思議な空間ですね」
「気に入ってくれて何よりよ♪」
異空間には球体が無数に浮いていた。その内の一つにヴァルゴは隔離されていた。
教室の一区画だけ切り取られた空間が出来上がっていた。脱出はおろか歩くこともできない。かろうじて移動できるのは自分の席と椅子のスペースだけ。
ヴァルゴは問う。
「空間魔法は......理事長から教わったのですか?」
豪華な椅子に座っているのはオリバー・リーディエント。
「正解! 私、他の教師陣から信頼されているからね! この空間魔法......上手く使えば特定の人物だけを隔離できる。こんな風にね!」
「......なるほど。道理で学園内を隈なく探しても見つからなかった訳です」
ヴァルゴは宙に浮いている球体に目を向ける。
球体の内部はベットが一つ入っているだけだった。否、ベットの上には眠っている人物が存在した。
「あの人が......シフォン・ニア・ウィステリア生徒会長ですか」
「シフォンは誰にも渡さない」
「なるほど。貴女にとってシフォン生徒会長は......」
ヴァルゴの会話を遮る。
「貴女は一番厄介」
「光栄ですね。しかし私以上に恐ろしい人はいますよ」
「貴女の主かしら? 対面して分かったわ。そこまで脅威とは感じなかった」
「一瞬会っただけで人を判断するとは......」
「一瞬で良いのよ。それに私の元に来る前に【監督生】に阻まれる」
「【監督生】、ですか......」
「彼女たちは私に相談するくらいに疲弊していた。【生徒会】も同じ。まさか事件を起こした犯人に縋っていたとは夢にも思わないでしょうね」
「良いのですか? 自白して?」
「問題ないわ。貴女はここで死ぬのよ」
オリバーの後ろから4人の生徒が出現した。
「彼女たちは【生徒会】の役員よ。さぁ、グレース副会長。あの厄介者を倒しなさい!!」
生徒会の役員全員もまた【監督生】同様【願き者の源水】に操られている。
よってヴァルゴの前に立つのは宿主の生気を奪い誕生した水の化け物。
「もし死にたくなければ私の騎士になりなさい。貴女の力と私の力があれば無敵よ」
心底どうでもいい顔を浮かべるヴァルゴ。口を開く。
「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「何かしら? 元悪魔さん」
ヴァルゴは疑問に感じた。
「うん?」
少し間が空いてからヴァルゴは口を開いた。
「どうして”透過能力”を他人に与えられるのですか?」
「あーあれね。授けてくれた者がいるのよ。『お前の願いが叶うまでオレの力を貸してやる』とね」
「なるほど......理解しました。それとオリバーさん。先ほど奇妙な事をおっしゃいましたね」
ヴァルゴがオリバーを見る。
「どうして私が元悪魔だと分かったのですか? 私を悪魔と呼ぶには判断材料が少ない。見た目からの判断は難しい。誰かの入れ知恵ですね。貴女に力を与えた者とか......」
拍手するオリバー。
「正解よ。シフォンを手に入れる際に、偶然ね。密かに調査していた悪魔召喚の古文書。数ヶ月前に解読できて召喚が実現したのよ! 悪魔召喚に加えて契約も完了しているわ」
「......契約完了、ですか?」
「えぇ。妙に気に入られてね!!」
「ふーん」
ヴァルゴがオリバーを見る眼は哀れな傀儡と化した人間として映っていた。実に滑稽に踊るな......オリバー
「因みにどんな見た目の悪魔ですか?」
「姿は朧気でちゃんとした姿は見てないわ。でも私の願いを叶えてくれた。透過能力も悪魔から貰ったモノよ。昨日は貴女の正体も教えてくれた親切な悪魔よ」
「なるほど......そう言う事ですか」
「もう良いかしら〜 さようなら!」
4体の【願き者の源水】が迫る。
「そうですね。では脱出しましょう!」
オリバーが【願き者の源水】の動きを止めた。
「正気?」
「私は至って真面目ですよ」
「その空間からは誰も逃げれない。現に貴女のお仲間も......」
上に浮かぶ球体の一つ。リーナが隔離されていた。あらゆる攻撃を加えてもビクともしない球体。
「貴女も同じ道を辿るのよ」
ヴァルゴは両手をグーパーし出す。
「身体は動きます。鎖や縄で拘束もしないのは悪手ですよ」
「必要ないわ。貴様はここで終わりだからなぁぁぁあああああああ!!!!!」
ヴァルゴに迫り来る【願き者の源水】。球体の内部に侵入を果たす【願き者の源水】。
笑顔のヴァルゴは手を剣の持ち手に置く。一拍し、静かに発した。
「ふふ~ん☆ ......【絶劍】」
【生徒会】も餌食になってたか......
生徒会長:シフォン・ニア・ウィステリア
副会長:グレース・グリツィーニエ
書記、庶務、会計:各1人ずつ




