表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロプレイ中に人外NPCを助けたら、女型ユニークモンスターに囲まれるVR女王に就任した件  作者: 麻莉
シーズン4 悪魔は嗤い、被造物は踊る 【1章:アグネス女学園の乙女生活】
305/385

スカしてるんじゃねぇ!!

 魔法が使えないから星刻の錫杖を装備できない? バカ言いなさい。星刻の錫杖にも専用スキルがあるのよ。

 装備しない方がおかしいわ!


 どうやら、この花嫁。動くが遅いタイプの敵ようだ。私が接近しても回避する素振りもなければ迎え撃つ行動も起こさない。


「先手必勝!」


 ジャンプからの態勢を整え、裁紅の短剣(ピュニ・レガ)で袈裟懸けをするモーションに入った。


 気がかりが二つある。一つ目は、顔面渦巻き花嫁が登場した時に手に持っていた黒薔薇のブーケ。ブーケが武器と思っていた。しかし、丸呑みしてから何も起きていない。口から薔薇を発射、とか考えていた。でもその兆候もない。


 花嫁にとって回復アイテムと考えたが、戦闘開始前に発生したモーション。回復するとは思えない。身体強化は? 花嫁の動きを観察しても、別段変わった様子は見られない。


 ならば、(ユミナ)へ攻撃の準備。しかし、相変わらず何も発生しない。


 二つ目の懸念点。花嫁の頭上に浮いている謎の数字。【320】と途中半端な数字はさておき、増減しないのは何か条件があるのかもそれない。現状花嫁が何も行動を起こしていない以上、これ以上読めない。ま、戦闘が進めば自ずと解明されるだろう。


 不気味な行動。全て何もなければ杞憂で片がつく。




「先ずは一撃!!」


 切先が花嫁の頸動脈辺りに触れる瞬間――――――


「ほへぇ??」


 一瞬何が起きたかわからなかった。ありのままの状況説明すると......



 裁紅の短剣(ピュニ・レガ)の攻撃は花嫁に当たず。短剣は()()()()()。花嫁の身体と私の身体が触れ合うことはなく、私の身体は廊下の床に転げ落ちた。


 起き上がる時には、花嫁の純白のウェディングドレスが目に映っていた。



【320】→【310】



 花嫁は視線を変える。私を見るや、両腕を前に出す。

 ドレスの隙間から薔薇のトゲ蔦が飛び出す。這う蛇的動きを見せる極太茨。回避するが、私を捕らえんとばかりに動き回る。


「空気嫁って訳じゃないわね」


 自分からは率先して攻撃しない。相手が攻撃したら迎え撃つスタンスみたいだ。この新婚(出現)ホヤホヤ花嫁さんは......


 廊下の壁を壁走りして茨を回避。極太茨が部屋の扉に激突。

 すからず花嫁に攻撃。だが、またも花嫁の身体をすり抜け、ダメージを与えることは出来なかった。


【310】→【300】




「あれ?」


 ぶつけられた扉は無傷。凹みもない。トゲに触れて出来るであろう擦り傷は一つもない。


 私が回避し、扉に勢い良く突撃した茨。寮の扉の強度が如何なるものかは分からない。物と物が直撃すれば、どちらも多少傷つダメージが入る。しかし、棘蔦はダメージを受けた様には見えない。元気100倍の茨のまま。植物に表情がない、のは一旦置いといて...


 何かがおかしい。


「ユミナ様、ご無事ですか」


 迫る茨を全て斬ったリーナが駆け寄ってきた。


「リーナ、気づいた?」


 意図に気づいたリーナは小さく頷く。


「他の生徒、いませんね」


 そう、これだけ騒音が鳴り響いても一向に他生徒が逃げ惑わない。仮に花嫁の能力で扉が開かなくても中から慌てるくらいはする。だが、それもない。まるで初めから寮に私たち4人しかいないかのように......


「花嫁の能力で私たちだけ異空間に隔離されたみたいだね」


 スレッタが言っていたのは、”隔離”の能力か。確か.........花嫁に見つかれば、身体が縛られている感覚味わう。決して逃げ出すことはできない。最後は真っ白い両手に掴まれ、死へ誘われる。”お前から幸せを奪う”と発しながら......だっけ


 NPC的には単なる噂話で片付けられる。しかし、プレイヤーが【黒薔薇ブーケを持つ花嫁】を攻略するには大事な情報。


 1つ目、真夜中に女子寮にいれば廊下に出現する。


 2つ目、”逃げ出すことができない”。これはきっと花嫁を目撃した瞬間に生徒を異空間へ隔されるもの。”身体が縛られる感覚”。これは異空間に強制的に連れ込まれる、と解釈すればいいのかもしれない。


「異空間の範囲は恐らく女子寮の廊下」


 本物の女子寮廊下をコピーしたと考えられる。コピーしたのはあくまでも廊下部分。それ以外は壁として扱われのだろう。部屋の扉をコピーしても壁。異空間に連れてこられた生徒は隠れる場所探して手当たり次第に扉を開ける。だが、壁として設定された扉は開くことはない。


「後は...終わりのない廊下」


 後ろを振り向く。遠くで戦闘中のヴァルゴとカプリコーン。私たちの部屋は()()()。廊下が途切れていないとおかしい。しかし、花嫁の能力でコピーした場所を途切れることがない空間に仕上げてしまった。



「助けも来ない。隠れる場所もない。終わりが見えない暗闇の廊下。普通の人なら精神が病んでも仕方がありません......」


 生徒は恐怖し、無限の廊下を死に物狂いで走る。

 逃げても逃げても、逃げられない。花嫁に捕獲されるまで永遠に――――――





「残る謎。”真っ白い両手に掴まれ、死へ誘われる”か」


 恐らく茨に捕まった後の事に関係する。


「来ます!!」


 リーナが発したと同時に後ろへ跳ぶ。


「あのぶっとい茨さんは単純な行動しかしないようね」


 敵目掛けて一直線に攻撃する。それが判れば対処は簡単。


「ユミナ様、謎はまだあります」


「そっか......あの透明化をなんとかしないとね」


 茨ばかりを注意しても、イコール攻略したことにならない。花嫁を倒さないと私たちは異空間から脱出はできない。運の悪いことに花嫁が2体。両方討伐は必須。討伐するには花嫁の透明化する謎の解明が不可欠。


 茨を回避し、リーナと同時攻撃を繰り出しても、花嫁の身体は当然すり抜けダメージが入らない。


【300】→【280】


 実は大体目星はついてる。これ見よがしにヒントが浮()()()()からだ。


「リーナ。後、28回花嫁に攻撃すればダメージが入るかもしれないわ」


「”28回”? また中途半端な数字ですね」


「花嫁の頭上に数字が浮いてるでしょう?」


「はい......気になってはいましたが、それが

 何か?」


「私たちが同時攻撃した時、数字が【300】から【280】に減少した。数字減少と同じく花嫁の身体もすり抜けた」


「透ける能力には限りがある、と」


 消費【10】で敵の攻撃を回避できる能力。数字が回復する様子はない。私たちが攻撃し続ければ数字は【0】になり、花嫁に攻撃が当たる。


「確実に攻撃が当たるまではヒット&アウェイを繰り返すしかない」


 リーナは彼の物語を紡ぐ朱呪(ヒストリーメーカー)に付属してる鎖くん(意思アリ)に指示を出していた。


「私が斬撃を飛ばして攻撃します。気をつけてください」


 うなづく。


 煌めく(シューティング・)流星(スター)は発動。遮蔽物がないフィールドよりも圧倒的に死ぬ確率が跳ね上がる廊下での光速移動。


 肉薄。花嫁がコチラを視認出来なくても透過は発動する。ならば、果敢に攻める!


「【血海(アナト)


「出力40%......【血の妖(クリムゾン)】」


 廊下に鮮やかな緋が広がるのだった。

スカしてる花嫁と透かしてる花嫁......プゥ(爆笑)


実はこの数字は......花嫁のHPではない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ