ダンジョン攻略スタート! PART.1
「意外と綺麗!」
ダンジョン入り口を潜った私たち。
中は石造りの遺跡だった。床も壁も劣化して欠けている。支柱の装飾は凝っていたがコチラも経年劣化してる。だが崩壊している様子はない。保存状態が良い遺跡と言える。石で造られた道や壁には苔や植物がへばりついている。壁には等間隔に松明が立てられていた。
「ヘェ〜 水が流れてる」
要所で庭池風が造られていた。水面を揺れている。池の下は水を循環させるために水路があった。
「ユミナ、行きましょう!」
私たちはダンジョンを歩き始めた。
ダンションに入る前に3人で話し合った。これはパーティー戦。しかも近接武器のみのパーティー。必然的に全員が前衛になってしまう。そこでモンスターの数に応じて攻撃方法を変える作戦を立てた。1体なら1人が前衛で残り2人が中衛の役割に付く。
「そう言えば、他のグループいないね」
私の疑問にミネルが答えた。
「【初心者ダンジョン】と【メイデンの塔】は他グループとぶつからないように出来てるのよ」
「同じダンジョンを攻略しているけど、他グループには絶対に会わない?」
「そうよ。他グループがいたら目標のボスを倒すのは1組だけになる。毎回熾烈な争いが発生する。防ぐための理事長が組み込んだらしいです」
「【初心者ダンジョン】のコンセプトは少数で危機を乗り越えろ、だからね」
「全員が不慣れな戦闘。如何にモンスターを対処できるか計っているか」
「最初は不安でしたが」
「そうに見えないけど......」
「生まれて初めて武器を持ちました」
「あーなるほどね。今までは令嬢として生きてきたから。教養として知っていても実際に自分が扱うのは勝手が違うからね!」
「......ユミナはどうなの?」
エンジェルハートを鞘から抜く。
「う〜ん。私の場合はコレしか生きる道がなかった、かな〜」
高速でレイピアを振り回す。レイピアだけあって非常に軽い。意識しないと手から抜けてしまう。
「軽いけど、大丈夫そうね」
一通り感触を確かめた。エンジェルハートを鞘に入れる。
「うん? 二人とも?」
振り返るとスレッタとミネルは絶句していた。
前に出て、手を上下に動かした。二人の眼は開きっぱなし。微動だにしない。
少しの間が過ぎた。
「ユミナさん......」
「ユミナ......君は」
「あぁ!!?」
気配がする。ゴブリンが1体出現していた。初心者ダンジョン:1Fは楽な構造となっている。一本道。迷うことがないフロアだ。1体のゴブリン以外が潜伏している様子はない。
「このまま私が行くね!」
二人は未だに放心状態。きっとモンスター出現で正常な判断が出来ないのだろう。きっとそうだ。断言しようー
エンジェルハートを構える。切先をゴブリンに向けた状態でエンジェルハートを高く掲げた。
こちらが表刃を上に向けた構えを取ると一瞬怯むゴブリン。
でもゴブリンは石斧を前に出し、突撃してくる。
石斧を振り回すだけの攻撃。だが鈍い。ゴブリンのレベルは”1”か”2”。レベルが100オーバーしている私には超スローモーションに石斧を振っているように見えている。ゴブリンとの間合いをギリギリに回避。五回攻撃を全て躱わす。五回目でゴブリンは体勢を崩す。その隙を見逃さない。
レイピア系のスキルは持っていない。出来る攻撃手段は一つ。
ゴブリンの胴体目掛けて全力の刺突攻撃を繰り出した。シンプルで真っ直ぐな突き。
刺突攻撃を喰らいゴブリンの胴体にはデカい空洞。エンジェルハートによってゴブリンの身体が打ち抜かれた証拠。本来ならレイピアの切先は細い。モンスターに攻撃がヒットしても身体に残るのは小さい穴。デカい空洞はレベル差の暴力によって発生した証。
空洞部分から徐々にゴブリンの身体が朽ち始めた。地面に残ったのはゴブリンが所持していた石斧だけだった。
「う〜ん。やっぱり慣れないな」
レオにレイピアの動作を一通り教わっている。率直に使い辛いのが感想。
敵の攻撃をパリィは難しい。刀身が細い剣のレイピア。刀身で受け流すこともオススメしない。ましてや殺陣をやれば耐久値が減り続ける。
やれることはひたすら刺突攻撃のみ。貫通性能はあるけど、私には槍武器あるし......
「私の戦闘スタイルに合わない......か」
従者全員から全速力で攻撃を仕掛ける危ない女王として恐怖対象となっている。失敬な!!! 効率と言ってほしいわ。
現状レイピアの運用方法は刺突攻撃しか編み出せない。敵に隙を与える可能性を考慮してレイピアのスタメン入りは当分見送る。
まぁ、今回だけの縛り。今まで使用してこなかった分、新鮮なのも事実。ダンジョンの概要を聞いていた時、レベル差があり過ぎて退屈と感じていた。だからこそ今はレイピアの感触を味わおう!
ゴブリンが消失した。
奥には下へ続く階段。数秒待っても続敵は出現しなかった。私たちは階段を降りていく。




