学園に棲まうウワサバナシ?
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お昼の時間帯。大食堂。プレイヤーと違い女子生徒NPCは規則正しい生活をしている。皆食事を摂ってる。しかし食事はそこまで捗っていない。全員ある机に釘付けだからだ。
「死にたい〜よ」
机の上で突っ伏ししてる。そうです、私です。アホのユミナちゃんです。
「何したのですか、ユミナ様?」
「リーナ。私はもうダメよ。ミジンコ以下......」
反応に困るリーナ。
「えっとー............」
リーナに助け舟を出すカプリコーン。
「緊張しながら自己紹介したのです」
カプリコーンの言葉に不思議がるリーナ。
「緊張くらい誰でもあります。私も緊張しながら自己紹介しました」
「いえ、ご主人様の場合は......クラスメイト様たちからの質問が原因です」
「”質問”?」
「私との関係です」
「何となく理解しましたわ」
転入してきた生徒。同時に生徒の執事。服装から一瞬男性の執事と勘違いを起こした生徒も多い。しかし見た目や容姿、カッコよく神秘的な佇まい、無性に祈りポーズを取りたくなる現象。
担任教師も理事長が特例で認めた執事。訳あって執事服を着ている麗人と紹介されたカプリコーン。
当然、生徒たちからの関心は高まる。
「ご主人様は緊張が最高潮へ。頭が真っ白の状態で私含め2000人以上の女性の恋人がいると暴露したのです。既に2人嫁もいる事も言いました」
「絶対クラスメイトさん。引きましたね」
リーナの言う通り。超特大の爆弾発言した。自己紹介イベントは完全に終わった。流石?は名門貴族の寄宿学園。授業はちゃんと聞いている令嬢ばかり。だが、返って私の心に深いダメージを与えた。
せめてヒソヒソ話くらいして欲しかった......
「リーナはどうですか?」
「魔法学園で慣れていても緊張しました。しかし何人かお友達ができました。これから情報収集を行います」
「既にご主人様より役に立っていますね」
「カプリコーン......後で覚えてとけよ」
「ハァ〜 これくらいで【女王覇気】を放出しないでください。更にドン引きされますよ」
「リーナ〜 カプリコーンが虐めるよ〜」
リーナに抱きついた。黄色歓声が上がった。
「本来ヴァルゴの仕事なのに......どうすれば」
カプリコーンが辺りを見渡す。
「ヴァルゴは......?」
大食堂の入り口。人集りが出来ていた。一人の生徒に群がる女性生徒。全員中心にいる女子生徒に自分をアピールしている。明らかに好意を抱いている雰囲気だった。全員の瞳がハートマークになっているからだ。
あーあー。アシリアに怒られるよ〜
中心にいた女子生徒。絶対に未成年の女子とは違う。アダルトな女性の見た目。正体はヴァルゴ。ヴァルゴは周りの女子生徒に別れを告げ、私たちがいるテーブルまでやってきた。
「お嬢様。何やってるのですか?」
制服姿のヴァルゴ。カッコ可愛い♡ 本当に何でも似合うわね。
しかも、今回は特別に髪型がストレートからポニーテールに変更されている。
「自己紹介でやらかしました」
カプリコーンからの言葉で100%理解したヴァルゴ。
「リーナ。代わります」
「お願いします」
「お嬢様。貴女のヴァルゴが参りましたよ」
リーナから離れ、ヴァルゴを抱きしめた。再び沸く黄色歓声。同時に邪悪なオーラが漂ってきた。これは邪気だな......今はどうでもいい。
「......私もうダメだ」
ヴァルゴは優しく私の髪を触る。
「お嬢様、人は失敗します。前向きに生きましょう。失敗から学び、克服するのです。少し肩の荷を下ろして気楽に行きましょう。それともお嬢様は小さい障害も乗り越えれないのですか?」
ヴァルゴを抱きしめていた力を弱くする。身体が熱くなる! 力が漲ってくる感覚だ!!
「そうね! これくらいの壁を乗り越えれなくて女王は名乗れないわ! やってやるぞ!!!!」
ヴァルゴは二人を見る。カプリコーンとリーナはヴァルゴにグッドポーズを向けた。
「嫁の言葉は伴侶をやる気にさせる!」
「風格のある王妃ですね!」
「褒めても何も出ません!」
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「で、どうだった?」
私からの質問。コーヒーカップを置くヴァルゴ。
「私のクラスでも一人お休みしている生徒がいました。風邪と伝えられていますが、生徒内で噂になっています。”天使からのお迎え”があったと」
私、ヴァルゴ、リーナが一斉に視線を向ける。矛先はカプリコーン。
「......私ではありません」
だよね。
「ヴァルゴ。”天使からのお迎え”って?」
「礼拝堂にある天使像に祈りを捧ぐと天使が降臨すると」
祈りだけで天使が降臨ね〜
「へぇ〜」
「天使からの寵愛を受け、”天界の住人”になれるらしいです」
「そうなの?」
カプリコーンは首を傾げる。
「そのようなシステムを構築した覚えはありませんが......」
「カプリコーンがいなくなった後に改善されたとか」
「可能性は低いですが、否定もできません。しかし、天使になってもいい事ないですよ」
「......この学園、毎朝天に祈りを捧げる校則があるんだから」
アグネス女学園では、毎朝行われるイベントがある。それが”早朝の祈り”。
今日も我々をお守りください、と口に出し、天に祈る。本当はもっと長い言葉を唱えるらしい。アグネス女学園の女子生徒NPCは魂レベルで大切に、真剣に行う。プレイヤーは特に”早朝の祈り”を唱えなくてもペナルティがあるわけでもない。アグネス女学園内部で見ることが許された光景。
プレイヤーに”早朝の祈り”に関してペナルティがないと言ったが、一つだけ注意がある。それは”早朝の祈り”中に女子生徒NPCに話かけてはいけない。
彼女たちにとって、”早朝の祈り”で発する言葉ひとつひとつ大事なモノ。神聖な讃歌。自分の胸に打ち込むように毎日行ってる。それを他者が邪魔するなら、天を軽んじている。
結果、異端者・異分子と迫害を受けてしまう。そうなれば、アグネス女学園を巣立った後、貴族界では壮絶な破滅人生が待っている。
「じゃあ、ヴァルゴのクラスの子は天界の住人になったから行方不明か」
にしても、十人以上も天界の住人になれるとは思えない。
ま、生徒たちの噂話だし。この話は一旦保留ね。
「どうしたの? リーナ」
先ほどから難しい顔を浮かべるリーナ。
「私の聞いた話と異なりましたので......」




