とある一室の神視点
オニキス・オンラインの運営会社、【メビウス】。その社長室で女性の高笑いが響く。
「アハハッ!!? サイコー!!!」
そんな社長に紅茶を渡すのは彼女の秘書。
「笑いすぎよ」
「笑わずには言られないわ!」
敏腕女社長が見ているのは彼女専用パソコン。使用・内部情報を閲覧できるのは社長と秘書のみ。
画面にはオニキス・オンラインのユーザー数と会社の株価、そしてSNSでの盛り上がり。
「あんな配信一本でここまで市場が荒れるなんて...おかしくてね」
「それだけの価値があってのでしょう。人間には...」
紅茶を一口。
「貴女は本当に興味ないのね。まぁ、そこも含めて大好きだけど〜」
「私の計画に支障がないなら、私は傍観者を貫くわ」
社長は一瞬にして悲しみの表情に。
「......そっか。貴女は、そうだよね......」
「で、これからはどうするのよ?」
「う〜ん。残邪竜のパラメーターはそのまま。思考ルーチンも変更なし」
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・【怒り】:臥怒れ邪悪龍→→撃破
・【喜び】:黄金の邪悪龍
・【悲しみ】:海荒狂う邪悪龍
・【恐怖】:霊威ある八邪悪龍
・【驚き】:大地の邪悪龍
・【嫌悪】:九毒龍の邪悪龍
・【期待】:闇と混沌の邪悪龍
・【信頼】:全悪の邪悪龍
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今回の配信で確実に竜種が確認された。これからは多くのプレイヤーが竜種を血眼に探すだろう。
「【リリクロス】はこれまで以上に活発する。楽しみね!」
「私は少し後続プレイヤーが哀れに思えるわ」
「アハハ......【龍の都】はもうないからね」
ドラゴンと会える場所でもあった【龍の都】。プレイヤーは特定のクエストとクリアすると、『龍の卵』を入手。その後孵化するまで育てると生まれた赤ちゃんドラゴンと一緒に冒険できるシステムは既に構築済みだった。しかし邪龍の襲撃で【龍の都】は壊滅。生き残った全ての住民は一人のプレイヤーの庇護下になっている。
結果、【龍の都】があった跡地にしか発見できない。多くのプレイヤーは『龍の卵』を入手イベントもできない。ドラゴンと一緒に冒険も夢のまた夢となった。
「じゃあ代わりに野生のドラゴンを【リリクロス】に放ちますか。【テイム】可能にして」
「貴女は仮にも社長。そんな安直な考え誰もOK出さないわよ」
「そこは私の華麗な話術が試されるわね〜」
社長が画面を切り変える。内容は惑星オニキスの全体図。そして地下に広がる七つの王国。暗黒と人工光の光景だった。
「こうしている間に【裏の世界】が開放され、プレイヤーが開拓するかもね」
「【裏の世界】か。相変わらず貴女の考えは酷いわね」
「ただのゲームには興味ない。私が求めるのは生命体の物語。その時生きとし生ける者たちの極限状態で起きる人生讃歌。それを永久に感じてほしいのよ」
「社長の決定には反対しないわ。ただ......」
「わーかっているわ! 貴女の計画には邪魔しない」
「なら...良いわ」
社長の携帯端末が鳴る。
「はい......畏まりました。少々お待ちくださいませ」
秘書は携帯端末を社長に渡す。
「アメリカ大統領から」
「もしもし〜 どうしたの、ハーコートちゃ〜ん」
社長が電話をしている間、秘書はパソコンの画面をまた切り替えた。
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1.バアル
2.アガレス
3.ヴァサゴ
4.ガミジン
5.マルバス
6.ヴァレフォール
7.アモン
8.バルバトル
9.パイモン
10.ブエル→→遭遇:プレイヤー名:タタコワサ
11.グシオン
12.シトリー
13.ベレト
14.レラージェ
15.エリゴス→→接触:昆蟲種:蜂族
16.ゼパル
17.ボティス→→接触:昆蟲種:蟻族
18.バティン
19.サレオス
20.プールソン
21.モラクス
22.イポス
23.アイム
24.ナベリウス→→接触:昆蟲種:鍬形族
25.グラシャラボラス→→儀式中
26.ブネ
27.ロノウェ
28.ベリト→→接触:昆蟲種:蝶族
29.アスタロト→→接触:昆蟲種:蟷螂族
30.フォルネウス
31.フォラス
32.アスモデウス
33.ガープ→→接触:昆蟲種:蜘蛛族
34.フルフル
35.マルコシアス
36.ストラス
37.フェニックス
38.ハルファス
39.マルファス
40.ラウム
41.フォカロル
42.ウェパール
43.サブナック
44.シャックス
45.ヴィネア
46.ビフロンス
47.ウヴァル
48.ハーゲンティ
49.クロケル
50.フルカス→→接触:昆蟲種:飛蝗族
51.バラム
52.アロケル
53.カイム
54.ムルムル
55.オロバス
56.グレモリー→→契約済:プレイヤー名:ユミナ
57.オセ
58.アミー
59.オリアス
60.ウァプラ
61.ザガン
62.ウァラク
63.アンドラス
64.フラウロス
65.アンドレアルフス
66.キマリス
67.アムドゥスキアス
68.ベリアル→→接触:昆蟲種:兜族
69.デカラビア
70.セーレ
71.ダンタリオン
72.アンドロマリウス
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72体のNPC。名称の殆どは灰色状態。これは72体の悪魔のほとんどがプレイヤーやNPCと接触もしくは契約していない証。56.グレモリーは会社内で議論が続いていた。元グレモリーの方が圧倒的な強者。今のグレモリーが見劣りしてしまう可能性。元悪魔よりも現行の悪魔:グレモリーが務めるべきだと。様々な意見があった。最終的には元悪魔の方の案が優先された。
「【裏の世界】に入れる条件。その一つ目を完遂できていない時点で危惧することはないわ」
一つ目の完遂が即終了するとは思えない。二つ目は半分完成・半分は未完成状態。三つ目は前条件二つをクリアしていないと発生しないシナリオイベント。それにまだまだ【スラカイト】・【リリクロス】でやらないといけない事案が多く残ってる。でなければ運よく【裏の世界】に侵入を果たしても、即ゲームオーバーになるのは容易に想像ができる。
社長を見る。まだ電話していた。
『えぇ〜 いやよぉ〜 外宇宙の機械生命体残骸は渡しませ〜ん。データなら上げるから』
倒したの私だから所有権は私なんだけど...
まぁ、そこはどうでもいい。弱い存在に興味はない。
『じゃあ、ソドール人形の情報って......貴方』
秘書がすかさず携帯端末を社長から奪う。
「あぁ!!?」
可憐な女性の声が荒げた口調に変わる。
「オイッ! 汚い口を閉じろ。そして永久に忘れろ。そしたら今の言葉は聞かなかったことにする。もしももう一度でもその言葉を発するなら......」
秘書から溢れ出る危険な圧。濃密な邪悪。人間では立つことすら許されない。
「貴様のアメリカが消滅すると思え」
秘書が携帯端末を放り投げる。
「ごめんね、ハーコートちゃ〜ん。ワタシの秘書は血気盛んなの〜 そこも大好きだけど! まぁ、秘書の言った事はワタシも同意見」
端末先で聞こえる男性の怯えよう。社長の声質は変わらずのほほんとした声。だが、感じたのは真逆。身体の芯から凍えるものだった。
「...人間風情がイキがらないでね〜 いつでも全人間を殺せるから〜 ワタシは勿論可能、秘書も脅しじゃなく本気で実行出来るわ。でもコチラにも非はある。お詫びとして外宇宙の機械生命体のデータは送るね〜」
通話は終了した。
「...少し落ち着いた」
「ワタシは......冷静よ、クロ」
「リリスって素晴らしい名前があるのに。まぁ、良いか。確かにワタシたちが二人居たらややこしくなるわね」
「......それ、白陽姫ちゃんにも当てはまるけど」
「あーごめん。更に頭が混乱するわ! 本当に貴女たち二人はワタシの想像を越える存在だよね」
社長は自室を見渡す。僅か1分の出来事。社長室は半壊していた。
「あ〜あぁ。酷い事するわね、私の社長室が...」
「どいつもこいつも......人の魂をなんだと思っているのよ」
「貴女も嫌ってほど分かっているはずよ。通常兵器が一切効かない兵器。死なない不死身の存在。今までの戦争の概念が一変する。それを日本の一会社が全てを保有。大統領は地球の未来を考えている」
「地球の未来よりも60個の魂の方が大事なのよ。もう二度と皆を兵器には戻さない。完璧な浄化が必要...」
「その為にも一刻も早く12体全てを最終調整体にしないと」
三度画面は変更された。星霊の項目だった。
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・乙女座:種族:【星霊】
真名:【ラブ】
・牡羊座:種族:【星霊】
真名:【??】
・牡牛座:種族:【星霊】
真名:【??】
・双子座:種族:【星霊】
真名:【??】
・山羊座:種族:【星霊】
真名:【??】
・獅子座:種族:【星霊】
真名:【??】
・水瓶座:種族:【星霊】
真名:【??】
・蟹 座:種族:【星霊】
真名:【??】
・射手座:種族:【星霊】
真名:【??】
・蠍 座:種族:【星霊】
真名:【??】
・天秤座:種族:【星霊】
真名:【??】
・魚 座:種族:【星霊】
真名:【??】
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「みんな一定以上の好感度は持ってる。発生したイベントは進行中。牡牛座は殻を破り、獅子座の好感度は今回の邪竜戦で上がった。ここ1ヶ月で蟹 座、水瓶座も上昇。順調ね!」
他プレイヤーに支配状態で一時期奴隷として身を置いていた蟹 座・射手座・蠍 座・天秤座・魚 座。プレイヤー:ユミナによって解放&従者になった5体の星霊。彼女たちも既に従者になってる星霊よりは好感度数値は低い。しかし順調に育っているのは確か。
「初めに【真名】を教えた乙女座から約1ヶ月。未だに別の星霊は教えていないか」
「元々長期間を見据えてた計画じゃない。寧ろこの状況は好調よ」
「そうね。一番の難関でもある乙女座が一早く攻略された。そう考えれば順調とも言えるね」
「【裏の世界】が解放される前に半分以上が完了していないとキツいわ」
なんたって【裏の世界】の住人達は【元———】......
「私は【希望】にしておきたいけど...」
「だよね。でも世界の結論は出ていない。【希望】か【絶望】か。まだ分からない」
社長は座る。パソコンをいじり出す。
「さてと。貴女の計画も私の理想郷も進めないとね。その為に今まで以上に頑張って貰わないと......」
今尚増加するプレイヤーの人数。一人のプレイヤーには限界がある。間接的にも星霊が大勢のプレイヤーと触れ合うことで進化を果たす。最後は【星霜の女王】が導く。どんな試練が待ち構えていても必ず成し遂げないといけない。
社長は不敵な笑みを浮かべる。
「【表の世界】と【裏の世界】。両方の世界を統べる王様は誰かな〜」




