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おつまみ探しと邪龍?と配信?? その13

サブタイのサブタイ

フェーネの殺る気スイッチ、ON!

 

 ◇◆◇


 見つけた!


 レオに全速力の投擲をされた私。絶賛空中を一次関数的直線にぐんぐん上昇する。風圧で視界が限定的になってる。細くなった眼で捉えた。私以上に体勢が崩れている妖精さんを。


「捕まえた!」


「あ、ありがとう」



 自由が効かない妖精を優しく保護。手でしっかりフェーネをキャッチ。フェーネの焦点が合わず目がぐるぐるしてる。


「ごめん。私のミスね」


 フェーネの身体は臥怒れ邪悪龍(ニーズホッグ)の攻撃でダメージを負っていた。すぐさま回復魔法をかける。傷は塞がり綺麗な身体に戻った。


「気にしないで。ユミナのせいじゃない」


「戻ろうか」


 大地理(ガイア)を発動。踏み台として再利用する。『戰麗(アドバンス)』で脚力が強化されてる。一瞬で地上に戻れる。


「待って」


 フェーネが私の行動を静止した。


「ユミナ。私を投げて」


「こんな時まで」


 私の言葉にフェーネは首を左右に振る。


「違う。このままやられっぱなしは性に合わない」


 やる気の瞳。いつものドMの態度ではない。


「分かったわ。調整するけど、気をつけてね」


 気分はメジャーリーガーのピッチャー。

 フェーネをボールに見立て、地上目掛けて投げた。


 私の手から放たれたフェーネは空を切り、急降下。


「フェーネも行ったし、私も借りを返さないと」


 後に続くように私もまっさかさまに落ちていった。






 よくも......


 眉間に凄まじい怒りが生まれる。

 フェーネの中は殺意に似た衝動に駆られている。衝動を抑えるには叫ぶよりも。直接殺意を敵にぶつけるしかない。抑える事はできない。憎しみは凶暴性に変わる。内に隠れ表に形相として出てきた。顔から首を通って全身へ。お腹から腕、指の先。足から爪先まで凶暴さを纏う。


「よくも......私の身体に.........傷をつけたな......!」


 湧き上がる怒りを武器にフェーネの両手に稲妻が走る。雷は荒々しくいつ手が爆発してもおかしくない。


 無秩序に飛び交う雷は、主の意思で一本また一本と集束していく。形を変え雷塊がフェーネの手を逃がさんばかりにくっつく。小さき妖精には似つかわしくない雷鳴鳴り響く球体。


 地上に向けて鋭い目つきを放つ。そして、一言口に出した。


「ブッ殺す!!」


 憤激の妖精姫は更に光の力を借り、加速度的に落ちていった。










 ◆◇◆◇


 場面は変わる。ここはリリクロス大陸に存在する国。名を妖精の国(ティターニア)。民と華々しい花畑を守る国。妖精の国(ティターニア)に咲く花は一輪の花さえも貴重な恵み。


 初代女王アーシャ・フォレルスケットと盟約を交わした母なる苑輪、原初龍フェアリードラゴン。彼の原初龍は女王に告げた。『悪しき意志から世界の聖花を守護せよ』、と。盟約は続き、妖精の国(ティターニア)に咲く花々は枯れることを知らぬ。美しく咲き誇っていた。


「ハァ~」


 妖精の国(ティターニア)の現女王ロベルティーナ・フォレルスケット12世。玉座に座ってる彼女はため息を漏らす。


 ウェーブのかかった緑色の髪は少しばかりくたびれている。ブルートパーズの瞳は生気が失いかけていた。


「女王様。少しお休みになられた方がよろしいかと」


「ありがとう。でも私は大丈夫、です」


 妖精の国(ティターニア)の女王に進言するのは、【(かい)ワレ】と名乗る旅人。(もとい)女性プレイヤーだ。リリクロス大陸はスローペースで攻略が進んでいる。快ワレもまた、リリクロス大陸を攻略していたプレイヤーだった。過去形なのは、攻略よりも大事なモノを見つけたからだ。



 妖精女王(ロベルティーナ)に心酔してしまった、からだ。




 偶然発見した妖精の国(ティターニア)。はじめの内はプレイヤーと戦闘を余儀なくされた。しかし快われの弛まぬ努力により厳重な審査と限定的なエリア解放がなされた。プレイヤーの入国は果たされた。


 ロベルティーナは快ワレに興味を抱き、彼女だけに許された王城への出入りを許可した。歴史上初の行い。ロベルティーナも内心恐怖を抱いていた。しかし以前邂逅した旅人でもあり、娘の主のユミナ。ユミナと出会わなければ、人間を招き入れることしなかった。


 ロベルティーナは快ワレを信頼し、また快ワレもロベルティーナに忠誠を誓う。快ワレはロベルティーナの腹心の地位にまで上り詰めた。これもひとえに快ワレがロベルティーナを愛してが故に実現した奇跡だ。


 ロベルティーナの魔法で快ワレは種族【妖精】になった。プレイヤーはジョブの他に種族も変更できる。ジョブも種族も基本同じ手順で入手が可能。


 クエストを受注し、クリアすること。ジョブも種族も高難易度のユニーククエスト。かなりの忍耐と努力が要求される。



 種族はジョブとは違う点が一つある。


 一度プレイヤーが人間から別の種族に変更承認すると二度と人間には戻れない。また別の種族に移り変わりもできない。データをリセットして再度一からやり直ししか戻せない仕様となる。




 人生一回きりの種族チャンス、と表現するプレイヤーは多い。



 快ワレは迷うことなく妖精になることを選んだ。後悔は微塵もない。


 人間の身長はなくなり、ロベルティーナと同じ身体になった。背中に羽が生え、自由に飛べるようにもなった。快ワレもロベルティーナに人間の世界を話をした。


 いつの間にかお互いが旧知の間柄のように接していた。


 今は他の視線もあるので、公務での口調になってる快ワレ。


「何かあったのですか?」


「ムスメがね」


 ロベルティーナから娘の単語を聞いた周りの配下。静寂だった玉座の間が騒がしくなる。畏怖する者、恐怖する者、泣いてる者等。


 快ワレも周知している。ロベルティーナの娘はフェーネ。一人娘で次期女王候補でもある。しかしフェーネは女王に興味はなく、母親のロベルティーナに何も言わず黙って妖精の国(ティターニア)を飛び出した。


 妖精の国(ティターニア)の女王は先代の指名、母から娘、選挙など時代によって様々な任命方式採用されている。なので、娘が次期女王辞退しても妖精の国(ティターニア)が滅亡することはない。


 風来坊ならぬ風来姫は、意外なことにすぐ見つかったらしい。妖精界単位を人間界換算で100年と言われた時は感覚バグってるな、と当時の快ワレは苦笑していた。


「心配なのですね」


「そうね。心配であるけど...女王ユミナの方が心配なのよ」


『オニキス・オンライン』で何かと話題になるプレイヤー、ユミナ。百合姫と呼ばれている。理由はシンプル。数多の女性NPCを従者にし、従者もまたユミナを心底溺愛しているからだ。そんな女の園を築き上げたユミナの従者にロベルティーナの娘もいる。


 半ば強引に娘をお願いします、と強要したとか。


「どうして娘ではなく、主が心配なのですか?」


「カイちゃ......ごほんッ。快ワレは知らないわよね」


 二人っきりのときは”カイちゃん”と愛称で呼ばれている快ワレ。快ワレも”ベーナ”と呼んでいる。すぐさま威厳のある女王の口調に戻るロベルティーナ。


「北に大きな樹があるのは覚えてるかしら」


「はい。『天稀の巨樹』ですね」


 樹齢何千年も経過した太古の樹。本来なら今も成長し続け大気をも貫くとされてきた。しかし、大木は大破し、二度と成長ができない樹と成り果てた。


 それでも富士山級の高さが残ってるのは凄いけど。


「『天稀の巨樹』を一撃で破壊したのは娘なの」


 ロベルティーナの告白に快ワレは絶句した。

『天稀の巨樹』の直径は日本の首都と同じ。それを小さき妖精一人が折ったとは到底信じられない。


「あの()、普段は滅多に怒らないのよ。でも一度だけ怒りの頂点に達した事があってね。原因は親子喧嘩。元々妖精界では珍しい電撃魔法の使い手で、最大火力で雷を放って......」


「『天稀の巨樹』が折れた、と」


 頷くロベルティーナ。


 ロベルティーナが頭を悩ませている理由はわかる。確かに心配になる。あの巨大な大木を平気で破壊する威力を持つ妖精が従者にいるのだ。気が気じゃない。


「幸か不幸か、娘が変態になっていて助かったわ」


「ヘ......ヘンタイ、がですか??」


「怒りを溜め込むことなく、自由に生きているのですから!」


 呆れつつも娘を心配する母親が、そこにいた。


「さぁ、女王様。お仕事の続きを致しましょう」


 快ワレの一言で業務は再開した。


 今日も妖精の国(ティターニア)は平和だ。









 姫が変態なのは不味いのでは?


 快ワレは心の内を黙って閉まう。

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