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厄除け串団子は激戦品。その7

サブタイのサブタイ

30個(1箱)×365日×100年

「攻撃止んだ......」


 途中から白餅しか降ってこず、参加者全員は逃げるか杵で打ち返すしか選択肢がなかった。黄金お堂さんに接近する方法は、御開帳時はオススメしない。何故なら参加者が御開帳時に石階段を目指すと降ってくる餅の量が増えるモーションに入る。しかも全部白餅。参加者を苦しめるだけに存在している白餅。




 花粉(人類の敵)みたいだ。アイツ(花粉)ら、こちら(人間)と対話する気は全くない。こっち(人間)の意思など関係ない。自分たち(花粉)は自分たちが決めた行動を愚直に歩んでる。もう頑なに自分の仕事だけを全うしている。放出する量をコントロール出来ないのに定時(時期)帰宅。まだ微量の花粉なら可愛げもある。しかし周り(人類)を気にしない配慮のなさ。何十年も仕事しているのに、噴出しますと挨拶も報連相もない。そのくせ毎日加減も知らず大量に花粉を放出しているから、自分は仕事が出来てると勘違いして更に花粉放出。後始末もしない。周り(人類)不快感(花粉症)を与えるだけ............何の話だっけ??





 白餅の爆発で身体が疲弊していたのだろう。私の思考も変な考えをしてしまった。


 黄金お堂さんの御開帳攻撃は終わった。扉が閉まる。黄金お堂さんが起立。

 背中が光る。背中から腕が生えた。数は......わからない位生えてきた。


 レオとカプリコーンが対峙していた白い触手の正体は黄金お堂さんの腕だったのか。いつから千手観音菩薩になったのよ。ま、それはどうでもいい。


「お嬢様見たいですね」


 ちょっとなに言ってるか分かりません????

 私の星王の創造はキモくありません~!!

 触手プレイもしません(堅い意思)


「私の姿は美しいのよ。あんな触手野郎と同類になれるのは心外だわ」


「......そもそもお嬢様が液体金属で疑似腕や金属刃を身体に生やしたのは、自分が極力動かず敵を殲滅するためでしたよね」


「ま、初期案はヴァルゴの言う通りだけど」


 接近戦は星王の創造で生成した疑似腕&金属刃で攻撃。私本体は後方から魔法で遠距離攻撃を想定してた。


「いつの間にか自分も動く姿勢を見せ、休憩せず常時敵に突っ込む全身武器人間になりましたよね」


「け、結果的に善戦してるから問題ないわ」


「前よりも攻撃が予測出来ないと皆が嘆いてました。挙動不審な(キモい)行動で脅威(怖い)、と。その点、あの黄金のお堂は正直過ぎて予測しやすいです。座れば白餅と黒餅を利用しての遠距離攻撃。起立すれば白い触手......この状況だと白餅が攻撃してくる、と考える方が自然ですね。白餅を伸ばして敵と接近戦。本体は体力回復。戦況を見て再度遠距離攻撃。このループです。実に効率的な動きですね」


「遠回しに、私をバカにしてない?」


「いえ。微塵も馬鹿にはしていません。育て方を間違えたと思うこともありますが」


「それを、バカにしてると言うのよ。もう知らない」


「そっぽ向かないでくださいよ、お嬢様。敵の攻撃が予測しやすいのは、言い換えれば対処しやすいのです」


「......じゃあそこまで豪語するなら、アイツから根こそぎ餅を剥ぎ取って来なさいよ! あのエセ効率厨に」


「お任せください、お嬢様!!」


 両手に杵を携え、ヴァルゴは駆けていった。








 ◇◆◇


 石畳に置かれた大量の餅。


 餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅餅


「暫く餅は見たくないかも」



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ・【厄に呑み込まれたのお餅:状態《呪い》】x10万個     


 棒状に形成された『くし団子』に適したお餅だった物

『厄』に晒され、神聖なお餅は呪られた不浄なモノへと変わり果てる。

 現状のお餅を食す場合、身体が呪いに蝕まれる。

 浄化するには源徳寺の代々巫女たちによって受け継いできた特別な妖術が必要となる。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 レオグループ、カプリコーングループ。あと私グループ。三つが協力して効率良くお餅を獲得。黄金のお堂さんから搾れるだけお餅を搾り取った。黒餅はなるべく全て回収。白餅触手も何百回と切断からの高速餅つき。


 慣れない杵。系統はハンマーに位置付けされている。最初は餅つきは何度か失敗して餅をダメにしてしまった。その後はコツを掴み、何とかマトモなアイテムとしてゲットした。


 曰く付きのお餅だけど......


 食材アイテムでもある、餡子とお餅。足が早い。食材アイテムは時間経過と共に腐る仕様になる。ウラニアの指輪で問題は解決。

 レオグループとカプリコーングループは【千腕餅門】に残った。ヴァルゴのお餅荒稼ぎ作業に心を動かされたからだ。お前には負けない、確固たる決意を瞳に宿して。彼女たちは今も触手と闘ってる。


 残る試練はあと一つ。


「最後が長い石階段を登るとは......」


 最後に特大の試練。素材集めもしない。モンスターも湧かない。ただなが〜い石の階段をひたすら駆け登るもの。


「遂に私たちだけになったね」


「私たちはともかく、別の参加者たちは黄金のお堂に苦戦しているみたいですし」


 ヴァルゴの言う通り。長い戦闘中で黄金のお堂に関する攻撃パターン情報を得ていた私たち。

 お餅回収はお手の物。後からやってきた参加者はそうでもない。苦戦を強いられる。黒餅をゲットしても白餅の爆発に巻き込まれ、黒餅を落とす参加者もいた。あとは触手に捕まって、拘束された参加者もいた。


 私の従者が触手に拘束されずに済んで良かったよ!


「急に不敵な笑みを浮かべないでください」


 えっ? そんな顔してた?


「何か企んでいましたね」


 鋭いわね。流石私の嫁だ。


「別に。大した内容じゃないけど」


「......考えていたことは認めましたね」


「ただ......みんなが黄金のお堂の触手に捕まらなくて良かった〜な」


「っ? 仮に捕まっても私たちは自力で脱出できますが?」


「勿論、みんなの力を信じていないわけじゃないよ。私が安堵したのは......みんなのあられもない姿を有象無象に見られなくて良かったなって」


 ヴァルゴは納得した顔を浮かべる。


「......確かに嫌ですね。お嬢様に見られるならまだしも。どこぞの者に触手に拘束された姿は見せられません」



「そうだよ!! みんなを触手で拘束していいのは、この世で私だけ!!!」


 私のスーパーハイテンションは一瞬で沈静化された。

 静寂は長く続いた。世界が停止したようだった。


「......ごめんなさい。みんなには言わないでください」


 ため息を吐くヴァルゴ。


「......言いませんよ。その後の展開が容易に想像つきます」


 私たちは階段を上っていく。そして頂上らしき場所まで到達した。




 拍手喝采ッ!!


 歓声が鳴り響く。源徳寺本堂には沢山の和ノ國(わのこく)の国民。源徳寺の住職さんや何千人いる巫女さんたち。全員が源徳寺に到着した私たちに大歓声と大歓迎で迎えられた。


 ヴァルゴの手が前に。


「ゴールは目の前です!」


 手を握った。


「行こうか!」


 私たちは二人揃って、ゴールテープを切った。






 ◇◆◇◆◇


 カグヤは目の前の光景に苦笑していた。

 主でもあるユミナに自分の不調の原因を除去するアイテムを取ってくるようにお願いしていた。

 結果は見事、『くし団子』を獲得して戻ってきた。ここまでは良かった。


「多くないか」


 カグヤは唖然とする。目の前に広がる光景は奇怪。


 大量のお盆に乗っている物。紛れもない目的の『くし団子』。名を【厄除けくし団子】と言う。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ・【厄除け串団子】


 種類:食品アイテム。一箱30本入り。

 和ノ國(わのこく)天日(てんび)山源徳寺限定だんご。

 棒状の餅に竹串を刺し、餅の上に餡子を乗せる団子。

 浄化に長けた巫女が丹精込めて作った【厄除け串団子】。

 食べれば、自分に纏う『厄』を祓うことができる。

『厄』がない状態で食すと全ステータスが大幅に上昇。

 効果時間は一本に付き10分。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 一箱に30本の【厄除けくし団子】が入ってる。一月は保つ。無くなればまた【厄除け串団子】を取りに行けばいい。自力でも再度主にお願いするでも、いくらでも方法はあった。しかし—————————



「言ったじゃん!『カグヤが接種しきれない量をかき集めてくる』って」


「確かに言っていたがな。これは......」


 箱の山。100年毎日一箱分消費すれば、なくなる......かもしれない。それだけの大量の【厄除け串団子】がカグヤに献上された。


「カグヤには幸せになって欲しい」


「......ユミナ」


 カグヤは涙を流していた。無意識。カグヤは自分で涙を拭う。けれども止まらない涙。


「妙な気分じゃ」


 私はカグヤを抱きしめた。カグヤも私を抱きしめる。


「その妙な気分を私は絶やさない、絶対に」


「ありがとう......ユミナ様!」




 《クエストクリア、おめでとうございます》


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 和ノ國(わのこく)限定クエスト


 ・《御利益団子は険しい道のりの果てに》:クエストクリア


 ・《争いの饅頭を勝ち取れ! 然すれば愛を成就す》:クエストクリア


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 カグヤと別れた後、私はボルス城の地下へ。


「はい。スコーピオン!」


 私は研究所で作業中のスコーピオンに【愛成就の饅頭】を渡した。《御利益団子は険しい道のりの果てに》のクリア報酬が【厄除け串団子】なら、《争いの饅頭を勝ち取れ! 然すれば愛を成就す》のクリア報酬はこの【愛成就の饅頭】となる。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ・【愛成就の饅頭】


 種類:食品アイテム。

 和ノ國(わのこく)、女王殿クシナダから賜った珍品。

 現存する最後の一個。

 桃色の饅頭を食した者は目の前の者を一生愛する。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 簡素なテキスト。でもクシナダさんに直接効果を教えてくれた。効力は絶大。それ故危険を判断され、過去に残っていた【愛成就の饅頭】は全て女王殿が回収。そして厳重に管理したらしい。


 愛の力は強力な呪術と同レベルの呪い。長年少しずつ祓い、残り一つは私の手に渡った。『オニキス・オンライン』で事実上独占した限定アイテム。嬉しい反面、効果による恩恵が計り知れない。


「確かに」


 木箱は研究所の冷凍庫に保管された。


「ほんの少しだけ待っててよ、ユミナちゃん! 直ぐに大量生産して見せるから!!」


 いや、申し訳ないけど......全く持って待ちたくない気分だから


 みんなにメロメロになる私を想像し、超弩級の性欲モンスターにならないか心配である。

 それに饅頭である以上、私が食べないと効力は発揮しない。


(約2000個の饅頭を食べないといけないのか)


 私は心でため息を漏らすのだった。




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