厄除け串団子は激戦品。その5
サブタイのサブタイ
流石私の相棒
粒餡でも問題なく『くし団子』は入手できる。しかしカグヤに渡すなら、やっぱり一番適した漉餡にした方がいい。捕獲した提灯餡子得:【炊きLv.1】......長い。アコワンにしよう!
アコワンを持ったまま、同じ【炊きLv.1】を探した。三匹固まっていた。そのうち一匹を捕捉。で、喰べさせた。
「もう一匹〜」
アコワン【炊きLv.2】をそのまま【炊きLv.1】へ。
「あれ? 見向きもしない......?」
アコワンは残った提灯餡子得:【炊きLv.1】二匹には目もくれず、少し離れた場所に漂ってる提灯餡子得:【炊きLv.2】を凝視していた。
口をパクパクし出す。私から逃げるためにもがくモーションをし出すアコワン。
「もしかして......」
アコワンを持ったまま獲物へ。
獲物は猛スピードでやってくる私たちに驚く。逃げる瞬間にアコワンに捕喰されてしまった。
「【炊きLv.3】!!」
思った通り。同じ炊きレベルじゃないと提灯餡子得は反応しない。争いは同じレベルの者同士しか発生しない、の様な行動かも知れない。
「うん? じゃあ【炊きLv.10】はどうなるんだろう......まさか」
ある懸念が生まれた。いやぁ〜、そんなことないよな......
『【10】はオレが狩る!!!!!!!』
参加者の妖怪が提灯餡子得に攻撃を仕掛けようとする。よく見ると【炊きLv.10】が二匹。闘っていた。テキストにも記載されている。【炊きLv.10】が最大レベル。ドロップする漉餡も最高級品に違いない。
こぞって参加者の妖怪さんたちは二匹に狙いを定めている。
『バカか、アイツら......』
私の近くにいた他の参加者たち。熟練者っぽい。彼らは【炊きLv.10】を狙っていない。興味がない表情だった。むしろ【炊きLv.10】を狙っている参加者に呆れていた。
【炊きLv.10】同士の激しい攻防は意外にも早く終わった。
やはり、か......
【炊きLv.10】の二匹は相打ち。どちらも跡形もなく消滅した。で、肝心のドロップ品の漉餡は落ちなかった。
うわぁ〜 かなり落ち込んでいるよ......
二匹の【炊きLv.10】を狙っていた参加者の皆様、ご愁傷様。
「レベル10同士が揃うと、相打ちエンドになるのか」
このフィールドで共食いして己を強化している提灯餡子得たち。時間が経過すれば瞬く間に【炊きLv.10】大量発生になるはず。しかし増えず、見かけるのも稀であった。
疑問には思っていたけど、まさかの【炊きLv.10】同士消滅ルートに入るとは。
一匹の時を狙えばイケる。が、そう上手く行かないのが世の中だ。
どうやら【炊きLv.10】が一匹完成すると、突如【炊きLv.10】が湧く仕様らしい。強制決闘イベントが発生。両者の攻防は30秒くらい。その間に二匹の【炊きLv.10】を倒さないと意味がない。
そんな広大なフィールドにいる喧嘩っ早いニ匹の提灯餡子得を見つけて、30秒の間に二匹を秒殺するなんて。しかも提灯餡子得:【炊きLv.10】はかなりデカい。一撃で倒さないと間に合わない。
そんな予測不可能で出現するモンスターに光速で近づき、巨大なモンスターを一撃で仕留める離れ技ができる者なんていないよ。
世の中を舐めないでよね!!
「お嬢様〜!!」
アコワンがようやく【炊きLv.3】から【炊きLv.6】まで育てた私に近づくのはヴァルゴだった。
「やりました!!」
非常にご満悦なヴァルゴ。良いことでもあったのかな〜
「何が?」
ウラニアの指輪から取り出した和鍋。デカい和鍋だな......業務用のポリバケツくらいの大きさだね。
ヴァルゴがフタを開け、中身を確認すると——————
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・【厄に呑み込まれた【炊きLv.10】の漉餡:状態《呪い》】x2個 (20000グラム)
最高級の品質で極上の漉餡だった物。
『厄』に晒され、神聖な漉餡は呪られた不浄なモノへと変わり果てる。
現状の漉餡を食す場合、身体が呪いに蝕まれる。
浄化するには源徳寺の代々巫女たちによって受け継いできた特別な妖術が必要となる。
※提灯餡子得には【炊きLv.】が存在する。
【炊きLv.1】〜【炊きLv.5】までが粒餡状態の餡子が入手できる。
【炊きLv.6】〜【炊きLv.10】までが漉餡状態の餡子が入手できる。
源徳寺の『くし団子』に適しているのは漉餡状態の餡子である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「偶然、【炊きLv.10】が二匹いまして! 一匹一撃で倒したら大量の餡子、ゲットしました!!」
ヴァルゴの入手した餡子を見て絶句する熟練者っぽい参加者たち。
ヘェ〜 【炊きLv.10】一匹を倒すと10000グラム手に入るのか。二匹だから20000グラム。つまり20キロ。カグヤに渡す『くし団子』に申し分ない量の餡子を一度に入手したヴァルゴ。
いや、その事はどうでもいい。よくないけど。それよりも......マジか。
「サスガ、ダネ。ヴァルゴ。コレカラ、モ、ガンバッテ」
「はい!!」
絶世の美女から発せられた幸福の光。
ヴァルゴの満面の笑顔が刺激が強すぎた。眩しすぎて目を押さえる参加者たち。失神した参加者、頬を染めうっとりとした瞳をする参加者たちも大勢いた。目の前に漂う提灯餡子得は行動不能。お腹を上にしたままの状態。
私の従者たちは見逃さない。次々狩られる大量の提灯餡子得。
ヴァルゴを私に褒められたのは余程嬉しかったのか、【炊きLv.10】を探しつつ提灯餡子得を討伐していった。
そう言えば、いたわ、私の相棒に。規格外の芸当を息を吸うように平然とやってのける人物が......
次話、7時頃更新します!




