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リアルフレンド、ゲームの世界へ。その10

サブタイのサブタイ

バビロンの穴




 洋館内に少女はいない。この情報を元に攻略を続ける三人。


「通路が途切れてる」


 アクイローネたちの前に広がる惨状。

 洋館2階の西側から東側へ進める階段。玄関ホールから2階へとストレートに昇れる階段として機能もしてる。


 今は廃墟になってる洋館。廃墟になる前はきっとゴージャスな階段だったのだろう。真っ直ぐなエントランス階段は数段を残しなくなってる。同時に2階に昇る階段は一つもない状態。崩壊していると言っても過言ではない。


 階段があった場所の下には大きな穴が新たに出現していた。これは初めから穴はない。アクイローネたちが洋館攻略を開始してから現れたイベント。


 穴中に入ればどこへ通じるのかは誰も知らない。アクイローネたちの悪友ことプレイヤーユミナは謎の巨大穴にひきづり込まれていった。時間にして30分は経過しているだろう。にも関わらず人が這い上がってくる気配はない。


「穴から這い出たゾンビ......いないね」


 欄干。2階廊下の囲い手摺りに手を置き下を確認するブッシュ。


 イベント後三十体のゾンビが出現した。全てを一度に対処することはできない。戦闘を諦め闘争を余儀なくされたアクイローネたち。あれから時間経過している。ゾンビが消えたと考えて良さそうだ。


 先ほどまでの騒音はない。静寂に包まれたエントランスホール。謎の少女の出現と合わさって一気に緊張感が高まる。


「で、どうする?」


 リズムは足場が残ってる廊下を進む。

 助走して反対側へジャンプすることも可能かも知れない。


「二人は............落下するか......」


 ステータスが貧弱なブッシュとリズム。このまま落下してゾンビの襲来でおしまいのパターン。

 それだけは避けたい。


 数秒考えた後、アクイローネは目を見開く。閃いたからだ。同時に悪い顔をする。


 ニッコリ笑顔を二人に見せるアクイローネ。


「二人共、妙案があるんだけど〜」


 リズムとブッシュはアクイローネからの()()を事細かに聞いた。


「それしか......ないか」


「はぁー............嫌だな」




 ◇◆◇


 リズムとブッシュは浮いていた。バグではない。正常に稼働してる。


「ま、諦めなよ!」


 二人を両脇に挟んでるアクイローネは非常に笑顔。

 アクイローネの妙案とは二人を抱え、助走して反対側へ飛び移る方法。レベルが100を超えてるアクイローネなら助走込みで楽々渡れる。


 アクイローネが二人を投擲する作戦もあった。その場合、反対側の廊下へ行っても無事ではない。落下ダメージが生じる。


 更に廃墟と化してる洋館。多少の耐久はあるだろう。それでも、落下物への衝撃には耐えれない。二人が廊下へ落下。連鎖的に床に穴ができ二人は1階へ更に落下。音発生でゾンビ登場。無事捕食される。


 完ッ! こうなるのは明白。


 投擲作戦は却下された。角材を置く手を存在した。だが、反対側まで届く長さの木材は周りにはなかった。残る手は一つ。


「準備はいい?」


「......早くしてくれ」


「短い人生だったわ」


 助走の開始から踏み切りに向けてスピードを上げる。減速するとパワーが足りず三人は落下死する。アクイローネは一切足を止める素振りを見せない。


 徐々に上がるスピード。跳ぶのは重要だ。踏み切りポイントの足場ギリギリまで堪える。減速せず思いっきり力強く踏み切る。


 上方向へ遠く跳ぶ。上方向へ跳んだアクイローネは放物線を描きながら空中を移動する。アクイローネは前、着地地点を見る。二人は抱き抱えられている影響か、目線が下へ。


 激しく動くアクイローネに振り回される二人はグロッキー状態に陥る。



 足は廊下へ着地する。走り幅跳びで行った各行動。増えに増えた推力により、直立不動にはならない。


 バランスを崩す。廊下に寝転がる三人。二人を自分の脇から解放。


 リズムとブッシュは即座に動くことは出来ず。


 二人が主役の洋館クエスト。本来なら二人が対処し、アクイローネは傍観かサポートする方が二人は成長する。


 でも、通常クエストはもうない。自分の知らない未知のサブクエストに変貌した。何が起きるか分からない。なので二人が起き上がるまでアクイローネが行動する。


 身軽になったアクイローネは周囲に危険がないか確認する。音を極力出さず走り幅跳びを行ったが音に敏感なゾンビ。1階フロアにいるなら当然2階にも徘徊しているゾンビ。


 警戒しつつ迎え撃つ準備万端。時間にして1分。長い1分だった。


「どうやらゾンビは来ないわね」


 警戒を解く。


 二人も立ち上がり、準備万端。


「ヒィ!!?」


 ブッシュの悲鳴。このか細い悲鳴が出ているということは......

 リズムとアクイローネはブッシュの目線の先。


「ほ、本当にいた」


「とりあえずブッシュの妄想ではないか」


 廊下に立っていたのは白いワンピースを着た小さな女の子。

 左腕に抱えているのはビスクドール人形だった。


「普通の女の子じゃん」


「ブッシュが怯えるから顔面に血が付着していると思ったよ」


「だ、だって......」


 若干、少女の周りの色素が薄い気もする。それ以外は特に問題がない()()の女の子。


「ねぇ、お姉ちゃんたち」


 少女が近づいてくる。彼女に敵意は感じられない。


「リアスと遊んでくれる?」


「「「えっ!!?」」」











 ◇◆◇◆◇


 ゾンビ軍団を問答無用で撃退しつつ、奥へ進んでから随分が経った。


 安全地帯ならぬ安全歩道、新時代の万有引力(ミルキーウェイ)の上から攻撃していたからそこまで苦戦はしなかった。一掃しても音もなく出現するのがゾンビだ。 新時代の万有引力(ミルキーウェイ)を起動しつつトンネルの奥へ足を進めた。


「扉か......」


 私の前に聳える巨大な扉。トンネルの全長と同じサイズの両開きの扉。ずっと周りの景色が変わらなかった。ここに来て扉の登場。一本道をひたすら進んできた。途中で枝分かれする道はなかった。ここがゴールに違いない。


「なんか......悪趣味な造形ね」


 扉に彫られているのは無数の悪魔。彫刻は悪魔の凶暴性を表しているようだった。数えたら72体あった。


 ここまで雑魚ゾンビ軍団や特殊なゾンビを戦闘を繰り返してきた。それでも、最後までゾンビを無限に湧けさせる存在は出現しなかった。


 この奥にその何某がいるのかもしれない。

 ドアノブに手をかける。しかし私の手は震えていた。


「アハハ......久しぶりの感覚」


 このゲームを始めてから様々な経験をしてきた。手の震えは、私の身体が本能的に感じ取った合図かもしれない。この先は危険、と言っているよう。


「さっさと攻略して、四人で遊ぶんだから!!!」


 私の目的は変わらない。この薄気味悪いトンネルを脱出し、待っている三人の元へ帰ること。

 どんな敵だろうと私に牙を向ける者を生かしておくわけにはいかない。


 覚悟を決め、扉を開けた。



 室内は暗かった。一歩ずつ慎重に進む。

 次の瞬間、火が灯る。青色だった。誰かが侵入したら壁の窪みに火が付く仕組みだったのだろう。

 火は勢いよく噴き、室内を明るくする。一周し終えた蒼炎は消えず残る。周囲を確認した。

 円形のフィールド。床には六芒星の紋様。円形を取り囲む無数の柱。奥には巨大な玉座が置かせていた。


「白骨死体?」


 玉座に座っていたのはローブを纏った巨大な骸骨だった。傍らには床に刺さっている杖があった。

 豪華な装飾がローブにほどこされている。かなり高明な存在だと理解できる。


 じっくり確認するためにガイコツの元へ。


「えっ!!?」


 床が光だす。魔法陣だった。見たことがない幾何学模様の魔法陣。

 魔法陣の出現と同時に骸骨の目が光る。生気が戻ったかのように......


 星刻の錫杖を構える。


「ほぉ〜 『星刻の錫杖(アストロ・ワンド)』か」


 渋くも威厳のある声が室内を支配する。一発で星刻の錫杖に認知した。こいつも星霊の関係者なのか?

 謎のガイコツは首だけを動かし下に目線を向ける。私をじっくり見ている。


「アイツは......元気か」


「『アイツ』とは誰のことですか?」


「......どうやら別の所有者だったみたいだな」


 別の所有者。クラス曰く星刻の錫杖は代々人間の女性が務める。いくつか条件はあるけど、星霜の女王に選ばれる一番の決め手は神からの啓示。選ばれた女性は天寿を全うするまで星霊を導く存在として生きていく。クラスの場合は邪神との大戦争で心が壊れ、逃げ出すために自身の魔法で認知を書き換えた。


 その影響でヴァルゴたち星霊には星霜の女王が初めから存在しないと認知され、星刻の錫杖は星霊に力を与える守り神的な位置付けさせていた。


 そして逃走したクラスはリリス様に見つかり永遠の命を与えられ、死ぬことも許させない身体に改造させた。色々あったけど、今は私の専属メイドとして生を全うしている。


 この謎のガイコツ。私を別の所有者と表現した。つまり......


「私は前任者から杖を託させた、ユミナです」


「『ユミナ』か。良い名だな」


 あ、どうもありがとうございます。安直プレイヤーネームを褒められむず痒い気持ちになる。


「だが......」


 床が振動する。発信の中心地はガイコツだった。起きあがろうとしてできた地震。

 立ち上がったことで三十メートルはある身長が立ちはだかる。


「ワタシはキサマの女王トして認メない」


「どうやったら認めてくれるの?」


 杖が変色する。燻んだ金色の全体に、持ち手に紅蓮の線が浮かび上がる。

 突き刺さる杖を抜き、天へ上げる。杖の先端が光り輝く。咄嗟に腕で目を防御。光に当てられ潰れないようにするため。


 光は止む。腕を下ろすと、周りには見知った者たちが私を取り囲む。


「ゾンビはお腹いっぱいなんだけど〜」


「......どウかナ」


 ゾンビは全部で72体。先ほどまで蹂躙してきたゾンビたちと一線を画していた。明らかに威圧感が漲っている。装備してる武器・防具も同様。危ない雰囲気を醸し出してる。


「ワタシたちを倒セなイ者に、杖をツカワセナイ」


殺し合いす(はじめ)る前に聞いてもいいですか。話し合いで解決はできません?」


「ナニッ!!? キサマは甘イ所有者ダな」


「......そうですか。分かりました」


 私の前にクエストウィンドウが表示させる。


 《繧ュ繝ウ繧ー 繧ス繝ュ繝・ドゥームズデイからの試練》





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ユニーククエスト

 《繧ュ繝ウ繧ー 繧ス繝ュ繝・ドゥームズデイからの試練》


 ・挑戦は一度のみ。

 ・勝利条件:繧ュ繝ウ繧ー 繧ス繝ュ繝・ドゥームズデイ含む73体の完全討伐。

 ・敗北した場合、ユニーク武器:星刻の錫杖(アストロ・ワンド)は消失する。

 ・クエストクリア時、プレイヤーは地上へ帰還。

 ・特殊フィールド:バビロンの穴は消滅します。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

次話土曜日更新します!

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