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リアルフレンド、ゲームの世界へ。その9

サブタイのサブタイ

怪異は突然に......


次話更新、明日7時くらいです!

よろしくお願いします!

 ◆


 戦闘民族ユミナが地下トンネルでゾンビ軍団に一騎当千しつつ奥へ進軍しているこの頃。








 アクイローネたちは洋館2階を探索していた。1階の大食堂を出て、即2階へは行かなかった。どうせなら隅々まで探索しようと考えたブッシュとリズム。二人の意見に賛成したアクイローネ。人形候補にはない部屋も入った結果、2階へ上がるのに時間がかかってしまった。


「この椅子、アイテムとして回収できるよ」


 洋館内のアンティーク家具はプレイヤーが回収できる仕様となっている。自身の家用に集める者、家具を売って資金にする者、家具職人のNPCやプレイヤーに解体を依頼して素材として活用する者等色々。


 忘れてはいけない。プレイヤーのストレージはある意味無限にアイテムを収納できる。でも、アイテムを多く入れるとアバターが重くなる仕様。ステータスでアバターを軽くできる。しかしながら軽くはなる、と言っても違和感ある。その多少の誤差が戦闘では命取り。なので、不必要なアイテムは倉庫で保管しているプレイヤーが多い。


 ブッシュとリズムはゾンビを倒しまくってレベルも上がっている。それでも、洋館に設置されている各種アンティーク家具を全て回収するのは不可能。なので、二人は気に入ったアイテムだけを数個ストレージにしまうことにした。



 アクイローネからユミナは絶対大丈夫と言われた。『なんかわからないけど分かった』、と二人は無理やり納得し、洋館クエストを満喫する。一戦闘にゾンビモンスターも1匹~3匹しか出現せず、特殊行動しない雑魚モンスター。敵の強さも比較的弱いので戦闘訓練に持ってこい。なのに経験値は美味しい!


「二人とも、戦闘に慣れてきたね」


「初めはゾンビ怖かったけど...」


「何回か戦ったら怖さゼロになった~」


「ま、本当に初心者用クエストだからね」


 廊下を歩く三人。ブッシュが2階物置部屋のドアノブに手をかける。


「ユミナちゃんはやったの?」


 三人で物置部屋を物色し出す。ブッシュからの質問にアクイローネは答える。


「いや、やってないよ」


 納得顔するリズム。


「だろうぜ。初見じゃないなら玄関でゾンビを勢いで分裂させないし」


 三人は思い出す。開幕ゾンビアタックに勝利した破廉恥メイドちゃんを。スキル起動特有のエフェクトが見えなかった。初心者専用のモンスターと高レベルプレイヤー。レベル差歴然。だが首と胴体が千切れる威力を出せるのか。このことから、ユミナが装備していたメイド服の性能だけでゾンビを蹴散らした。



 ユミナの装備に興味津々のアクイローネ。


「あのメイド服、見た目の割に高性能だった。欲しくなったわ」


 反対に興味が薄いブッシュ。


「わたしは要らないよ。スカート短いし。で、」


「『で、』とは?」


「洋館クエストをユミナちゃんがやってないなら、何やったのかなーって」


 二人が疑問に思うのも分かる。必須ではないが、楽に経験値・アイテム回収・戦闘訓練が一度にできる美味しいクエスト。初心者クエストを受注していないなら、脳筋な友人は何をしていたのか。


「あぁー 実はこのクエよりもうまいクエがあるんだ。残基3増えるアクセサリーが」


 残基という言葉を聞き慣れない二人。しばし考え、リズムが口を開く。


「えーっと、その場で死亡しても3回復活できる意味」


「YES!」


「「そっち行こうよ!!!」」


 二人が大声を出すのももっともだ。

 プレイヤーが死亡すれば、リスポーン地点に戻る。近場ならなんとか戻れるが遠くにリスポーンした時には、色々燃え尽きる。萎えてログアウトするかもしれない。回数制限のデメリットがあるにしろ、復活アイテムは絶対に確保したい。


「行きたくても行けないんだ」


「何故?」


「クエストを受注してくれる老婆がいなくなったんだよ」


「『老婆』?」


「スーリの酒場で占いを営んでいる占い師NPC、オフィ婆」


「別の街にいるとか?」


「サブクエストガチ勢が探しまくったけど、発見できずじまい」


「そんな~」


「欲しかった~」


 二人は落胆していた。


「NPCはこの世界で生きてるから絶対にいるよ」


「......いなかったら」


「死んだ可能性が高いね」


 二人は驚く。


「復活しないの?」


 アクイローネはキッパリ言う。


「NPCは死んだら、そこでおしまい」


 二人はそれ以上、その件の老婆NPCについて聞かなかった。






 2階の物置から出て、三人は向かいの扉を開く。人形の候補、図書室だ。本棚が多く書物がぎっしりと収納されている。随分使われていないので埃が舞っていた。

 アクイローネは探さず、読書を開始。ブッシュとリズムは左右に分かれ真ん中に辿り着くように人形探索を始めた。読書をしたい好奇心を捨て去り、二人は本棚を左から右へ。斜めに移動してまた左から右へ。計四段ある本棚を上から下へ目線を移動させて目的物を探していた。



「本と本の間に置かれてるから注意深く見てね」


 アクイローネからのアドバイス。早速実行したブッシュ。

 一つ目の本棚を左から右へ向けると—————————




「きゃあ!!?」


 ブッシュのか細い悲鳴に反応するアクイローネ。同時にブッシュの声に反応したゾンビを対処し始めるリズム。


「どったの?」


「い、今......」


 指を指した方角。アクイローネも目線を変える。カーテンがかかっているだけだった。

 反対側の通路まで移動し、周囲を確認したが自分たち以外誰もいない。


「何かいた」


「ち、小さい女の子が......」


 ゾンビを倒したリズムも集合してブッシュが目にした少女の話をする。

 ブッシュが目撃したのは、白い服を着た小学生くらいの女の子。人形を抱き抱えて通路をゆったり歩いていた、と。洋館には自分たち三人。あとどっかへ行った破廉恥(へんたい)脳筋(アホ)メイドを合わせて四人。他プレイヤーの可能性を考慮したが、ブッシュの話では頭上にプレイヤーネームは表示されていなかった。


「もしかして、その女の子が持っていた人形が......」


希望が見えた。しかし一人だけ渋い顔を浮かべる。アクイローネだ。


「可能性はあるね。でも......」


「『でも』?」











ブッシュとリズムの顔から血の気が引き始める。心臓の鼓動が止まない。

アクイローネの口から聞かされた内容は余りに残酷なものだった。


()()は出てこないよ。このクエスト......」


オフィ婆はいないよ〜

真実はユミナちゃんだけが知ってる〜〜

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