リアルフレンド、ゲームの世界へ。その2
サブタイのサブタイ
マブダチ、イメチェンセンス皆無
頬を抑えながら、私は歩く。
「イ、テテェェ..................。クソォ、あのド変態エロ始祖吸血鬼め......」
予想はしていた。アイリスとジェミニたちはお楽しみ中だった。その後は当然と言えば当然の結果。
自分の楽しみを邪魔した者には裁きの鉄拳をお見舞いする。
「何もバフもりもりのパンチを繰り出すことないじゃん」
HPが残り1割まで減少した。アイリスは「これで勘弁してあげるわ」と吐き捨ていた。かなりキレ気味だった。
「いつか、泣かせる」
このお礼は必ず晴らす。私は心に決めるのだった。
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「到着〜!!」
《スーリ》に到着した私は直ぐに外部と連結しているチャットにメッセージを打ち込む。
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《目的地は始まりの街で》
ユミナ:《スーリ》、着いたよ〜
ブッシュ:二人で教会にいるね
リズム:待ってるぞ〜〜
アクイローネ:少し遅れる
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普段使ってるグループチャットだとリアルバレが発生してしまう。なら、別グループを作れば良いのかと結論がでてこうして適当グループ名、《目的地は始まりの街で》が誕生した。
「アクイローネは遅れるのか」
私みたいにファストトラベルアイテムを持っていないのかもしれない。てか、オニキス・オンラインで遊んで数ヶ月経つけど、ファストトラベルをしているプレイヤーに遭遇していない。
転送ドアノブは、アイリスが気まぐれで製作したアイテム。技術の出所的に娘の旦那さんだろう。魔法によるファストトラベルもあるとケンバーは言っていた。でも、賢者のジョブを取得しないと教えないと言われた。
もしかして、プレイヤーがファストトラベルを利用するためには相当な手間がかかるのかもしれない。
歩いていると懐かしい公園にたどり着いた。
「石像はないか」
以前、ヴァルゴが石化され石像として置かれていた場所には草が生い茂っているだけだった。新しく石像が設置され、別プレイヤーも石化NPCを救出するクエストが発生すると予想していた。
思えば、石化を解いた時から色々なことがあったな。様々な場所に冒険したり、何度も死にかけたり、危ない橋を渡ったり、何度も死にかけたり......
体が震えていた。落ち着け私のアバター。大丈夫だ。いくら圧迫死しても生き返るのが冒険者だ。毎日、従者に襲われるのも慣れっこになった。いや、慣れちゃいけないか......
「妙に視線を感じるな」
教会を目指す私。露店がひしめく場所を通らないといけないので人混みを掻き分けながら移動してる。
「もしかして、この装備が原因かな?」
私の装備品は全てタウロスが製作している。素材は全てリリクロスでゲットしたアイテムばかり。品質はもちろん最高レベルで終盤の街でもお目にかかれない代物ばかり。
始めたてのプレイヤーが多い、スーリの街。男女別や職業的特徴はあっても、プレイヤーの装備品はどれも似たような物。そんな群衆の中で最上級の高級品を身に纏っているプレイヤー。非常に目立つのも当たり前だった。
さっさと合流して外に出るか。
あぁ!!? アクイローネが遅れるんだった。それまでジロジロ見られるのか......
おのれぇ、アクイローネ!!!!!!!!
「あの二人かな?」
広場に噴水がある場所にたどり着いた。他施設やNPCの家など高さが低い。一番高いのは教会。待ち合わせ場所として利用するプレイヤーが多い。
プレイヤーの上を確認すると目的の人物たちがいた。髪色や多少イジってるキャラメイクだけど、雰囲気で分かる。
一人はレモン色のポニーテールで女僧侶。もう一人は灰色のショートヘアで女盗賊。僧侶がブッシュで、盗賊の方はリズムか。
自分の名前でもある奏と自分の調子で物事を進める、でプレイヤーネームを決めたのかもしれない。で、みはるちゃんは楠とブッシュ・ド・ノエルから連想したな。
「二人とも、お待たせ!!」
ブッシュとリズムは警戒していた。武器を構えようとする。
アレェェエエエ!!?
はぁ〜〜〜。仕方がない......
指を頭上に指した後、チャットへ。
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《目的地は始まりの街で》
ユミナ:オイッ
ユミナ:警戒を解け!!
ユミナ:可憐な私がナンパ師に見えたか!?!?!?
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ブッシュとリズムはチャットを確認後、私の頭のプレイヤーネームを凝視する。
「嘘だぁあああ!!!!!!」
「本当に......」
「二人の無様な土下座動画撮ったけど、見る」
「「やめてください!!!」」
「ま、許そう。改めてユミナです。よろしくね」
「ブッシュです......」
「リズムだ......」
「どうしたの、二人とも?」
「いや、ユミナ......ちゃんが綺麗だなって」
「だな、どっかなセレブか女王の見た目だし」
「ふふん!! 羨ましいでしょう! 私専属の鍛治師が作ってくれたんだ!!!」
「もしかして、相当やりこんでる?」
「そうだね。どうして?」
「なら、さっき観せた動画の女騎士様のこと......」
『あの女騎士は、ユミナの従者だよ』
後ろから別の女性の声。アクイローネだ。
「重役出勤ですか、アクイローネさん」
振り向くとそこには————————。
「プーッ!!!」
「ぎゃははは!!!!!!」
「あーっははははは!!!!!!!!!!」
ブッシュは体を震えさせながら、口元を手で抑えている。リズムは堪えれなくなり腹を抱えている。私は遠慮なく大爆笑した。
だ、だって......w
「どうしたのかしら。みなさん」
深窓のご令嬢風口調でアクイローネが訪ねる。しかし私たちは笑うことに全力。話は聞いていない。
私たち三人の前にいたアクイローネは、真っ赤な巨大アフロヘアーをして現れた。
そりゃあ、寝室で人が愛の逢瀬している最中に他人が入ってきたんだから。キレるよ、普通に......




