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タウロスのやる気、爆上げ大作戦。その6

「ねぇ、タウロス。それ、何?」


 小さな箱を抱き抱えていた。

 タウロスの行動には理由があった。工房内を捜索していたタウロスは床に違和感を覚えたらしい。

 石畳の下には僅かに空間があり、手掛かりがあると確信したタウロスは石畳を破壊した。


「おぉ!」


 箱の中身は、様々な色の球体。いや、赤・緑・黒等の大粒だった。数にばらつきはあるが、全部で三十個ほど入っていた。

 そのうちの一つを掴み、確認した。


「『星鉱石』? これって、花火玉に必須のアイテムだよ!!」


 テキストを読み終えた私は驚いた。キクジ印の花火玉には特殊な鉱物が使われている。前に生産職のフレンドから聞いたことがある。キクジしか存在を知らない鉱物だから希少価値が高いとも言っていた。実物を見るのは、初めて。でも、間違いない。この『星鉱石』は花火玉の核だ。


「キクジさんが誘拐された理由も説明がつきますね」


 花火玉の核とも言える『星鉱石』だけを盗むだけならキクジを誘拐する必要はない。

 でも、犯人達は誘拐した。理由は一つ。


「場所を吐かせるためか。胸糞悪いぜ」


 タウロスのお陰で、誘拐された訳は判明した。

 でも、肝心の居場所を占める手掛かりがない。完全に手詰まり状態となっていた。


「ユミナ様。悲観することはありません」


 キャンサーは上を見る。屋根から足音。


「どうやら、知ってそうな奴がいるみたいだな」





 怒り面を出しつつ、小屋を後にするタウロス。

 私たちが外に出たと同時に、屋根からジャンプし着地する何某さん。


 茶色の髪の毛は手入れがされていないのかボサボサが目立つ。男は軽装鎧の上にローブを羽織っている。口元はスカーフで隠れていた。


 プレイヤーではなかった。単なる盗賊NPCだった。

『スラカイト』大陸では一定数存在する盗賊NPC。略奪されたアイテムを回収するクエストで登場すのがこの盗賊NPC。完全に敵対コースなので、会話で解決はできない。あまり強くないと聞くので倒すのは容易だ。


 ただ今回は話が違う。会話が成立しない相手。キクジの居場所を絶対に知っている。でも、倒したら手掛かりがなくなる。さて、どうするか......



「待機を命じられた時には最悪な気分だったが、どうやら天は俺様に向いているみたいだな!」


 半笑いしながら私たちを凝視する男。


「オイ、そこの牛女。持ってる箱を渡せば命だけは助けてやるぜ!!」


 うわぁ〜 完全に小者臭全開のセリフ。真面目なシーンなのに笑いそうになる。


「タウロス、どうする?」


 鼻でわらうタウロス。


「うんなもん、決まってるだろ」


 炎神の星槌(ヒノカグツチ)を装備する。


「叩きのめす。お嬢、持っててくれ」


 タウロスから『星鉱石』が入っている木箱を渡された。


「待ってください。タウロス」


 後ろからタウロスの肩を掴んだのはキャンサーだった。


「相手を無力化するなら、私の方が確実です」


 そう言って、キャンサーは『L.E.O.N.A.R.D.O』に向かって命令を出し始める。


 ()()()()()()から出現した小型ドローン。

 ドローンと戦闘機が融合した見た目。灰色のフォルムの戦闘機の両翼にはミサイルではなくガトリング砲に似た黒筒が搭載されていた。



「テメらぁ!!!!」


 痺れが切れた盗賊がナイフを抜く。

 お怒りのご様子。さては沸点低いな、コイツ...



「ナイフの先には神経毒を仕込んである。触れれば30分は動けなくなる」


 あ、解説どうも。


 切先からドロドロしたような液体がこぼれ落ちる。

 あのまま、舌にナイフを置いて舐める仕草してくれたら良かったのに......


「ブツは奪う。そのあとは......」


 私たちを舐め回すように見つめる盗賊。

 肌が粟立ちそうだった。



「......なぁ、やっぱり殴りに変更しね。1秒でも見たくねぇ」


 タウロスは今にも爆発してしまいそうなほど怒ってる。おそらく自分と愛する主をキモい視線で見られてるからだろう。


「不快ですね。下衆顔は不衛生で精神衛生上よくありません。主をイヤらしい眼で視たので威力を5倍に設定」


 キャンサーさん、笑顔なのに笑っていないよ。後、『L.E.O.N.A.R.D.O』に何を命令した!!?



「三人もいるんだ。ゆっくり楽しませてもらうぜ」


 あれ? もう勝ちを確信してるセリフが聞こえた気がする。でも、残念! 勝敗は戦う前に決まってるのよ!!


「あの〜 脳内がお楽しみ状態の所、申し訳ありませんが......」


 私が指差す方角へ視線を移す盗賊。

 ドローンと眼が合う盗賊。即座に攻撃を仕掛けようとするが————————



「ああああぁああああああっ!!!!!!!!!!」



 ドローンのバトンが稼働し始めた。青い稲妻が迸る。

 放たれた稲妻は標的となる盗賊を逃さなかった。

 電気ショック攻撃により、盗賊は気絶し倒れ込んだ。

 激痛と麻痺で暫く目を覚さないだろう。


「死んでいないよね」


「大丈夫です。出動したドローンに搭載した機能は全て非殺傷性。他にも彼の神経毒よりも即効性の毒や発煙弾、催涙弾も装備してあります」


 スタングレネードや放水砲、麻酔針も完備しているらしい。

 キャンサーがドローンの性能を力説している傍ら、私は心の中で頭を悩ませていた。


 自分でも薄々気づいているけど。私だけ別ゲーしているよね!?!?


「ユミナ様。この者から情報を吸いあげてきます」


 キャンサーは拘束済みの盗賊の足を掴み。プレセベの内部へ行ってしまった。


 キャンサーに声をかける勇気がなかった。


「タウロス、あの盗賊さん......大丈夫だよね」


「......多分」


赤、青、緑等様々な色を持つ星鉱石。

アイテム名は【星鉱石:赤】と表示される。

【星鉱石:黒】が花火を飛ばす火薬玉の役割を担ってる。


次話、明日6時以降投稿します

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