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踏み荒らされた日常を取り戻す

 私は空中で座った。宙に見えない足場を生成できるスキル、【大地理(ガイア)】。


 私は地面を見下ろした。


 やはり、生きている。

 どういうカラクリなのか、わからない。

 私も『オニキス・オンライン』の世界を全て知っているわけではない。


 私だって、自分の『星霜の女王』の能力を完全に掌握していない。

 同じように、私の知らないスキルや職業の能力もある。


 能力の解明は後回し。私が確認しないといけない事案がある。


「どうして、本気。出さないんですか?」


 私の言葉に、即答できないバシャ。

 目を見開いている。


「貴方は私を倒す。そう言っていましたよね。私を地面に這いつくばらせる、とも言っていました」


 私は続ける。


「だから、絶対に私に勝つ戦法を取るだろう。そう考えていました。しかし、私への攻撃は全て通常攻撃」


 大量の魔法展開からの連発発射。多くのゾンビ召喚からの突撃。少し冥い瘴気を放つ状態異常攻撃。

 バシャの攻撃はまぁ、こんな所。


 NPCを強制奴隷にする能力は使わないのか。

 もしくは、まだNPCにしか利用できないのか。

 はたまた、膨大な時間を有するのか。


 疑問は尽きるが、私に対して通常攻撃しかしてこないのは明らかだ。

 傲慢と表現してもいい。


 とにかく、あんなに啖呵を切っていたのにも関わらず、何かしらの特殊攻撃もしない。

 あんな言葉を言いたくなるよ......


 足を組む。膝に肘を置く。

「私は、貴方のゲームスタイルを笑うつもりもありません。誰がどのようなに行動してもゲームなのだから。好きにやってもいい。これに尽きると思います。自分の思い通りに動き、自分が楽しいければいい」


 私の言葉にバシャは何も言わない。策を巡らせているか、奇襲準備をしているのだろう。


「私も欲望まみれですから。私は私の従者と楽しく遊んでいる。時には衝突もします。それでも、私はみんなと入れて楽しいんです! 貴方が私の従者を奴隷にするのもなんとなくわかります。貴方のゲームスタイルは自分が常に優位に立つことだと考えています。同じ星霊を連れている私よりも上へ。上に行くのは私を倒して、私が連れている星霊全てを奪う。私も自分の目的のために貴方との対決を望みました。この対決はお互いのゲームライフを充実させるための決闘。相手に納得させるために私は貴方へ、私の持つ全てをぶつけています」


 バシャは私を見上げているだけだった。


「なのに、貴方は何もしてこない。手の内を晒したくない。でも、私を倒す。だから、質問しました。『どうして、本気。出さないんですか?』と。このままだと、確実に貴方の負けになりますよ?」


 バシャは黙り込む。相手が負けを認めないと勝敗は決まらない。


『お前が()()()()()()をしているのが原因だぞ』


 悩む私に声をかける者が現れた。私を覆う大きな影で正体は判明している。


「ドラン! てか、どういう意味よ!?」


 ドランを見上げた。


「ユミナの()()()()のせいで集中力が欠けているんだろう。でなければ、あのような禍々しい杖を所持しながら、ここまで劣勢になるとは考えにくい」


「さっきから言いたい放題言ってくれるわね!! 誰の顔がキモいですって。私の顔は最高にプリティーで、美しくも可憐で、眩く完璧で、アイドル顔負けで、国宝級なのよ」


 ため息を吐くドラン。


「はぁ〜〜 お前が普段は死んでも言わないセリフを吐くから我も若干、毛が逆立ってしまったぜ」


「毛......ないだろうが。てか、私の指令は?」


「見ていなかったのか?」


「ゾンビと戦っていたから......」


「勿論、倒したぞ。お前の命令通り、全力でな」


「なら、喜びなさいよ」


「五秒しか、敵が保たなかった」


「それって、悪い事なの。早く敵を倒した方が良いと思うけど?」


「短いんだ。我が望むのは血が滾る最高のケンカだ。己の持つ『力』を全てぶつける死闘。腐ってもドラゴンが登場してきたから、ワクワクしていたんだかな......」


「じゃあ、この対決が終わったら、やる?」


「やはり、お前さん。おかしいぞ、今日は特に。怪しげなクスリやってないだろうな?」


「おーーいッ!! 私は健康体だよ。今の私とドランの差が知りたい」


「ユミナ......『覇王』にでもなるつもりか」


「う〜〜ん。必要なら。私が護る対象には......ドランも含まれている。ドラゴン一匹護れない様じゃ、女王なんて恥ずかしくて名乗れないよ!」


 不敵に笑うドラン。


「思えば、お前と初めて会った時。戦いが中断したからな。考えておく、小さき者よ」


「吠えずらかかせてあげるわ。でも、そっか! ドランの言う通りよね」


「何がだ?」


「私の顔よ。流石に失礼だと仮面を付けていたの。でも、それがバシャのやる気を削いでいるのなら」


 私は自分の顔に手を伸ばす。


「剥がすしかない!」




 ビリビリッとユミナの顔が剥がれていく。


 正体を見破られた怪盗のように。素顔を晒した。


 笑顔フェイスの肌色が変色した。ユミナが被っていたのは銀色の液体だった。


 液体はユミナの腕を這う。


 最終地点は、ユミナの右手首。


 ユミナの手首には巨大な宝石が嵌め込まれたブレスレット。


 液体はブレスレットの中へ。


 ユミナは立ち上がる。


 ユミナはドランに五冊の本を投げた。


 嫌々掴んだドラン。五冊の本を口へ。


 咀嚼はない。丸呑みをした。


 ドランが発光し出す。


 珍しい光景だった。


 ちゃんとしたドラゴンの登場。背中は機械の翼が。


 改造なのか、移植なのか、興味が尽きることはなかった。


 ドランの口から吐く出された光球はユミナを包む。

 魔法陣が四方へ展開。


 魔法陣を通過したユミナ。

 一瞬で黒い衣装に着替えた。


 夜空に点在する星々の輝き。


 桃色の髪はなくなり、鮮やかな青紫色の髪へ。


 全身は黒のパイロットスーツ。背には、ドランと同じ巨大な翼型の装甲が装着されている。


 ユミナは空中を降りた。


 階段の様に。


 一段一段、降りるユミナ。


 ユミナのブレスレットから銀色の液体が放出された。


 液体はユミナに交わる。


 纏った液体は形を変え、ピンクと水色が混じり合った色合いとなる。


 四肢に装甲、翼は大型化された。


 背部から妖しげな光が放たれる。


 ヒールの音が響く。


 弧を描くのように下へ降りるユミナ。


 スクリーンで見ている者達はユミナの姿に見惚れていた。


 女神様が下界に降り立つ。そう思わせる様相だった。


 神秘的なユミナ。


「私が仮面を被ったのは、誰にも見せないため」


 しかし、顔は穏やかではない。


「お前が私の従者を可愛がると言った時から、抑えることができなかった」



 憤怒の表情。睨む瞳。強烈なまでの迫力。冷静さを欠けた殺意。



「誰の従者を可愛がるって。みんなを可愛がって良いのは、この世で私だけよ。身の程を知りなさいッ」




 ユミナは地面に着いた。


「......私は護るよ。私の大切な者たちを護り切る——相手が誰でも。絶対に守り抜くッ!」


 ユミナは決意の瞳で言った。


「なんだよ、それ......ッ! こんな、はずじゃあ」


 バシャの『征服者の錫杖』が光る。


 背後で無数の魔法陣が出現する。

 飛び出したのは、武装したゾンビの大群。巨大な種族の異なるゾンビたち。


 全てが()()()()()()だった。


 一人の女性へ。捕食しようと動くゾンビ集団。


 醜悪な笑みを浮かべるバシャ。


「くくくっ、行け、お前らァ!! その女を喰らえェェェエエエエエ!!!!!!!!!」



 先頭のゾンビが向かってくる。


 ユミナを早く捕食したい衝動。走りを止める気配はない。


『手伝ってやろうか』


 上からドランの声。


「いらないわ! 宣言して、速攻で手助けを呼ぶのはカッコ悪いし」


 ユミナは武器を変更した。


「条件は揃った......」


 ユミナの両手に剣が出現した。


 刀身の異なる藍色の二振り。


 右手には、先端が3つの刃が三角錐のような形で重なっており、刃1つ1つは藍染めを黒に近づくほどに染められた濃い暗い青色で統一されている。


 左手には刀のような長い刃を持ち、鉄色がかかった紺色で、わずかに緑みを帯びた暗い青色をした短刀剣。


濃藍の矛(トライブ)鉄藍の刀(アイルタ)............」


 背部のスラスターが噴射。


 背の翼を放射状に広角展開。


 強く握られた双刃剣。


「最後よ。暴れましょう!!!」」


 青い炎が噴き上がり、全力で飛び出す。

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