恋人との約束
観客席に座る多くのプレイヤーは二箇所の区画に目をやる。
一つは掲示板や実際に目撃したプレイヤーの情報を総合した結果、ユミナの従者たちだと判明した。
プレイヤーがどんなにキャラクリや外付けのアイテムで魅力を上げたとしても勝てない美貌を持つユミナの従者たち。美しさのあまりの神々しい光が放たれ、まともに直視できない現象に陥るプレイヤーが後を立たない。
自分たちが出会ったこともない種族NPCが大勢いた。NPCなら所在を教えてくるだろうと何人ものトッププレイヤーが会話を試みたが、あえなく撃沈を果たす。これは男性プレイヤーに対して。
心も女性と判断した女性プレイヤーには快く会話をした。女性プレイヤーは情報よりもお話ししたい欲求が最優先事項だった。それだけ女性プレイヤーたちの心にざわつかせるユミナの従者たち。
一定の業務を終える。
注目の的になっているユミナの従者たちは、視線すら移動していない。
有象無象の視線よりも今から戦う主の活躍を目に焼き付ける方が自分たちに利があるからだ。
「やっと戻ってきましたか、レオ」
ヴァルゴがため息。気にせずタウロスの隣に座るレオ。
「まだ、始まってねぇなら良いだろ。タウロス、酒あるか」
渋々、レオに酒を渡すタウロス。横目でレオを見るヴァルゴ。
「まったく。お嬢様の勇姿を一秒も見逃す訳にいかないんです。わかっているのですか」
「へいへい」
レオは諦めている。事、ユミナに関してはヴァルゴは我を忘れるほどに盲目になる。忘れるあまり愛するユミナの下から離れ、自分の命を敵に差し出す思考に発展する始末。今回のヴァルゴの行動で皆、ユミナと同じケアが必要だと判断したのは事実。
「にしても、オレら全員入れる場所があるとはな」
レオが周りを見渡す。万単位の集約がある闘技場。席は満員。
アリエスもうなづく。
「そうですね、ビックリしました。外にも人だかりがありましたから」
カプリコーンは先の場所を見ていた。
「あちらもですが......」
カプリコーンたちがいる場所の反対側に見覚えのある一団が座っていた。
態々、ボロ布を上から被せられている星霊たち。主が自分の物だと意味合いが取れる行動。
「やはり、と言いますか。星霊以外もいるのですね」
星霊以外にもバシャの奴隷が座っていた。恐らく、ブリジット王と同じように”支配”されている。
”支配”されているのは女ばかり。星霊たちが目撃したブリジット王だけは例外なのだろう。
単なる検証だと考える。一般NPCには効果があった。本来、”支配”に抗う力を持つ星霊も解呪直後だった事で簡単に奪うことができた。なら、一国の王はどうなのだろうと行動を起こした結果だと推測できる。
「ま、大丈夫だろ」
短絡的な物言いを言うレオ。
「おい、レオ」
隣に座っているタウロスが嘆息する。
「心配ねぇ〜だろ。オレたちのご主人様が負けるとは思えないしな」
アクエリアスのファンサービスに歓喜する彼女のファンたち。ニコニコと自分のファンに手を振っているアクエリアスが言う。
「お姉ちゃん。相手は邪神が持っていた『征服者の錫杖』を所持しているのですよ。簡単には行きません」
「お前こそ、ユミナを信じてないのか」
そっぽを向くアクエリアス。頬がほんのり、赤く染まっていた。
「そのようなことは考えておりません。少しだけ......ほんの少しだけ。ユミナの事、認めていますから」
アクエリアスの発言を聞き、タウロスとレオはハイタッチをする。
事情を知っている周りはアクエリアスへニヤニヤ顔を向けていた。
「アクエリアスが思う気持ちは分かります。実際に対峙した私たちはよく知っています」
「ヴァルゴの懸念もわかる。だから、先に試した」
「......で、どうでした」
「杖はオレたち同様、弱体しているが本物。でも、使用者がカスだったから思うように使いこなしていない。本人には自覚ない様子だったよ」
「そうですか......。お嬢様が先に杖を使えなくする行動を取ればいけますね」
「やはり、細切れにするしか」
アリエスの言葉に全員が深刻な表情を浮かべる。頭を抱え思い詰める者まで現れる。
攻撃されて嬉しいフェーネもあれだけは嫌だとハッキリ言った。
古参から新参、使い魔から契約龍まで全員がバッチリ見たあのユミナの技。自分たちに被害ゼロだったのが幸運。そして、自分たちの主は恐ろしい武器を所持してしまった。
唯一の救いはユミナが使用するときは、自分が護りたい者のために使用する点だ。
分かってはいるが、あの行動に誰もが身震いしていた。
わかっていないのはアリスだけだった。
アリスは膝の乗っているちっこい妖精フェーネに質問した。
「ふぇーね。”こまぎれ”ってなに?」
返答に困る、フェーネ。
助けたのはリーナだった。
「アリスちゃん。”細切れ”って言うのは料理に使う技よ」
「それじゃあ、ママはいまからりょうりするの?」
「え、えぇ......正解! 今からアリスちゃんのママは料理を行う。応援してあげてね」
ウキウキするアリス。
「うん!! アリス、ママをおうえんするッ!!」
フェーネをこねくり回す。フェーネと遊ぶのが最近のアリスの楽しみ。
フェーネも遊ばれて大変、ご満悦。つまり、Win-Winの関係が出来上がった。
ユミナが料理するのを待つアリス。
「はぁ〜」
「お疲れ様です、リーナ様」
「ありがとう、コーラン!」
遠い目をするコーラン。
「ある意味、料理ですから」
◆
選手用通路にいる私。闘技場の明かりが差し込む。観客の歓声が聞こえてくる。
きっとアシリアが喋っているのだろう。結婚しても人気は衰えず、むしろ益々ファンを獲得していっている。
アシリアも悪い気はしないと話していた。『未来永劫、ユミナのものですから!』と本音を漏らしたのを聞いたのは私だけの特権。
こんな良い子がいるのに、複数の女性と特別な関係を築いてしまいごめんなさい......
「ため息してどうした?」
聞き覚えのある声。顔をあげると...
「あっ。クイーン!!!」
私を待っていたのはクイーンだった。
「どうして?」
私の質問に答えるクイーン。
「恋人にエールを贈りに来たんだが」
「あ、ありがとう」
ストレートに言われ、照れる私。バレていないよね。
「突然、ユミナとあのバシャと決闘するとゲーム内で知ってね。しかも賭け試合ときた」
「......色々、あったの」
肩で息をするクイーン。
「わかっている。ユミナはいつも誰かのために戦ってきた。これもそうなのだろう?」
「うん」
クイーンが私の方へ移動してきた。
「えぇ!?」
クイーンが私を優しく抱き寄せる。
「例え、どのような結果になっても私はユミナの力になるよ」
何度も頭を撫でるクイーン。
「クイーン...」
身体を離し、笑顔でクイーンを見る。
「見ていてください!」
「......わかった。あぁ、一つお願いがあるんだけど」
首を傾げる私。
「どうしたの、改まって?」
落ち着かない様子のクイーン。
「もうすぐ、学校が始まるじゃん」
そうだ......夏休みが終わりに近づいている。一気に現実へ戻された感覚を味わう。
「その、初日を......さぁ」
私は心配になる。
「大丈夫?」
意を決して、クイーンは言った。
「一緒に登校しよう!」
暫し沈黙が漂う。
「いいよ!」
私はクイーンにそう告げ、闘技場へ足を進めた。
職業:『星霜の女王』
職業:『魔導龍』、『魔導剣士』、『魔術師』
武器種
『杖』
・星刻の錫杖
・星空の姫神
『片手剣』
・裁紅の短剣
『双剣』
・婥約水月剣
『ナックル』
・鬼蜂の拳
・捕食者の影爪
※武装鉤爪:【リッキープレイド】
『双薙刀』
・賊藍御前
※【??の?】
【??の?】
〜装備欄〜
頭:沈黙の古代帽子
上半身:幽天深綺の魅姫・エクシード:【月下気紫】
下半身:幽天深綺の魅姫・エクシード:【月下気紫】
足:救世の光
〜装飾品〜
①:覇銀の襟飾
②:神龍の手袋
③:薔薇襲の荊乙姫
④:天花の耳飾り
⑤:星王の創造
⑥:聖女の誓い
『魔術本』
・黎明の不死鳥【魔術本:No.1】
・ピーコックの舞姫【魔術本:No.2】
・煉獄猟犬戦争【魔術本:No.3】
・ジェノサイド玉藻ノ前【魔術本:No.4】
・ライノ元帥【魔術本:No.5】
・蠍器官【魔術本:No.6】
・美女とアリゲーター【魔術本:No.7】
・熊王【魔術本:No.8】
・メガロドン帝国の逆襲【魔術本:No.9】
・クジラは老人に会う【魔術本:No.10】
・亀は見た【魔術本:No.11】
・キング・オブ・ディアー【魔術本:No.12】
・ヤミコウモリ伯爵三世の冒険鬼【魔術本:No.13】
・フェンリルの宝箱【魔術本:No.14】
・ワシを離さないで【魔術本:No.15】
・梟の家【魔術本:No.16】
・ラクーン・ドッグの奇蹟【魔術本:No.17】
・ミステリーCAT in black【魔術本:No.18】
・土竜の謎【魔術本:No.19】
・我はコブラ【魔術本:No.20】
・ジュラフは眠らない【魔術本:No.21】
・奇妙な蜘蛛の冒険【魔術本:No.22】
・アルマジロの回転【魔術本:No.23】
・エレファントの終わりに【魔術本:No.24】
〜契約龍〜
・覇天紀龍 ランペイジフリート・リベリオン ”GROOVY”
◆◇
※以下、抹消された記憶と会話。
『久しぶりね』
「...どうして」
『君の次にあの子に渡すことになるとは、ね』
「もしかして...」
『ま、君が持つ武器の方が強いけど』
「下位互換を渡したの?」
『当たり前でしょう。アイツが三人の戦闘データを集め、誰にも負けない武器を造ったんだから。それがアイツの生きた目的。あの子に二人の分まで生きて欲しい願いを込めて。君の持つ武器はそれだけ強力なのよ。流石に渡せないわ。いくら55と56だった者でも......』
「大丈夫かな」
『君が心配するなんて...よほどご執心なのね』
「お前には言われたくない」
『心配しなくてもいいわ。性能は君の方が上でも......所持者の加護があるから〜』
「それは...」
『今更、ワタシたちが罪悪感を抱くのは烏滸がましいわ。それだけことをしたのよ。それにいくら後悔しても二度と戻ってこないんだから......』
「そうだよね」
『だから、十分に使ってよ。あの子がやっと許可してくれたの。【破王双藍】と【金始刀【閃】】は渋々、制限を解除し、君にも使用可能にしたんだから。それじゃあ、バイバイ......。ワタシの......』
※白銀の幻鍵
専用武器:義賊の短剣、大怪盗の短剣
『マスカレード』
1:レッド
2:ブルー
3:イエロー
4:レクイエムモード
5:黒鳶
5ー1:檳榔子黒
5ー2:利休白茶
※三身一体
二種類のフォームに強化変身兼抑制装置。
専用武器。
巨大金槌:破王双藍
『X:変型機』使用時の特殊武器。
・長双剣:覇藍の友
:玉藍の愛
巨大金槌、長双剣どちらでも使用可能。
必殺技:魔魂封醒:【檄戦嫩絆】
専用武器。
大太刀:金始刀【閃】
『X:変型機』使用時の特殊武器。
超電磁砲:耀金妃叛銃
大太刀、超電磁砲どちらでも使用可能。
必殺技:魔魂封醒:【壮速燦絆】
いつでも切り替えが可能な変形機構武器。
『X:変型機』発動には装備者の音声認識が必要。
三身一体は本来、ただ一人にし扱えない代物だった。
白銀の幻鍵は二人が分かりあった結晶の証。




