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静かな怒り

 バシャ。それが黒ローブのプレイヤー名であった。


 顔を強張らせるアシリア。ステラドも同様。

 私には感じられない何かがNPCには恐怖に感じているのだろう。


 張り詰めた空気が部屋を支配する。

 正体はきっと、邪悪なオーラを放つ杖。リリス様のカラスの羽のような艶のある黒色ではなく、ただ暗い闇だった。相手の”死”を誘う冥き杖。


 フードが外される。爽やかな笑顔を浮かべる優男だった。凶悪な杖を持つイケメンにギャップを感じてしまう。

 困惑しかない。武器もエフェクトだろうと割り切った。

 進み出したのはステラド。


「これは、バシャ様。本日も国王陛下の護衛、ありがとうございます」


 バシャとステラドが会話している間、ブリジット王は椅子に座る。

 ブリジット王が口を開く。


「ステラド。次のブリジット王国次期当主は、バシャに決める」


 指名されたバシャ以外。私を含め、全員が驚く。

 ステラドの予想が的中した。


「どういう意味でしょうか?」

 ステラドはあくまで知らない顔で進める。

 自分の父が、得体の知れない男に洗脳されている。その事実を隠して。


「言葉通りだが。バシャはこれまで私に尽くしてくれた。彼になら、この王国を任せられる」


 ステラドはブリジット王に近づき、言い争うをしている。

 NPCであっても親子喧嘩は見ていて辛いものがある。



「傑作だね!」


 嘲笑う口調。爽やか面からは想像もできない声。

 ステラドとブリジット王を馬鹿にしている目だった。

 嫌悪感が伝わる。”やはり”、この言葉に限る。


「まさか、ここまで相手を支配できるなんて思わなかったよ」


「なんで、こんな馬鹿げた事を企てたの?」


 私の質問に少し驚きを見せるバシャ。


「へぇ。僕の杖のこと、知ってるんだ。答えは簡単だよ。人も操れるかの実験さ!」


 躊躇いなく言い放つ。クソ! コイツ......


「ユニーククエストをクリアして手に入れてね。テキストを読んですぐに実行したよ。ま、流石に時間はかかったけど。こんなに簡単に国一つ手に入るとは。やっぱりゲームはやめられないね! 自分の思い通りの遊戯ができる」


 半眼で後ろに視線を向ける。

「ストレス発散もできる事だし、ね!」


 私はギロリと睨む。

「彼女たちに何をしたの?」


「君が考えている事はしてないよ。制限がかかっているからね。でも、僕の()にできる。今はこれで十分だ」


 鎖を持ち、勢いよく引っ張るバシャ。目隠しと手首には手錠が嵌められている星霊たちは転倒する。


「あははははは! いつもは拘束していないよ。コイツらの旧友の存在を『征服者の錫杖』が察知してね。ドレスコードを用意してって訳さ」


「......やめろッ」


「僕の物を僕が何しても君には関係ない」


 コイツの本性は腐ってる。


「しっかし驚いたよ。今このゲームで注目の的でもある”ユミナ”。君が単なる実力不足の腰巾着ってことがね」


「どういう意味ですか......」


「僕も支配して星霊の性能を見たが。確かにオーバースペックだね。コイツらの従えさせれば『スラカイト』で無双できる。いや、もしかしたら未だ誰も到達できない『リリクロス』も制覇できる。そして、急に現れた新規プレイヤーが僕と同じ種族を従えている。だから、分かったよ。お前の名声は全て星霊にやらせていたことだってね!!」



 破裂音。私は頬にビンタを喰らった。体勢を崩してしまった。

 床に着く寸前にヴァルゴにキャッチされた。



「キサマ...」

 低く迫力のある声のヴァルゴ。


「良いよ。ヴァルゴがそんなことしなくて」

 私の言葉で臨戦態勢を解く。


 笑顔をやめないバシャ。

「一丁前に主、気取りか。まぁ、いい。ユミナ、僕とゲームをしよう」


「”ゲーム”?」


「僕とユミナ。明日、一対一の決闘をする。君が勝ったらブリジット王や地面に無様に這いつくばっている星霊どもも解放するよ」


「......貴方が勝ったら?」


「勿論、お前の従者を()()()()にする。星霊は全て僕が奴隷にする。こんな美女、美少女を侍らせる。最高じゃん!! 力もある、僕が世界を支配する!!」


 笑顔で言い放った。酔っているのか。どうでもいい......

 同時に私の中に()()()()が誕生した。


「安心しろよ。お前の従者は僕が()()()()()()()()()()!!」


 私はバシャの言動を無視して事務的な受け答えをした。

「場所はどうする?」


「それは私が」


 私たちの話に入ってきたアシリア。

「ブリジット城の近くに闘技場があります。そこで如何でしょうか?」


「僕は構わない。でも、一つ追加事項がある。大勢の人を呼ぶこと。ユミナが惨めに負ける姿を多くのプレイヤーに見せるためだ」


「......わかりました。では明日。ブリジット闘技場でお二人の決闘を行います。両者、よろしいでしょうか?」


 私とバシャはうなづく。



 扉が開く。バシャが帰るからだ。

 アシリアがバシャに声をかける。


「バシャ様。最後に一つ。聖女として、私から神託がございます」


 ゆっくり扉は閉まる。醜悪の笑みを見せるバシャ。


『貴方は......』


 アシリアは真剣な眼差しを向ける。


『選択を間違えました』


 アシリアの言葉が終わったと同時に扉は完全に閉まりきった。



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