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変身バンクよりも侵蝕バンク

ビートアップ!

「お嬢。鍛治師にとって、危惧することはなんだと思う」


 工房の椅子に座っているユミナにタウロスはそう言った。

 ケンバーとの熱い授業を終えたユミナは、ボルス城に帰った。タウロスに呼ばれ工房に足を運んでいた。


 タウロスの工房は、はじめて見た部屋とは大分変化している。

 鍛治師には欠かせない設備。暖炉はもちろん、レンガや陶器を焼くための焼成炉。金属を溶解・精錬・鍛造などに必要な溶練炉がある。

 他には壁には道具類。簡易的な作りのテーブル。金床まで備わっている。


 そこにユミナが発見した精密機器を搬入。ケンバーとドランとの共同作業で完成させた『稀代の女王(イカロス)』。『稀代の女王(イカロス)』製作に必要だった魔法用大釜などが新たに追加されていった。

 おかげで工房を三倍拡張することになった。中世ファンタジーと高度科学で構築された部屋が今のタウロスの工房である。


 鍛治部屋の両隣には布装備を扱うための設備と細かい装飾、主にアクセサリーを生産するのに活用するための設備が設けられている。

 本来なら鍛治師でもあるタウロスは鍛治部屋だけでアイテムを完成させる。

 だが、タウロスが仕えている主は重い装備品を好まない。

 なので、鍛治師でもあるタウロスがドレスなどの軽い装備品を生産するのに両隣の部屋と行ったり来たりしている。


 丸椅子を揺らす。唸る声を出しながら考えるユミナ。

「自分が作ったアイテムがなくなること?」


 ユミナの回答に何か思い当たる仕草を出すタウロス。

「あーそういえば、アタイが作った魔法棒は」


 丸椅子を放り投げ、土下座をするユミナ。

 第三者からすれば、借りたお金は絶対に払います、の現場に遭遇したと錯覚するだろう。

 軍服少女が上半身が牛柄ビキニの鍛治師女性にジャパニーズ土下座している。

 なんともおかしな現場だ。ユミナとタウロス。主と従者の関係とは言え、素直に綺麗な土下座をしているわけは一つしかない。



 怪盗ラキとの戦闘でタウロスが作った『熱火の魔法棒』が消滅した。ラキが使用した『悪を刈り取る大鎌(マカーブル)』によって。『悪を刈り取る大鎌(マカーブル)』発動中に触れた物は耐久値がゼロになる。


 メイドに任命したラキの説明では、復活は困難とのこと。

 なので、こうして製作者に謝罪をしているのだ。

 アイテム生成に使う小槌。製造の金槌(ビルド・アップ)のげんのう部分を手のひらへ何度も置く。


 仁王立ちを止めるタウロス。椅子に座る。両肘を両膝に置き、じっとユミナを見ていた。

 風貌は堅気には見えない。タバコを咥えなくても雰囲気でおっかない。ヤのつく人がイメージとして該当するだろう。


 床の面を見ながらユミナは大声を出す。




「大変申し訳ございませんでした!!!!!」




 主の情けない姿に苦笑するタウロス。

「武器という物はいつか天寿を全うして消える。お嬢が気に止む事はないぞ」


 泣き顔を上げるユミナ。

「......ありがとう」


「で、お嬢の回答だけで今この場で求められる解答ではない。だから不正解」


「なんだろう。工房がなくなること?」


「不正解。アタイの場合は、製造の金槌(ビルド・アップ)があればアイテムは作れるし」


「......腕がなくなるとか?」


「あー。鍛治師の身体的ではなく技術面のかな」


「......降参」


「一生修理されないアイテムが完成されること」


 確かにそうか。アイテムにはそれぞれ耐久値が備わっている。武器然り防具然り。

 敵との戦闘や手を離し地面に叩きつけられても耐久値は減る。そのまま使用し続ければ簡単に道具は消滅してしまう。

 だから、毎日鍛治師に工房に寄ってアイテムの点検を依頼するしかない。

 星刻の錫杖だけは月からのエネルギー供給さえあれば大丈夫。

 それ以外のユミナが持つ特殊なアイテムたちは例外なく耐久値が存在する。


「一生修理しないアイテムなんて存在しないと思うけど」


「ま、そんな代物が開発されれば鍛治師は廃業になってしまう」


 タウロスがユミナの前に金色のブレスレットを出す。


「鍛治師からすれば、作りたくないアイテム。でも、お嬢のためになら創るよ」


 派手な金色のブレスレットを受け取るユミナ。

 ウィンドウで詳細を確かめる。


「『星王の創造(ステラ)』?」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 装飾品

 ①:覇銀の襟飾(ヴァイセ・エーゲン)

 ②:真竜の手袋

 ③:薔薇襲の荊乙姫(ブラック・ローズ)

 ④:天花の耳飾り

 ⑤:星王の創造(ステラ)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 分類はアクセサリーだから、空いている枠に装備した。

 リング部分には見慣れない文字が意匠されてる。

 右手首にハマった星王の創造(ステラ)は重さを感じない。なので、武器を振っても支障がない。


「そいつは、防具だ」


 ユミナは自分の防具を見る。今日着ている軍服。帝國ノ華闃(コノハナサクヤ)のまま。


「何にも変化ないけど?」


「中心の宝石を二回叩きな」


 タウロスの指示でユミナは中央にある宝石。

 特殊金属:『創天威パンドラ』。内包物もない、透明度も高い。

 クラスが持っていた《エヴァーラスティング・ジュエル》と同様の価値がある超鉱石。


 ドランの故郷である「龍の都」に祀られていた鉱石。龍を狩る龍——邪龍との戦いにユミナたちも巻き込まれた。邪龍討伐の褒美に譲り受けた『創天威パンドラ』をタウロスがユミナのために加工して金色のブレスレットに取り込ませた。



 ユミナは白銀の宝石を二回叩いた。


 ユミナの身体に、宝石から水銀に似たドロドロの液体がまとわりつく。

 今まで装備していた軍服は消えた。消滅したのではなく、ストレージに自動的に送られた。


 極光のごとく幻想的な色。腕から胴体。全身を侵蝕していく。

 薄い膜が纏うような感覚をユミナは味わうのだった。


「龍の都」には龍と巫女が住んでいる。一体の龍と一人の巫女は一心同体。肉親よりも固い絆で結ばれている。

「龍の都」では異端児でもあったドラン(覇天紀龍 ランペイジフリート・リベリオン ”GROOVY”)。

「龍の都」以外にも強き者を求めて国を出た。

エルフの国:ユグドラシルでドランのオーラを観測。ドランの元パートナー、ヒメノが回収に動く。ユミナは笑顔でドランを見送ったが、ドランに相応しい契約者なのか判断するためにユミナたちは「龍の都」に強制連行された。

「龍の都」を滅亡させるために邪龍復活を目論む者が登場。復活は阻止できるユミナ達は邪龍:ガイザギュラと戦闘を開始する。

万全な状態での強化外装、『稀代の女王(イカロス)』と装着。ドランと一緒に邪龍を葬った。

後日、巫女の長から『創天威パンドラ』とヒメノ含め何組かの龍と巫女がユミナの城で活動することになった。

鎖国状態だった「龍の都」を解除。発展させるためにユミナの城で見聞を広めろと命令を受けたらしい。

巫女ちゃん達は最近、パートナーのドラゴンよりもユミナちゃんにお熱だとか。

ドラゴン達は嫉妬まみれになるが、ドランを従えているユミナに敵う訳ないと考え、日々ドランと修行している。ドラゴンたち曰く”地獄だ”とのこと。


ドラゴンはオスが多く、巫女は女性だけ。

ドラゴンのメスはオスよりも貴重。上位巫女しか側に入れない。


メスドラゴンと女性巫女......じゅるり

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