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『紅と黒はピンクへ【禁断の果実】』

 なんとも無妙な空気で再開する、お茶会。

 切り出したのはリリス様からだ。


「じゃあ、本題に入りますか」


 背筋を伸ばし、目と耳に全神経を集中する。聞き漏らしがあると極刑になるかもしれない。


「まず、私がここに来た目的からね」


「はい............っおわぁ!?」


 いつの間にか椅子ごと倒れた私。転ばされた? それよりもいつ? 

 気がつくとリリス様が私を見下していた。

 テーブルに座り、足組みしているリリス様が口を開く。目つきが急変した。


「ユミナちゃん......【魔魂封醒(フリーダム)】、使ったでしょう」


「えっと......」


 横を向いても強制的に前を向けられた。リリス様は特別なことはしていない。眼だけで私の体を操っていた。

 自分の体が宙に浮く。椅子は倒れたまま。浮かんでいる私に手を出すリリス様。

 リリス様の白い手が顎に触れる。


「隠す必要はないわ。全て知ってるから」


 リリス様の片方の手には分厚い本を持っていた。魔法学園に置いてそうな分厚い魔術本とそっくりだった。

 本は一人でに開く。目的のページになるや、リリス様が話し始める。


「海底都市で初使用。次に『スラカイト』と『リリクロス』の間の海で使用。最後は、支刻の(しこくの)獣塔じゅうとうで使用。合ってるわよね、()()()


 自分の名前を呼ばれて、ビクッとするクラス(ラキ)

 今のクラスはネコ怪盗、ラキではない。人間のままの姿となっている。


「身構える必要はない。君の覚悟はちゃんと確認したからね。ユミナちゃんに助力するように」


 お辞儀するクラス。



「そこのひよっこはこれくらいにして。ワタシの言った意味、理解しているよね」


 ストレージから裁紅の短剣(ピュニ・レガ)を取り......だす......あれ?

 武器メニューを開いても目的のナイフが見当たらない。



「お探しの物はこれ」


 裁紅の短剣(ピュニ・レガ)をペン回しの要領で回すリリス様。取り返そうとするが体が動かない。金縛りのように合っているみたいだ。

 裁紅の短剣(ピュニ・レガ)を見る様子は子どものようだった。


「やっぱり、良いわね」


 リリス様が持ってから裁紅の短剣(ピュニ・レガ)が紅く光っている。主人の元に戻れて嬉しそうだった。

 武器に意思があるのか、この際疑問にはしない。元気なナイフを見ると私が持つには力不足だろう。

 なら、ここは言うしかない。



「お返しします」


 ここで強力な武器がなくなるのは痛い。でも、リリス様と敵対してまで保有したいかは別だ。

 タウロスの説明では、リリス様が本来の持ち主。これはいわば、正当な者に返却する行為。


 リリス様が言う。

「え、いらない」


 あれ? そんなキッパリ言われると私もどうしていいか分からなくなるんだけど......


「確かに、裁紅の短剣(ピュニ・レガ)は元はワタシの持ち物。修理依頼を出しはずだけど」


 リリス様に見られ、縮こまるタウロス。隠し通せないか。

 全部、持っている本に記載されてるのかな。興味は尽きないけど、大事に持っているし簡単に教えてくれと思う。


「ま、修復してもワタシには観賞用しか用途ない。武器の本質は戦闘で使われること。なら、ユミナちゃんがそのまま使ってくれれば裁紅の短剣(ピュニ・レガ)も喜ぶでしょう」


「はぁ......」


 私に戻されると分かるや点滅めいたエフェクトを出し始める裁紅の短剣(ピュニ・レガ)さん。

 そんなに私が嫌いなのか。ここまで色々、苦楽を共にしたのにあんまりだよ......

 そりゃあ、決め技時しか使用していないのは否めないけど、全戦全勝してるんだし、そこは誇っても良いんじゃない。


「ワタシの持ち物と言ったけど、本当は別の所有者がいたんだけど......」


 リリス様はどこか悲しそうな目をしている。


「あの子は()()()()()を見つけた。自分はもういらない力だけど捨てるのは危険だからっとワタシに渡した。長年しまっていたら本当に力がない状態にまで機能停止しちゃったの」


 なるほど。だから、初めて裁紅の短剣(ピュニ・レガ)を見た時、あんなのメタリックグレーだったんだ。


「元気になったし、使っていた武器があれば喜ぶかなって修理依頼を出したのよ」


「でしたら、」


「ユミナちゃんが【魔魂封醒(フリーダム)】を破壊ではなく、誰かを救うために使っていたのを見た。ワタシもあの子もユミナちゃんになら任せてもいい、と結論を出したのよ」


 リリス様から手渡される。


裁紅の短剣(ピュニ・レガ)を託すよ」


「あ、ありがとうございます」


「一つ忠告。ユミナちゃんも知っても通り、【魔魂封醒(フリーダム)】は使い方次第で世界を崩壊させれる代物。どこぞの誰かに奪われたら............真っ先に()()()を殺しに行くから!! 覚悟しておいてね」


 言葉一つ一つに重みを感じる。星刻の錫杖と違って、プレイヤーに奪われる危険性がある。

 対策を考えないと。














「終わった......」


「お疲れ様です、ご主人様」


 ぐでーっ。疲れた......


 あの後もこの宇宙には無数の並行世界が広がっているとか。過去や未来に干渉して正しい事象に修正しているとか。調節者として宇宙を監視しているとか。元々私たちプレイヤーは別惑星の住人でヴァルゴたちの惑星を調整するために惑星間のワープ装置や死なない体、環境適用するために様々な特性を付与する能力を付けたとか。知っても良いのか設定を延々と聞かされた。


 リリス様の話が全て合っていると仮定する。そうなれば、プレイヤーは宇宙に進出して宇宙戦争とは発展しそう。しないよね......


 そういえば、帰り際にタウロスと喋っていた気がしたな〜


「あれ? ヴァルゴは」


 見渡してもヴァルゴの姿が見当たらない。


「リリス様を追いかけて行きましたよ」


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