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鈍感主人公

扉が開く。新しいコーヒーを持ってきたラグーンなのか、と考えた。実際、トレイの上にはコーヒーカップを置かれている。ラグーンの隣には見知った銀髪少女がいた。


「ユミナ!! 結婚おめでとう」


 ユミナ以外。”終わった”、表情を出す。

 そうとも知らずユミナに歩み寄る吸血鬼のアイリス。いつものちっこい身体...


「ありがとう、アイリス。でも、ごめんね。今来客が来てて」


「そんなの後にせい。それよりも妾が妙技を伝授してやろう」


 血色が変わる。ユミナ以外。顔面蒼白を超えて顔面白々。血が全て抜かれていた。

 アイリスの言葉に面白おかしく介入するリリス。


「へぇ〜 『妙技』ね〜 どんな技かしら」


「同性だろうと異性であろうと、この技を受けた者は一生分の快楽を味わうだけではなく。愛し合う者同士が円満な関係が続く。妾もこれを喰らった時は、”先生”しか目に映っていなかった。恐ろしい技だ。覚悟しとけよ、ユミナよ」


「アイリス。ありがたいけど、遠慮しておく」


「そんなに畏まるな。お主と妾の仲だ」


「そうじゃなくて......”先生”いるから」


 やれやれポーズからの鼻で笑われた。


「ユミナよ、”先生”が誰か分かっているのか。お前が一生かかってもお会いできるか分からぬ素晴らしきお方だ。ユミナは幸運の持ち主。もしも出会った時に粗相がないといけない。特徴を伝える。まずはなんといっても黒髪。”先生”の髪に触れるのは宇宙に触れると同じ。次にお顔。上手く言語化できない自分が恥ずかしい。ユミナが愛してやまないヴァルゴの顔を宇宙レベルにまで神化しないと到達できない」


 アイリスの情報と対面してる”先生”を比較する。確かに、存在しているだけで神々しい。少し紅色が入っている黒いドレス。少し怖い雰囲気のある色合いなのに、光っているように見える。こういうエフェクトなのかな〜 それとも運営すら表現できないから、敢えてプレイヤーに分かりやすい配慮なのか。


「聴いてるか?」


「うん。聴いてる、聴いてる。凄いねアイリスは」


「何がじゃ?」


「目の前にいる”先生”の特徴そのまま。よっほど好きなんだね、リリス様のことが!!」


 私の言葉にアイリスの顔が強張る。ゆっくりと顔を動かす。テーブルを挟んで、自分に手を振る女性。

 非常に笑顔だった。あの笑顔のために、国すら放棄した時がある。


「汗、凄いよ。脱水症状になるよ」


 私を無視して、ずっとリリス様を凝視している。アイリスの体から汗という名の生命の源が排出されている。


「ユミナよ、妾、急用を思い出した。失礼する」


 脱兎の如く移動を開始する。が、時すでに遅し。

 アイリスの格好が非常出口と同じ格好で口から何かが噴きそうだった。アイリス、存在がギャグなんて。お見それしました。


 一歩も動くことなくリリスさんに捕獲されたアイリス。刹那的時間でアイリスを捕獲したのにも驚いたが、アイリスの体を弄るのは流石に驚きを隠しきれなかった。本人以外に生体変化は解除できない、と豪語していたのに。最も簡単に解除された。今のアイリスは元の銀髪、豊満な胸を持つ長身モデル姿。


 アイリスの肩に顎を乗せているリリス様。さらに震えるアイリスの体。


「随分、えらくなったわね。アイリス」


 言葉が出ないアイリス。


「ワタシにも教えて欲しいな。貴女が話した『妙技』ってやつ」


「あ、あ、あの......そ、そ、それは......」


 アイリスの体はバグっている。震え上下に行ったり来たり。工事現場で使ってそうな両手で持つ掘岩ドリル。今のアイリスはまさに、同じだった。ダメだ、笑ってはいけない場面。ぐふふっ、はー面白いッ!!


「ユミナちゃん、空いてる部屋借りるね〜!!」


 投げキッスした後、リリス様はアイリスを連行していった。

 に、してもリリス様。エロい顔にしたかと思えば、人を惑わす魔性の女性だったとは......


「えっ!?」


 リリス様とアイリスがいなくなった瞬間に、椅子に座っている私を取り囲む。

 みんなジト目とむけてくる。


「ピュ〜♫」


 我ながら苦し紛れの口笛。VR世界ならいけると思っていた。うまく口笛ができなかった。世界は非常だ。


「それにしても、リリス様。すごい人だね」


 私の言葉にカプリコーンが心配顔をする。


「ご主人様...」


「うん?」


 カプリコーンだけではない。私を取り囲む従者の顔が深刻だった。一同、私と目を合わせ視線を誘導する。

 誘導された先、壁にもたれかかっているヴァルゴがそこにいた。


「何かあった?」


 私の質問にため息を吐くタウロス。

「お嬢。人の気持ちを察した方がいいぞ」


 あれ? NPCに”察しろ”と諭された。


 席を立ち、ヴァルゴのもとへ。私が隣にいても、腕に抱き締めても、頬を突いても、胸を揉んでも無反応。

「......」


 みんなに手招きされる。全員、小声で会話した。


「ねぇ、本当に何かあった?」


 レオに頭を叩かれる。

「流石にオレでも分かるぞ」


 アクエリアスからは罵られる。

「イモナちゃんって、ダメ人間ね。魚のエサにしてあげるわ」


 カプリコーンはメガネを取り出し、教師風になる。

「ご主人様は、教養が足りません。教え込まないと大変なことになります」


 アリエスからは未だにジト目で見られている。

「ユミナ様...」


 拳を握り、笑顔だった。アリエスのその笑顔、マズい。

 逃げようと動くが羽交い締めされ動けないでいた。


「今だけ、主従関係を破棄します。一発、腹を殴らせてください」


「───ッ」


 みんなの反応は明らかに私に非があるから事態を終息しろ、と言わんばかり。


 アリスに袖を引っ張られる。

「まま。ゔぁるご、かなしいかおしてる。ままがなにかしたの」


 やめてぇえええ!!! そんな泣きそうな顔を出さないで。お願いします。土下座しますから......

 アリスに嫌われたら、ママ生きていけない。我が子を悲しませた私、死罪。


「腹を斬るしかないか」


 アリエスがキッパリ言い放つ。

「いらないです」


「みんな、妙に冷たくない」


「ユミナ様が如何に鈍感クソ野郎って事が良くわかりました」


 ついに、般若顔になる初代聖女様。ごめんなさい......



「お待たせ!! どうしたの?」


 つくり笑顔でリリス様にスマイルを提供しました。


辛辣すぎる従者達。

いつか、ユミナちゃんをコレ、アレ扱いしそう。

界隈的にはご褒美だよね〜!!


吸血鬼のアイリスが連行され、牡羊座のアリエスが威嚇する。別室で寝ているのが聖女アシリア。


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