はぁ〜い終了!!
固有名称ラキの表示が変わる。”クラス”。これが人間時のラキの名前。自由自在に人型ネコから人間に変化できたところを見るに、星霊の形態変更に似たスキルか魔法を所持している可能性が高い。隠さず堂々と私に見せるあたり、口からの出まかせではない。ラキ......。いや、クラスの正体は星霊を束ねる王ってことになる。しかも星刻の錫杖の元の所有者。つまり、私の前任者。謎が一つ解かれた。
「どうして、前任者のラキがここに」
コロコロ変わるので統一して”ラキ”にした。謎は一つ解かれても真実には辿り着いていない。
「話す必要はない」
ラキに対話の意思がない。別の話なら喜んで饒舌になるのに関わらず。ラキ自身は自分の過去を語りたくないらしい。星刻の錫杖が二階に置かれている以上、手段は狭まる。
「コーちゃん、キューちゃん」
【魔術本:No.13】、【魔術本:No.4】を出し、使い魔を召喚した。私が魔術本に注ぎこむMP量に応じて使い魔の体も変動する。巨大な姿にしてもいいが、室内と殺意が高い攻撃には不向き。よって最小のMP量を消費し、召喚した。手乗りサイズの二体はラキへ仕掛ける。
案の定、小型の使い魔に苦戦しているラキ。ラキが使い魔と攻防を繰り広げている間に装備を変更した。
コウモリを模したコーちゃんは『飛行』と『超音波』の能力を持つ。翼があるため『飛行』能力はどうなのかと疑問に思うが、これは主に対してのこと。魔術本シリーズから召喚される使い魔は全員、『譲渡変化』が備わっている。使い魔の能力を主が使用できる力。勿論、条件は存在する。魔力が込められた鉱物で生産された武具に付与される。タクト型杖の熱火の魔法棒を左手に。
さっきまで装備していた誘惑の癒しをやめ、幽天深綺の魅姫に防具変更している。ラキの思惑で博物館の外は夜。よって、幽天深綺の魅姫は【月下気紫】になる。
星霜の女王で得られる効果は星刻の錫杖を装備しないと発揮されずジョブ欄からも消失する。なので今のメインジョブは【魔導龍】。魔術師のジョブを持つプレイヤーがドラゴン系統のモンスターと契約したことで取得可能な職業。【月下気紫】と【魔導龍】でなんとかラキの神速を対処しないといけない。
コーちゃんの『超音波』攻撃とキューちゃんの火炎攻撃にウザいと顔に出しているラキ。
「分身する幻影」
「お前は忍者か!!」
ネコ怪盗に戻ったラキの体は三人へ分裂した。態々怪盗に戻ったのは、怪盗に戻らないと使用できない能力であることが示唆されている。分身はオートで動いていない。全て独立で活動していた。コーちゃんとキューちゃんにそれぞれラキが一人ずつ。私に向かってくるラキ。熱火の魔法棒で発射された属性魔法も避けられる。距離が近づくに連れてラキの体は分裂して行く。最終的に私に迫る怪盗は六人。
小回りで対処できているが、熱火の魔法棒は近接武器ではない。加えて利き手の右腕は切断されている。必然的に防戦一方になった。武器を変更したいが六人と一度に相手している以上、隙が生まれない。
「ダメージは微々たるものか!!」
分身する幻影で生成された分身怪盗は独立で動いているが、攻撃はそこまで痛くない。
一人だけダメージ量が大きいのは、本体だからと考えられる。注意深く視ても同じ服装に武器なのもあって本物と偽物の見分けがつかない。敵の体に色をつける魔法は持っていないので一人ずつ消滅させるしかない。
攻撃魔法を連射し、形勢を変えようとする。攻撃魔法が命中したラキは分身体。その証拠に消滅時、鏡が割れる演出となっていた。かなり遠距離でも当たったら消滅した。この事から分身体は攻撃力も耐久力もない能力。あくまで分身体が敵の行動を制限させ、混乱している敵に本体が攻撃するだと考えられる。かといって無視は後々の展開上よろしくない。先に分身体を始末することにした。
襲うナイフを足で払う。上へ上がる腕。ガラ空きになる胴体に熱火の魔法棒を向ける。
「テネブレ!!」
分身体に闇が迫る。膜に包まれる。身動きが取れず、分身体は冥府へ誘われた。
闇魔法の『テネブレ』。闇攻撃を可能にする『テネブレ』はレベルに応じて、相手を即死させる効果がある。Lv.1では低確率。100分の1の確率。私の『テネブレ』は最高のLv.10。確実に敵を即死させる強力な魔法。だが、当然デメリットも存在する。一発撃つごとに媒体となった杖武器の耐久力が減少する。『テネブレ』使用後の星刻の錫杖なら微々たる減少だった。でも、熱火の魔法棒は違う。
「耐久力が......半分減ったか」
【牙城の幻影】は星刻の錫杖に使用したため、使えない。
「魔術師としては、いい線行くのね」
今尚余裕の笑みを浮かべるラキ。
『テネブレ』は一体ずつでも放てるが、本来の使い方は一度に大量の敵を殲滅すること。独立行動ができる分身体であっても思考AIは低い。手負の私を一斉に仕留めると踏んでいた。結果私に予想通り。おかげで分身体は一気に始末した。広範囲かつ強力な魔法で使い魔たちと戦っていた分身体も片付けた。
本体のラキには『テネブレ』が効かないことも分かった。対抗手段を予め用意していたか、イベント戦ということで無効化されたのかもしれない。だが、裏を返せば卑怯な攻撃ではラキを再起不能にすることができない。
「貴方も力に溺れているのね」
私が即死魔法を使ったからの会話なのか、悲哀のラキ。
「私の力は救う力。ラキと一緒にしないで」
「偽善者が」
再度、分身体を生成はしてこない。一対一の決闘。
「悪を刈り取る大鎌」
ナイフの刀身は、血がドロドロしたような不気味な波動が放たれていた。直感的に直接当たるのはヤバいと。ラキの攻撃を防御した。
「ッ!?」
ナイフで防御したのは熱火の魔法棒。ナイフに纏うドス黒い粘液は熱火の魔法棒に伝染。腕に伝わる前に熱火の魔法棒を放棄。床に落ちたと同時に熱火の魔法棒は消滅した。
間髪入れずに攻撃を仕掛けるラキ。他の武器を装備する余裕もない。残っている左腕を盾にした。
「チッ!」
体の右側はガラ空き。無防備な横腹へ蹴りを入れられる。鬼蜂の拳をはめる。右腕担当の鬼蜂の拳は床へ。
照準を定め、毒針を発射。針を払う隙に、グローブを外し、覇銀の襟飾を引きちぎる。
白銀の力で私の体のリミッターを解除。ラキの動きがスローモーションに視えてる。
無数の針をナイフと新たに出現させた鞭で捌く。体が全て針に集中。首から上は私の動作を追っている。『煌めく流星』なら見分けるのは容易でも、同等の速さを得た『戰麗』は初見。目で追いきれていない。ラキが慣れる前に再起不能にする。
銀の軌跡は、ラキの前に集める。追尾毒針に対応していたナイフが私へ。精密機械なのかと疑うレベルの攻撃動作。だが、速さならこっちに分がある。
「一発!」
焔をグローブに纏わせ、胴体にストレートパンチ攻撃。『戰麗』と攻撃スキルの相乗効果で後ろへ吹っ飛ぶラキ。
「えっ!?」
私の体も引っ張られる。足には鞭縄が巻かれていた。毒針を全て捌いた後、攻撃が当たる隙に足に絡めたのか。いくら挙動を追えなくても自分に攻撃が来るなら近づくしかない。一瞬の間に罠を仕掛けた。グローブに付いている毒針で鞭縄を切断。ラキの後ろへ。
足払いをかける。すくいあげる。体は宙に浮き、上から蹴り技。腕は一本失っているが足は二本とも健在。敵に行動をさせない。連続スタンプを受け続けるラキ。
「消える人生」
足に伝わる手応えがなくなる。『インビジブル』、透明か。回避技と見た。即座に使用しなかったのは発動条件を満たしていなかった。もしくは奥の手だったのか。どちらにしてもラキを追わないと逃げられる。
自身の姿を消して私の攻撃を回避したのなら、虚を突くことだってできる。しまったッ!!
『戰麗』の効果時間が終了した。時間切れ。体に纏う白銀はなくなり、ブローチに戻る。
「待っていたのね」
私の背中に異物が触れる。
「強力な能力はそれだけ、制限がつきもの。こちらの手の内をさわすより”待つ”に徹した。ワタシが受けたダメージ返すね。『異端の女王』」
体から力が抜ける。戰麗使用後の疲労感ではない。もっと根本なもの。踏ん張る力がなくなった。前に倒れる。
「こ...これ......は!?」
私の両足はラキの攻撃で失った。
★★★★★★
PN:【ユミナ】
Lv:99
〜装備欄〜
頭:叡智のシルクハット→一部破損
上半身:幽天深綺の魅姫【劫力白双】→一部破損状態
下半身:幽天深綺の魅姫→一部破損状態
足:炎削の鷺→全損状態 ※両足欠損
右武器:右腕欠損
左武器:
装飾品
①:覇銀の襟飾→使用不可
②:真竜の手袋
③:薔薇襲の荊乙姫
④:天花の耳飾り