ラストステージで終わると思ったか!! 残念、EXステージへご案内します
状況を見てみると、私達は完勝している。
一層目のポーアみたいに戦闘だけではなく、武器製造勝負や階層に設けたステージで宝探し。仮想敵を用意し、どちらの陣営が早く討伐できるかのRTA、ファンションショー、料理対決、歌唱対決、果てはかくれんぼなどなど。色々な対決をユミナ陣営と刻獣陣営は繰り広げた。
ユミナ陣営の勝利数が増える度に、私へ集まる視線が強くなる。
表現的には空腹の人の前に豪華な料理が並んでいる。だが、飢えている人は鎖に繋がれ、あと一歩の距離で手が届く、みたいな感じ。
以下が戦績である。
二層目:リーナ&ユミナ VS ラティーア(子):ダンス
三層目:ヴァルゴ&ユミナ VS ホースェ(午):戦闘RTA
四層目:コーラン&ユミナ VS モン(申):かくれんぼ
五層目:アリス&ユミナ VS ラビー(卯):ファッションショー
六層目:カプリコーン&ユミナ VS ゴードン(辰):戦闘
七層目:ジェミニ(ラグーン)&ユミナ VS ゴーシープ(未):料理
八層目:タウロス&ユミナ VS オクス(丑):アイテム生成
九層目:アクエリアス&ユミナ VS ネークゥ(巳):告白タイム
十層目:ジェミニ(ベイ)&ユミナ VS ドギー(戌):宝探し
十一層目:アリエス&ユミナ VS ロス(酉):歌唱対決
そして、十二階層は————————。
「ユミナ〜 勝ったよ!!」
フェーネはユミナの周りを飛ぶ。
「フェーネが雷魔法が得意だったなんて」
フェーネは自分の体以上の放電を手から放つ。生き物の如く雷を操るフェーネ。先端がフェーネに当たってもフェーネはフェーネ。息が荒かった。それだけである。
「自分で雷に撃たれる。気持ちいいよ?」
「その”是非、貴女も”って顔やめてよ」
「雷の威力は弱めるから」
ユミナは倒れているティガーリに目を向ける。刻獣最後の一人。寅の名を持つティガーリは黒焦げ。
「私は、このまま拘束されているのも悪くなかったけど」
最終ステージ。フェーネのやる気が倍増した要因。刑務所。
私は拘束されているフェーネを解放しないといけない。その間、ティガーリが刑務所内の無数の牢屋を破壊する。全ての牢屋を破壊される前にフェーネを解放しないとフェーネはぺちゃんこになる。
牢屋脱出だけがクリアではなく、ティガーリを倒し、刑務所の外に出ればユミナ陣営の勝利になる。擬似的に造られた太陽が眩しい。閉鎖空間に長時間いた結果なのか。空気が美味い感覚を味わう。
「永遠にどうぞ」
くねくねするフェーネ。
「ユミナ〜!!」
「フェーネがちっこいから、見つけるの苦労したわ。どうしてフェーネはちっちゃいのかな。もう少し大きくなれないの?」
痙攣するフェーネ。震えてる。幸せに溺れていた。口からよだれまで出ている。
「ユミナ。中々言うね。それでこそ、私が見込んだ女」
「変態に見込まれても嬉しくないけど」
私の頬にフェーネが縋る。泣いていた。嬉し泣きだ。
「一生、ついていきます!!」
「邪魔だから、土と永住してください」
フェーネとのやりとりは、知っている者なら通常運転。知らない者からはユミナはヤバい存在と認知されるだろう。
私も割り切っている。フェーネへの対応はマニュアル化している。
マニュアル以外をやると、『蠱惑の天性』を仕掛けくる。何度、『蠱惑の天性』をやられたことか、と私は思い出す。
アリエスが暴露したことで、ボルス城で悲惨な思いをしたとことを記憶を呼び起こしたユミナ。だから、フェーネには悪い言葉を定期的に言わないといけない。
「これで、終わりかな」
最後の刻獣、ティガーリを戦闘不能になった。
本来ならこれで、ユミナは支刻の獣塔はクリア。レベルも上限解放。晴れて三ケタのレベルに挑める。だが、終わりではない。
寧ろここからだと私は感じている。意気込むがそれも即消えていく。
「お嬢様〜」
ユミナの後ろから抱きつくヴァルゴ。私の体にヴァルゴの手が滑る。悪戯っぽい笑み。上半身から下半身へ。太ももから胸あたりまで。手が動く。もがくが手はやめない。
「ちょっと......まだダメ」
自分で何言っているのか。ヴァルゴの首はユミナに近づく。ヴァルゴの唇に人差し指を置いた。
「えぇ......」
「『えぇ』じゃない。戦いはまだ終わっていない」
「階段での出来事は?」
「あ、あれは......みんなのやる気を出すための簡易的なご褒美」
階段での出来事。うっ、頭が......
「私は、別のことが気になります」
あぁ......あれか。ヴァルゴの言いたいことがわかるのは一番長くいる私の特権。
渦中の先。従者の真ん中で縮こまっているのは、アクエリアス。
今まで、塩対応をしてきた元人魚姫のアクエリアス。
ユミナちゃんと愉快な仲間達の秘め事も顔を引き攣ったり、ため息をしたりと自分が関係ない。関与していない。などなど、他人として過ごしてきた。
一応、従者としての枠組みなので、アクエリアスもVS刻獣に参加してもらった。
ニヤニヤ、と女性が出してはいけないお顔がアクエリアスに向けられてる。一つではなく、いっぱいと表現した方が簡単だ。当人は見ないように顔を伏せている。
「ねぇ、アクエリアス。ユミナ様とのロマンティックな告白劇。いかがでしたか?」
アリエスを筆頭にネチネチ言ってる。一向にユミナに見向きしなかったアクエリアス。
刻獣との対決とはいえ、塩対応ユミナちゃんに告白をしたんだ。意識しない方がおかしいってもの。
現に対決後、ずっと心が乱れていたアクエリアス。茹で蛸みたいな顔で階段を登っていた。ついには壁に何度もぶつかっていた。
余程、自分の中で衝撃的なのか九層目から十層目の間の階段。その時点から私を見ていない。
見ていたが、ジロジロ見ていると言いますか、チラチラ意識して見ていると言いますか。意中の人を見てしまうような。
「あ、あ、あれは、、対決、で、で、あって、決して......イモナちゃんに......こ、告白したわけではありません。勘違いしないでくださいまし」
狼狽するアクエリアス。完全に動揺している。悪ノリし出す従者たち。
「暫くからかわれるだろうな」
「さっさとお嬢様に懐柔されればよかったものの」
奥から拍手。空間は一つのネコ怪盗へ注ぐ。警戒する。ヴァルゴ解放され、武器を取る。
「流石、と言うべきですか」
ラキが歩く度に、ステージが揺れる。刑務所だった場所は書き換わるように崩壊する。雑音が入る。ノイズが走った。舞台は作り変わる。
「......博物館?」
主をお手軽束縛する。フェーネ、恐ろしい子ッ!?
アクエリアス。もってくれ。君まで懐柔されたら、常識人がいなくなってしまう。まだ修正できる。ここを耐えれば、今までの生活が待っているんだから!!