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ケモナーよ、集まれ!!

 後ろから睨まれた。ユミナは振り向くとムスッとした従者たち。右腕はリーナ。左腕はヴァルゴ。ユミナの頭に胸を置くのはタウロス。三人ともユミナを離さなかった。


「どうしたの?」


「「「別にぃ〜」」」


 合体されたユミナたちの様子を見て、ネコ怪盗は悪戯っぽく笑う。


「随分、仲がよろしいですね」


 即座に反論した。


「いや、誤解です……」


 敵になる予定のキャラに何を言ってるんだ、と思う。


「貴女は……」


 別の話題にする。


「わたしは、ラキと申します」


 ラキ、と名乗るネコ怪盗はその場で一回転する。煙は出て、消失した時にはラキはいない。

 全員で辺りを見渡す。


「こっちよ」


 ユミナの斜めの椅子に座っていたラキ。


「いつの間に、って顔ね」


 立ち上がり、ユミナの前へ。


「安心して。即戦闘にはならないから」


「敵の言うことを聞けと」


 ごもっとも、とした表情のラキ。


「ユミナ様がそう考えても仕方がないですが、人質……」


 ラキの二文字の言葉に顰めるユミナ。


「ひ、卑怯ですよ……」


「ユミナ様がわたしの話をちゃんと聞けば、何もしません」


 武器を下ろすしかない。


「懸命です。では、説明をいたします。の、前に」


 ラキは指を鳴らす。


 先ほどまでラキがいたステージにフードを被っている人影を出現する。数は十二。背丈はまばら。全員容姿がわからない。不気味さを覚えるユミナ。


「彼女たちは、あなた方のお客様です」


 ラキの視線は目の前のユミナに注がれていない。ヴァルゴとタウロスだった。


「なんで……」


 ユミナの疑問への解答なのかステージいた十二人は一斉にフードを外す。


「……獣人?」


 姿を現したのは、多種多様な獣人だった。ウサギやサル、ドラゴンを模した人型など様々。

 ラキの言葉通りなら、全員女性で構成されていた。


「彼女たちはここ、支刻の(しこくの)獣塔じゅうとう。各階層で冒険者(プレイヤー)の前に立ちはだかる人たちです」


 さらに説明を進めるラキ。


「ま、あのお姿はユミナ様限定ですが……」


「えっ!?」


「他の冒険者(プレイヤー)が戦うのは巨大化した刻獣(こくじゅう)。彼女たちと同じ存在ですが、異なる存在。言うなれば、ユミナ様だけを相手する刻獣(こくじゅう)。それが彼女たちです」


 また女性と、ある種定番の展開になりつつある顔を浮かべるユミナ。


 ユミナが会うNPCは基本が女性。自分でも不思議だと感じているが、世界は変化しない。敵であっても味方であっても一部を除き、女性キャラしか群がってこない。


「ですが、大変申し訳ありませんが、ユミナ様たちは彼女たちと戦うことはできません」


「どうして?」


「条件がまだ達成できていません」


「条件?」


 他プレイヤーが入手した支刻の(しこくの)獣塔じゅうとうへ入る条件ではない。ネコ怪盗ことラキが言ったのは、刻獣(こくじゅう))人たちと戦う条件。だが、何を達成すればいいのかわからないユミナだった。


()()


 驚きと何故が入り混じる。


 ヴァルゴたち星霊が活躍していたのは、数百年前。『オニオン』のNPCで、『スラカイト』にいる、存命しているキャラは誰も知らない。かなり長生きしているであろう聖教教会の教皇ですら、星霊を認知していなかった。ユミナが出会ったNPCで星霊を知っているのは『リリクロス』にいる知性ある種族。半透明で大図書館限定で姿を現すエヴィリオン・ヴィクトール。エヴィリオン・ヴィクトールも保存状態が悪く、ページを捲ると崩れるまでにいった文献で知った程度。星刻の錫杖(アストロ・ワンド)もその文献で知ったらしいと、前に聞いたことがある。



 ここにきて『スラカイト』で星霊の存在を認知している者がいるとは、と不信感が募る。


「星霊は、この地を守護していた種族。知性ある種族の中から、選りすぐりの者だけが襲名される。この地を支配する邪神を討伐後、忽然と姿を消した。長い年月が経ち、星霊を覚えている者は誰もいなくなった。邪神が死してなお、この地を征服する存在は後が絶えない」


「別の星霊はいなかったんですか」


「従者に聞かなかったのですか」


「あっ、いえ……」


 聞かなかったのではない。聞くまでに至らなかった。


「星霊は襲名制なのは」


「はい。過酷な試験を突破した者の中から、先代の星霊が選び、技術を教えたのち継ぎとか」


「その通りです。ユミナ様の従者がいなくなった後、即動きがありました。ですが、誰も星霊にはなれなかった」


「どうして……」


「星霊の証がなかったから。各星座の名が記された指輪。襲名するのは、その指輪が必要になります。指輪がなければ、ただの自称星霊となり、守護する力も与えられない」


 ユミナは従者の手を見る。確かに装備している。従者のステータスを目に通した時の載っていた。詳細も簡潔的なもの。『星霊に任命された証』。それしか書かれていなかった。思えば、あれが星霊である証。指輪がなければ、本当の意味で星霊になれない。


「指輪以外の代案も当時は考案されていました。ですが、どれも力を発揮する分には役不足。そこで、星霊制度は廃止。同時に別の守護する機関を設立」


「それが……彼女たちですか」


「その通りです。星霊と同様にこの地を守る存在。刻獣(こくじゅう)を誕生させました。星霊よりも劣るもののしっかり守護することができました。刻獣(こくじゅう)も襲名制を活用し、各街を守護する。有事の際は全員で、悪しき者への対応をする」


 なるほどな、と顔をするユミナ。


 星霊の存在が周知されていない。街の名前も干支を外国語にしたものが使われているのも全ては星霊に継ぐ集団が誕生していたから。


「ここで彼女たちと戦う条件が関係します」


 人差し指を出すラキ。


「ユミナ様には、星霊全てをパーティーに加入してから再び、お越しください」


「全て……」


「誤解のないように言いますが、封印解除されてる星霊を連れてきてください。人質もいますので、そこは譲歩します」


 未だ、見つかっていない石像状態の星霊はいる。ラキもそのことはわかっているらしく、封印解除されている星霊のみを連れてきてこい。そう提案された。


「では、一度退出します」


 扉がひとりでに動く。振り返り、退出するユミナたち。


「最後に」


 ラキがユミナに声をかける。


「初代刻獣(こくじゅう)はやる気ですよ。初代刻獣(こくじゅう)は当然、星霊を知っています。ユミナ様の従者をやっている方々は歴代最強と呼び声が高い星霊集団。超えて初めて、刻獣(こくじゅう)は星霊よりも優れていると証明されます」


 ユミナたちは外へ出た。

一気に十三人か。体力持つかな〜

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