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悲報! 攫われすぎな件

「聖女アシリアは、(わたくし)たちに、如何にユミナ様が尊い存在なのか布教し始めた次第です。多くはこれに当てられ下りました。心身が疲弊したのでしょう。残った者は聖女アシリアが武力で制圧しました。ここまで行くと(わたくし)たちも決断するしかなく、聖女アシリアの婚姻を認めました」


「それで......あんな出来事が」


 聖女としてゲーム内で活動しているアシリア。運営からも高度なAIを搭載されているのだろう。だが、それが仇となり思考力が爆発した。結果、ユミナと結婚する宣言を発表してしまう事態へ。本来なら国民的アイドルの結婚なんて相手への嫉妬の嵐が降り注ぐはず。だが、今日ユミナへの直接的な嫌がらせはない。事態の悪循環を回避するためにアシリアは大陸の名だたる貴族と親交を深め、ユミナを守っていた。


 リアルの方でも初めこそ、掲示板では嫉妬の嵐だった。しかし、それも鎮火して行ってる。聖女が誰かの者になるの許せないだろうが、逆に聖女がウェディングドレスを着る。そんなレアな光景を拝める。最高か。そのようにプラス思考がプレイヤー間で浸透している。後で知ることになるが、聖女が婚姻と言う情報が広まり、新規プレイヤーが殺到しており、会社は潤っているとか。


 全てアシリアの仕業ではないだろう。同時にここまで真剣に私と、と考え始めるユミナ。


「アシリアさん......」


 振り返ると、アシリアの姿がない。辺りを見渡すとヴァルゴの所にいた。


「教皇様、少し失礼します」


 歩くペースが早まる。


「二人とも......」


 ユミナそっちのけで談笑するヴァルゴとアシリア。


「どうですか、ヴァルゴ。私はここまで来ましたよ」


「小さい身で、よくやりますね。そんなにお嬢様よりも早死にしたいのですか」


「安心してください。魔法学園にも私の協力者は多数います。研究者たちには研究資金を与えています。内容はもちろん、永遠の命の研究です。完成すれば、私は悠久の時、ユミナ様と一緒にいられます」


「くっ......。なんという執念。そこまでしてお嬢様と添い遂げたいのですか」


「当たり前ですッ!!」


 力強い声が響く。


「私は決めたのです。不甲斐ない自分とはおサラバすると。そのためにあらゆる活動をしてきました。全ては私を救ってくれたお方への愛。そして、私が惚れた女騎士様への恩返しです」


「......アシリア」


 振り返し、アシリアはユミナを見た。本人に聞かれた本音。気恥ずかしかったのか頬が赤い。体をモジモジさせてる。


「ユミナ様、私は本気です」


「アシリアさん。私は......」









 ガラスが割れる音がした。上からだ。全員が上に視線を移す。

 ユミナを例外ではない。落ちてきたガラスの破片は広間の床へ。


 少女の悲鳴が聞こえた。入り口にいたのは怪盗服を着た......人間サイズのネコだった。容姿も相まって女性ということしかわからなかった。ネコ怪盗の肩に乗っているのはアシリアだった。アシリアは動く素振りがないことから気絶していると考えられる。



 口を開いのはネコ怪盗だった。艶気を含んだ低い声。


「聖女は頂いたわ! 返して欲しければ、『支刻の(しこくの)獣塔じゅうとう』へいらっしゃい」


 ネコ怪盗は懐からカードを取り出す。軽いカード投げ。カードは真っ直ぐユミナも下へ。ユミナに当たることはなく、代わりに近くの柱に突き刺さる。


 ユミナたちがカードに気を取られている隙にネコ怪盗が行動する。

 アシリアをお姫様抱っこのように姿勢を変え、ネコ怪盗は逃亡。追いかける衛兵たち。


 呆然とするユミナ。深呼吸をした後、柱に刺さっているカードを抜く。カードに記載されている文面は、先ほどネコ怪盗が喋った内容が主なだった。カードを抜いたことで、ウィンドウ画面が出現。





 《招かれざる猫、悲願への旅路》



 《アシリア聖女、救出大作戦!!》




 ユミナは二つ出現したクエストを受けた。

 《アシリア聖女、救出大作戦!!》は、クエスト名から読み取れる通り、攫われたアシリアを救う、救出クエスト。


 《招かれざる猫、悲願への旅路》は、おそらくアシリアを攫ったネコ怪盗専用クエストだろうとユミナは熟考する。同時に何故、『支刻の(しこくの)獣塔じゅうとう』へ誘うのか疑問だった。


 『支刻の(しこくの)獣塔じゅうとう』の中で待ち構えている各階層モンスターは、干支がモチーフ。『スラカイト』のエリアボスを順番に倒すと見えてくる事実。ボス名称に共通して『二世』が入っている意味は長らく判明しなかった。ここに来ての伏線回収風のイベント。


 だから、余計引っかかる。ネコは干支に含まれていない。だから、ネコ怪盗が態々、『支刻の(しこくの)獣塔じゅうとう』を指定してのには、まだ知らない隠された答えがあると踏んでいる。


 考えすぎかもしれない。それも込みで『支刻の(しこくの)獣塔じゅうとう』へ向かうしかない。


 やる気を胸に進むユミナだったが、ヴァルゴと見つめ合う。ヴァルゴも同様の気持ちだろう。


 先に口を開いたのはユミナ。


「ねぇ、ヴァルゴ」


 ユミナの言いたいことを理解しているヴァルゴ。


「お嬢様の心中はお察しします」


「アシリアさん、何度目かの攫われ、だね」


 ため息を吐くヴァルゴ。


「本当にアシリアは、幸運なのか不運なのか、よくわからない星の元に生まれた聖女ですね」

アシリア......。君はピーチ姫か

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