表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/350

美しい姿には必ず何かが隠れてる

朝に投稿する内容か迷いました。

そのー衣装とか...

 状況を一旦、整理しよう。


 今私たちがいるのは、『ムートン』最大級のカジノ場。高級ホテルを思わせるグランドカジノを中央に『ムートン』のひと区画は深夜を超えても明かりが消えることはない。入り口から大理石の床と目が眩むほどの光源、巨大なシャンデリアが人々を驚かせる。黒服のゴッツイNPCが会場内を監視、揉め事を処理するために従事していた。一般プレイヤーは一階〜三階までは自由に出入りが可能。四階から上には、低階層のディーラーNPCのクエストもしくは、献上金(カジノ内ではコインが該当する)を奉納すれば上がれるシステムとなっていた。


 私が無心でプレイしていたのは、一階にある、東京ドーム二個分だとかの敷地面積には数えきれないゲーム台の一つでもあるスロットマシーン。他にもカードゲーム、スロットゲーム、ルーレット、さまざまな賭け事が行われている。人は楽しみ、また賭けに負け、惨敗する人。一攫千金を夢見る人たちがひしめき合っている。


 タウロスのお使いで、鍛治に必要な材料集めに入った私たちは、景品内に目当てのアイテムを発見した。

『デリシャス・メイブリー』こそ、私たちが欲しいお酒。ただ、必要コインの枚数が、1億枚とアホ運営と言いたくなる量だった。まー、その数も私の輝く剛腕のおかげで無事に目標量にまで到達した。





 ここまでは整理した。問題はその後だ。


 振り返った私の視界にはヴァルゴがいた。うん、当たり前のこと。私の一番の従者なのだから。


「どうかしましたか、お嬢様」


 ふっと笑みを浮かべるヴァルゴ。何度も見ているヴァルゴの笑みなのにいつにも増してドキドキしている自分がいる。

 ヴァルゴの笑みに当てられ、カジノ会場は華やかな雰囲気に彩られる。加えて私の動向を知ろうと周りにいたプレイヤーは、ヴァルゴの美しさに全員、惚けていた。



「ヴァ......ヴァルゴ。あ、あんた......」


 立っていたヴァルゴに、狼狽し、わずかな言葉を絞り出すしかできなかった。


「なんちゅう、格好してるのよ!?!?!??!」



 今のヴァルゴは、鎧姿ではない。



 胸元が大きく露出した銀色のスパゲッティストラップのドレスに、高価なネックレスをつけて美しく着飾っている。


 大胆なドレスでカジノ会場に現れた美女。暴力的な胸と美脚を露出するドレスに私含めて周りの人々の目を釘付けにした。


 ヴァルゴが着ているシルバーのロングスカートのドレスは、極めて露出が高く、おそらく一歩動くたびに魅惑な肢体がずれて見えてしまう。防御面で考えれば、これほど頼りないものは存在しない。


 ある一人の最愛に凝視させるためにものすごい自己主張をしている胸部。

 高いヒールを履いたことでただでさえ、等身が高いヴァルゴはさらに高く遠くからもはっきりと個人を特定できる。青紫色の髪が、今日に限って一段とキラキラしている。シルバーのドレスはゴージャスさ100億点。


 う〜〜ん。ドレスって言っていいのか正直わからない。肌色多めの背中開き、魅惑のウェスト、見えてしまうヒップ。脚の脇に入っている深いスリットは、太腿どころかウエスト付近まで切れ上がっている。そのせいで余計にヴァルゴの美脚が眩しい。ドレスの構造的に、あれ……絶対に穿いていないよね??


 ハリウッド女優や高級クラブのホステスが霞むレベルの美しさが私の前に立っている。


 ヴァルゴのドレス姿を目撃したプレイヤーは幸運に恵まれているのだろう。人々は歓喜し、倒れる者まで出現していた。実際、カジノ会場はちょっとした騒ぎになっている。



 セクシーの権化のようなオーラが人を惹きつけている。

 まー……今までの事を考えると、周りなんてどうでもいいのが私のヴァルゴだ。

 ギリギリ危ないパーティードレスを着て、男女問わず息が荒くても気にしない。


「色々、言いたいけど……まずは。何故、そんなドレスを着たの?」


「お嬢様に見せたくて♡ 好きな人に、少しでも綺麗に姿を見せたいと思うのは女として、当然です。私の場合は......最愛の人が同じ女性だった、ですが......」


「や、やめてよ......恥ずかしい」


 頬を染めながら言い放ったヴァルゴの言葉に、耐えきれなくなり、視線を外してしまった。



「うん、綺麗だよ。私のためにありがとう!! でもさ、過激じゃない?」



 私がわざと周囲を見る。つられてヴァルゴも見たが……


「うん? そうですか? 私は至って普通のドレスだと思いますが」


 ドレスが舞う。やめて、お願い。運営から修正が入るから......



 意味がわからないって顔で悩むヴァルゴ。自分の服装がやばい格好って、なぜ、分からないのか頭を抱える私。


 私を覗き込む表情は魅力的だ。私がいる場所まで手に持っているグラスに入っているお酒を飲んだのか。ほんのり頬が赤く染まっていた。ドレスの前面からとび出した豊満で圧倒的存在感がある胸が至近距離にあった。


 いつも見慣れているのに、今日は無性に吸い寄せられる。だが、私とて、人だ。流石に公衆の面前で()()()()()()をやろうとも思わない。


 困惑している私に、ヴァルゴがフッと笑う。


「戸惑うお嬢様、可愛いですね!」


「と、戸惑っていないし!? 勘違いしないでよ」


 自分の行動が最愛の人をドキドキさせたのが余程、嬉しかったのか。はたまた作戦成功への勝利なのか、私を見ているヴァルゴの笑みは悪戯っぽかった。


「もぉ〜 コイン、落ちていますよ」


 突然の魅惑的な美女の登場で、足元に置いていたカジノコインが床に散らばっていた。一応、システム上落ちているコインは全て私のもの。誰かが拾っても自分のものにはできない。


 コインを一枚、一枚拾い上げるヴァルゴ。


「ち、ちょっと!?」


「はい?」


 私は思わず、動揺した。


 コインをしゃがんで拾っているヴァルゴ。しゃがんだ態勢なので、胸元に注意がいく。私と同様にヴァルゴの体勢に目を奪われ、見惚れているプレイヤーたちがいた。死角があったらどんなに良かったことか。現状、私とヴァルゴの周りには遮蔽物はない。だからなのか、人々が注目の的でもある私たちを無意識に見てしまうのは仕方がない。それが人の性ってもの。



 でも......




「大事な物なんですから......」


「あ、ありがとう......」


 コインをストレージに全て入れ終えた私は、真剣な表情になる。


「お、お嬢様……??」







 ストレージから黒色のマントを取り出した。


 マントに覆われたヴァルゴはキョトンとした表情。


「……え、えっと」


「ダメだよ」


 自分の胸に手を置く。カジノ会場に私の声が響く。




「ヴァルゴは私のもの、なんだから!!!!!」




 私の言葉に、周りにいた人々は目をパチクリしていた。

 それは、ヴァルゴも同様だった。



「あ、はい。そうですが……?」


「ヴァルゴ......私のために、綺麗なドレスを着て、私のために告白をしてくれたことは......嬉しいし、私には勿体無い従者だって痛感させられた。こんなに誰かに愛されることがなかったから」


「お、お嬢様......」


()()()の事を誰よりも見ていたのは、ヴァルゴだった。長く一緒に過ごしてきた相手だから、本人が満足しているなら、と言わなかったけど......一回、ちゃんと言おうと思う」



 一歩前に出て上目遣いでヴァルゴを見た。


「私以外の人に、肌を見せないで」


「............っ」


「ヴァルゴの行動は全て、私のためのもの。ヴァルゴが周りに興味ない素振りを見せて、目の前の私に自分を魅せつける行為は、徐々にエスカレートしていっている。それがダメだとは私は一切思わないし、咎める気もしない。でも......嫌なの。ヴァルゴの体を誰かに見られるのは……嫌なの。貴方の全ては私のモノ。だから、私と貴女だけしかいない場所で魅せてよ。お願いだから......」


 必死の叫びが通じたのか涙を流すヴァルゴ。


「わかりました。お嬢様」


「ヴァルゴ......」


「私は焦っていました。アシリアがお嬢様に、直接的ではないとはいえ、結婚の宣言をしてしまった。あの時......自分の心が張り裂けそうな勢いでした。このままだと、私はお嬢様から見放されると感じて......自分の体を使って......誘惑しました。お嬢様に振り向いてもらえるなら、この体も安いものだと。でも、違ったんですね。考えすぎでした。お嬢様はちゃんと、私を観てくれていた。それが分かっただけど、安心です!!」



 黒いマントが宙を漂う。視線は次第に上から下へ。即座に着替えたヴァルゴ。いつもの騎士の鎧だった。


「行きましょうか、お嬢様」


 手を出された。私はヴァルゴの手のひらに、自分の手を置く。

 握った手は徐々に、移動する。指と指が交差し、恋人つなぎへと変わる。


「ドラン、みんな!! 行くよ!」


 私の声に反応した、使い魔たち。床に転がっている生きる屍を超えて、私たちの元へ駆け寄ってくた。





 肌を見せないことには成功したが、かえって状況が悪化したといえる。



 私の腕に抱きつき、縋るような掴み方をしてきた。潤んだ瞳のヴァルゴは、自分が()なのだと実感している。


 私は、空いている左手で頬を掻きながら、苦笑していた。


 さっきまでの大人な女性はどこへやら。実際にあの場で、迫られたら抗えなかっただろう。それほどまでに大胆なドレスのヴァルゴは魅力的だった。今回は色気全開すぎて、危なかった。何はともあれ、私にだけ魅せる口実ができたのは嬉しい事。私の従者たちや仲良くさせてもらっているフレンドまでなら多少の露出した姿は全然、良いけど。有象無象のプレイヤーに見せてあげるほど、お人好しではない。



 カジノ会場を歩く私たち。


「それにしても、お嬢様」


 私の耳元にヴァルゴの唇が近づく。


「ち、ちょっと!?」


 戸惑う私を尻目に、囁く声を出すヴァルゴ。


「独占欲、強いですね!」


「はっ? 誰のせいよ」


「従者に責任を負わせるとは、とんだ主様ですね」


「......これ、私が殴っても許されるよね?」


「でも、ありがとうございました」


 唇にキスをされた。再び、カジノ会場が静寂へ包まれる。

 ヴァルゴの両肩を掴んで、密着した体同士を離した。



「い、いきなり……何を!?!?」


 人差し指を私の唇にそえる。


「何も言わないでください。しっー、ですよ。ユミナ様♡」


 しばし放心状態。前を歩く美しい従者は、色っぽい笑みを浮かべていた。



「ヴァ……」


 大きく息を吸って、声量とともに吐き出した。


「ヴァルゴのバカっ!!!!!!!!」


 私の大音量の叫び声を物ともしないヴァルゴは前へ歩き出していた。


「あっ、待ってよ。主を置いていくな!!!!!!!」


さすが、我らのユミナちゃん~



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ