表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/350

反省しています......

これ、ちゃんとしたタイトルです!!

 見ていられない空気とは、きっとこの時にあると言っても過言ではない。


 衝撃の真実と、無意識に発した絶叫の影響で「シュヴァル」の街には居られなかった。


「変な視線だね......」


「いいじゃないか。今の私達には好都合」


 黙って歩を進める。向かっているのは、クイーンさん。いや、クイーン(白陽姫ちゃん)が選んでくれたクエストを受注しにいく。

 内容は依頼主が求めるアイテムを採取する系統のクエスト。


 ただ、一般の採取クエストとは違い、取得条件が異なる。


「まさか、女性二人じゃないと受けれないなんて」


「他にもカップル限定クエストもあるよ」


「そっちは行かないの?」


「早く終われば、行けるけど......ユミナも見ただろう。「シュヴァル」にいるのは殆どカップル」


「イチャイチャするためにクエスト受注するけど、道中が混む......」


「正解。討伐系クエだと、邪魔でな」



「あー......なんとなくわかる」










 依頼主のNPCとの会話が終わり、目的地に進む。

「人気ないのかな〜」


「いや、報酬のイヤリングの効果もいい。目的地付近の風景も綺麗で見惚れるレベル。何時でもいても飽きない場所なんだ」


「じゃあ、難しいとか?」


「採取する薬草を独占しているModが厄介だし......特殊モーションが苦手ってプレイヤーが多くてね」


「『苦手』......嫌な予感する」


「それでも、ユミナに見せたかったんだ」


 クイーンの顔が直視できず、眼を逸らす。

「......わかった」


「これで少しは威厳が保てるかな」


「あはは。さっきのクイーン、酷い顔だったね」


 やられっぱなしは性に合わないので反撃のターンに移る。


 私のニヤニヤ顔を見て、キョどり始めるクイーン。


「し、仕方がないだろううううう。()()()()を本本本本人の、、、、目目目目の前で......ば、ば、暴露するなんてててて」



「いったん、落ち着いてよ」


 まーわかる。かすみちゃんでこれだ。話をわざと逸らしたけど、私自身もなかなかに恥ずかしいことを口走ってしまった。ここがゲーム内で心底、よかった。リアルなら数日は恋人の目も見れない有り様。


「クイーン、はい」


 レオ(ライオン)の背に乗っているフェンリルを模した私の使い魔を手渡した。心を落ち着かせるためだ。


「ユミナ。いつの間に使い魔なんて高等技術手に入れたんだ」


「クイーンのおかげ!!」


「そ、そうだったな。かわいい......」


 クイーンはウルウルが大変気に入ったのか、抱き締めながら歩き始めた。


 吹雪は一旦止んだ。それでも、見渡す限り白一面に覆われた氷原には変わりない。地図を見るに、端から端まで山と森とちょっとした湖しかない。視認できる光景も寒々しい白い景色がどこまでも広がっている。太陽の光を浴びて、氷が輝いているように見える。



「これは、フェンリルなのか??」


「らしいけど、小さいしウルフの方が私にはあっているから、ウルウルにした」


 私の発言に戸惑い、抱っこしているウルウルの頭を撫でるクイーン。


「......おまえ、強くなれよ」


「ウーン!!」




 雲一つもない澄み渡った空の下。


 目的地に到着した。


「道中助かったよ......えっと、」


「レオでいい。ユミナを守るためだからな。これくらいはしないと剣闘士が廃る」


「ライオンも剣闘士になる時代なのか......」


「俺のしょうにあっているからな。戦うのに飢えているんだ」


 レオの変貌に驚くクイーン。


「大きいな。それに......」




()()()()()?」


「いや、私は全然気にしない。それだけ修羅場を潜ってきた証拠だ。敬意を送るよ」


「ユミナといい、おまえといい。不思議なやつらだな」


「そういえば、ユミナのことなんだが」


「あん? 今まで何やっていたか知りてえって顔だな」


「うん。会うたびにユミナは私の想像を越えた速度で成長していっている」


「............」


「だから、こわいんだ。もしも、私は」


「まぁ、わかるぜ。その気持ち。ライバルや想い人が自分から遠ざかるのは歯がゆい。でも、簡単なはなしだ。おまえがさらに進めば問題なんじゃねえのか」


「えっ??」


「愛する者のために自分を研鑽するのは、おれは素直に好きだぜ」



(ユミナの従者は、本当に表情豊かだな。こちらの悩みに自分の考えをまとめて私に話してくれる。他のNPCも大概、プレイヤーと流暢に会話が成立するが、ユミナの従者は頭三つは越えている思考ルーチンを備えている。ユミナとの出会いでAIが学習したのか。それが答えなら、本当に私の彼女は最高だな)




 ジィ~~~~~



「おっと、いけねえ」


「どうした??」


「実はな、俺を送ってくれた奴らがな。ユミナの表情を逐一見とけって」


 レオの視線を追うクイーン。移るのはジト目のユミナだった。


「あー......はい」


「初めはなんでそこまで深刻そうな顔をだしてるんだ、こいつらはって鼻で笑っていたが......」


 ユミナに近づくクイーン。その足は雪に阻まれも相まって重い足取りだった。


「えっと、ユミナ」


 レオはやれやれっと顔を出す。


「ようやく言っていた意味を理解したぜ。あのヴァルゴが青ざめた顔を出した理由にも納得がいくぜ」


「ユミナ......その.....」


 目の前の恋人が私の従者を仲良く会話している。お互いが打ち解けたと喜ぶ一方で、私の中の押さえきれない感情が湧き出てきた。空気に触れ、私の体を黒いモヤとして覆う。これは嫉妬なんだろう。クイーンと楽しく会話したいし、従者に成り立てのレオともじゃれあいたい。


 クイーンが他の誰かと。しかも女性と会話しているのがたまらなく、いやだった。それにレオに何か言われて、暗い顔が一気に晴れていた。クイーンの何かが吹っ切れたのかもしれない。レオに悪気がない。クイーンの質問に親身になって応えた。それは私の中でレオを好印象としてとらえている。


 でも、クイーンを励ますのは......彼女でもある私の役目。誰かにその役目をとられるのは......なんかすごい嫌。これは一種の独占欲なのか。世の中の恋人同士があんなに外で見せつけているのか少しだけど、理解した。自分の愛する相手としゃべっていいのは愛し、結ばれた者の特権。愛した相手が楽しいなら、遠くを見るのもアリなのかもしれない。だが、余裕の持つとは。経験からできる行動で、遭遇していないと得られず、感じ取れない想い。


「ねぇ、クイーン」



 ピンと姿勢を正すクイーン。


「あのね、私は......ちゃんと聞くから」


「えっ?」


「どんな内容でも、クイーンの悩みもちゃんと聞く。だから......」


 クイーンを抱き締める。


 上目使いでクイーンを見つめる。


「あまり、他の人と喋ってほしくない、です」


「はふぅ~ よかった。大丈夫、その時はちゃんと言うから。私はユミナの恋人だからね」


「ありがとう。そして、ごめんなさい。気持ち悪かったよね」


「まぁ、あれはあれでレアな光景だった。それに、それだけ私を大切に想ってくれているんだなって。嬉しかった。」


「ありがとう」


「だけど、」


「はい......」


「このゲームはMMOなんだから、大勢のプレイヤーを話す機会が多いんだぞ。肩の荷を下ろさないと心が持たないぞ」


「善処します」


「ま、ゆっくりでいいよ。まだ始まったばかりだし」


「うん!!」








「なぁ、俺たちは何をみせられているんだ???」


 レオの背に戻る妖狐とモンスターとの戦闘を終え、戻ってきたフェンリルが呆れは表情を出す。

 人の言葉は使い魔は話せない。それでも、発言者の意図を組むことはできる。そうでなければ召喚者の使い魔が務まらない。召喚者のユミナの事も、ユミナの従者の事もわかっていないと業務に支障をきたす。だが、使い魔とて万能ではない。ましてや、主人の愛情なんて理解はできない。使い魔はただ主の手助けをする存在なのだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ