人肌なんてないよ!?
程なくして、システム的に積もらない様にしてある舗装された道に足を踏み入れる。
「吹雪、卒業!!」
えっ、次の街に行くにはまた猛吹雪のフィールドを通らないと行けない? 卒業証書は返納だって......!?
おいおい、それじゃあ私は解放されないまま、一生雪の奴隷ってことかい???
頭の中のユミナがおかしな思考をするくらいに吹雪の道は応えた。
フードを外す。
モコモコフードよ、君はよくやったよ。
「お嬢様」
「何よ? そんなに息荒げて?」
「お嬢様の防寒具、私が持ちますよ」
「えっ!? そ、そう。はい!?」
寒さはもう大丈夫。でも......
「嫌!」
「どうしてですか。街の中はきっと暖かいですよ」
「ヴァルゴ、今の自分の顔。鏡で見たら」
「キマっていますか!」
ウインクするな!?!!? ヴァルゴのニヤニヤ幸せオーラに当てられた付近の氷が一瞬、溶けたような気がしたけど、気のせいだ。
「無敵か、コイツ」
「お嬢様の温もりが欲しいんです」
「やっぱり、変態行動じゃん」
「あのですね、どれだけ私がお嬢様を心配していたかわかりますか?」
ま、研究所から脱出し、ヴァルゴ達に再び会えた時真っ先に飛びついたのがヴァルゴだった。私とアリエスがいなくなって、みんなと再開するまでずっと空な眼だったとカプリコーンに聞いた。
「ごめん」
「だから、少しでもお嬢様を感じたんです......ダメですか?」
くっ!? 可愛い......急につぶらな瞳で私を誘惑して。全く〜
「わかったよ、はい」
ゲームに温もりが残るのか疑問だけど、ヴァルゴ的にはいいらしい。私が着ていた防寒具を抱きしめ、乱舞している。
愛する不審者は一旦、端に避ける。
「レオ、戻ったの?」
隣でオレンジ色の光が輝く。振り向くとレオは人間態から動物態へ変化していた。
着ていた防寒具はレオのウラニアの指輪に自動的に転送されていた。
「こっちの方が落ち着くんだ」
「でもさ、こう言っちゃうとなんだけど......ライオンの姿の方が寒くない?」
防寒具が消えた今のレオは百獣の王の姿。サバンナを駆けるライオン。ただのライオンとはちゃんと差別化されている。人間態のレオが身に付けていたアマゾネス風の装備が動物態に変化したのち、四足歩行のライオンにキチンと体が合うように調整されてる。軽装を着たライオンの誕生。似合っているけど、寒がりのレオが自ら防寒具を脱ぐくらい動物態にならないといけない理由があるってこと。
ゆくゆく判明することかもしれないから、この場では聞かず、一緒に「シュヴァル」のアーチ状の門をくぐった。