頭がぶつかり合うのはテストに出るくらい定番!!
あらかた星刻の錫杖の性能がわかったので防具屋に来ました。えぇ、なぜ来たかって……
「黄金杖と同じ性能な防具ありますか?」
テーブルに出された羊皮紙ぽい紙に防具屋で売ってある。防具一覧を見たが序盤の町なだけあり防御力もイマイチな防具ばかりだった。
星刻の錫杖が使えず、【EM】を回復している時が必ずしも非戦闘時とは限らない。最悪、戦闘中に発生してしまう可能性があるので回復している最中に滞りなく戦闘ができるように繋ぎ的な防具や武器を集めている。
結局、何も買わずに店を立ち去った私。ちなみに防具屋の前に武器屋に寄ったけど同じ結果だった。
防具屋の店主はまだ良かったけど武器屋にいたハチマキを巻いていたイカつい男店主は門前払いっていうのかな、うん? とにかく『お前が持っている杖と同じ武器はウチにはねぇ』って強制退去させられた。
店のドアが閉まる瞬間におじさんを見た。なぜか四つん這えしていたのが印象深かった。
「そろそろ、最初の街とも卒業なのかな〜」
やるべき内容が少なくなってきた。ならば、次なる行動は……
「大丈夫、自然に。そだよね、自然に誘えれば……」
夜の噴水公園にプレイヤーらしき二人組がいた。二人とも片手剣をもっているから剣士だと思う。何やら地図を見ながら会話している。指差ししている方角からして次の街でもある『ヴァーシュ』に向かおうとしている。なので自分も、と近づく私。
忍び足で二人の背後に迫る魔法使いの図。
側から見たら不審者に見えてしまう。
「あ、あの……」
声をかけようとした時、持っていた星刻の錫杖が振動していた。
小刻みに震え、自分の腕にまで伝わるから痙攣を起こしている風に見えてしまう。
「————ッ!?」
星刻の錫杖がひとりでに動く。磁石のようにどこかへ惹きよせられる。
気分は犬に引っ張られるように散歩をしている飼い主。
うわぁ〜 さっきの二人組、私を見ている。唖然とした顔と珍妙な光景を見る目が同時に見れるなんて幸運?
いや……それよりも
「恥ずかしい……って、どこに向かっているのよ!?」
誰が好き好んでこんな変な格好をしないといけないんだ……
こんな耐え難い視線を回避したいがなぜか星刻の錫杖が装備から外せない。禁止マークなんて初めて見たよ。
吸い寄せられるかのように、目的地に到着したのか星刻の錫杖が脱力したように下に降りる。
「うん? 前に見た覚えがある石像だね?」
少し前に拝んだ石像。戦う女性の石像ってなかなか見ないから覚えている。でも、公園で何をすれば……
石像の周りをぐるぐる回る。石像の周囲は、特別なにもない。
『……』
誰かの声が聞こえた。でも、私以外誰もいない。
『……』
「誰?」
うめき声らしき声が聞こえた。やっぱり、誰もいない。
「唐突な恐怖イベントやめてよ……」
身震いをしてしまいキョロキョロし始める。でも、やっぱり誰もいない。
気にしすぎなのかな……
もしかして、お化け系のモンスター? いやいや街中には敵モンスターは出現しない。
星刻の錫杖を構える。数分、錫杖を前に出して警戒したが不気味な雰囲気に静まりかえっている公園の奥地でしかなかった。
「くるなら来なさい!! こっちとら巨大モンスターと戦った経験だってあるんだから!!!!!!!」
正攻法じゃなかったけど、ひたすら毒でじわじわ敵を怯ませていただけなのは私の心の内だけの話。
「もし、モンスターが迫ってきたら戦闘開始時に強制発生するスキルがあるから」
『見習いの初歩』と『命の鼓動』がスキル変化していた。
『見習いの初歩』は『見習いの中歩』。
以前の初歩は戦闘終了時にMPが回復する強制スキル。スキルが進化した結果、『見習いの中歩』は戦闘開始時に強制的にMPが10回復する効果が追加された。
『命の鼓動』も『活力の鼓動』として生まれ変わった。効果は戦闘開始時、最大HPの5%回復する。また、戦闘終了後には最大HP10%回復するになった。
『見習いの中歩』も『活力の鼓動』も敵との戦闘になったら勝手に起動してしまうスキルたち。
森で検証した結果、私を起点にして半径10メートルで二つのスキルが強制発動する、が判明した。なので、もし私の背後を狙う輩が噴水公園にいたとしても近づけば分かる。
警戒アラームみたいに使うのは勿体ないけど背に腹はかえられぬの心情でいったん、星刻の錫杖を下ろす。
「フレンドを呼べる機能があるらしいけど、アクイローネ以外誰ともフレンド登録していないから使えない……」
フレンド欄を見た。でも、アクイローネはログインしていない。
「いつ見ても、すごい剣幕……」
石像に近づき、上を見上げる。台座には駆け抜けている姿の女性。まるで生きた化石。
ははぁ……なんてね。しかし最近のゲーム、触覚までリアルだねぇ〜
石像の足を触ってみたけど、ひんやりと冷たい感触を味わった。
「もしかして、石像の人の声なのかな……!?」
さっきから聞こえるうめき声の正体が私の目の前にある石像の発する声だとすれば、辻妻があう。
いつまでも現れない敵。いつまでも聞こえる女性の声。周りには私と目の前の石像しかない。
「星刻の錫杖のフレーバーテキストに妙な記述があったっけ」
【あらゆる状態異常を浄化できる。】
もしも、星刻の錫杖の浄化機能に石化も含まれているのなら。試す価値はある。もし敵対関係になっても寝起きの敵は周囲の確認に時間を割くはず。相手が状況把握に時間を充てている隙に超至近距離で魔法を放てば……いける!!! 倒してアイテムがドロップすれば儲けもんだし〜
星刻の錫杖の先端を石像に当てる。
「『清浄なる世界へ』!!!」
天から眩い光が降り注ぎ石像を包み込む。使用した『清浄なる世界へ』は星刻の錫杖専用の魔法。対象に直接もしくは光の玉を放ち、触れればあらゆる状態異常を完全浄化ができる呪文。現状の欠点は【EM】を恐ろしく使ってしまう点である。私の星刻の錫杖はレベルがまだまだ未熟な武器。なので、一回発動しただけで約半分も【EM】を消費してしまった。
徐々に石像にひび割れが出始める。破砕音が鳴り響く。頭から足まで全体へ。石像全体にさらに割れ目や裂け目が広がっていく。裂け目となっているヒビはギザギザで折れ曲がった線が入り、長さはまばら。長いのも存在すれば短い線も存在していた。
石像の表面? 石の皮膚?
石の殻は粉々に砕かれ、バラバラと崩れて地面にカケラが落ちてきた。同時に台座の上にいた女性も落下した。今まで石像時には片足で立っている状態だった。いきなりの出来事で体が自由になったのだろう。バランスをくずして私の方へ落下する。
あぁ……間違えなく、回避できないやつだ……
お互いがお互いの頭と激突した。これが私と石像だった女性騎士とのファーストコンタクト。
どっかのハチマキおじさん:ワシの人生はなんだったのか......
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???:これが私とお嬢様の出会いですか
ユミナ:なんだか恥ずかしい気分
???:ところで、お嬢様......私を倒してアイテムを貰おうと企てていたんですね
ユミナ:いや〜 若気の至りと申しますか〜 はい......
???:顔が硬直していますが......まぁ、詳細は.....お部屋で聞きますので
ユミナ:耳元で囁かないでくれます!?(耳が死にました......)
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