従者は、主をイジりたい衝動に駆られている
「早く帰って、ユミナ様をいじめた......いえ、なんでもありません」
「っておい!?」
肩に手を置き、笑顔でアリエスを見つめる。
「ねぇ〜 アリエスさん、何を口走ったのかな」
なんとなくは、わかるが確認しないことには始まらない。少し恥ずかしそうにアリエスに尋ねた。
「ユミナ様の恍惚な表情を見たいんです」
清々しい顔を私に見せるアリエス。
「いやですね。ユミナ様にアタシ達は毎日、いじめられています。ならば、ここで一つ下剋上をして、ユミナ様を悦ばそうと思いました。あわよくば、激しい吐息を吐き、嬉し泣きしながら「もっとやってください!!!」って懇願する顔もみたいなって〜」
己の欲望を恥ずかしがる素振りも見せず、堂々とヤバい計画を話し始める従者に呆れしかなかった。
「フェーネ、貴女の魔法、教えて!!」
「私は構わないけど......」
フェーネは私を見る。
「フェーネ」
体をビクビクさせ、怯えと悦びがミックスしたような変な存在となっているフェーネ。
やばい......フェーネが恍惚となると、私にも影響が。体が熱い、震えが止まらない。顔の火照りが鎮まらない。
あっ! またレベルが上がった。
だめだ、みんなに効いた冷酷な眼差しもフェーネにはご褒美か。じゃあ、何がフェーネに効くんだ?? この研究所で答えが出れば、スラカイトまでの道中で実践すればいい。
「フェーネ、外してよ」
腕を見せ、私は解除の提案をする。が、悩み出すフェーネ。
「言ったでしょう。『スラカイト』に行かないと外れないの、ごめんね」
「そんなー............」
「でも、悪い話じゃなかったでしょう?」
う〜んっと唸る。
「それはまぁ......私の力になったのは素直にありがとうっと感謝はするけど」
多くの罠を掻い潜ると即座に、研究所の二階には動物を模した小型のロボットが出現していた。『覇銀の襟飾』は使えない、加速スキルはリキャストタイム中で使えない。フェーネとの無人島鬼ごっこした弊害がここにくるとは......
『戰麗』のデメリット効果で、一定時間、スタミナと俊敏値にデバフがかかっている状態での戦闘は色々、苦しいものがあった。まずは思い通りに体が動かない点。これだけでもロボット達の攻撃を回避するのにワンテンポ遅れる。もう一つはフェーネが私と繋げた『蠱惑の天性』で私自身がおかしくなっていく点。
生物改造ロボットとの戦闘で判明したが、フェーネは自らの性癖を熟知しており、突っ込む傾向がある。
更なる痛みを求める変態とは、まさにフェーネっと言ったところか。自ら敵に突っ込む攻撃をすることなく攻撃されにいくので当然、ダメージを負う。裏切り防止のための『蠱惑の天性』で感覚を共有している私にもダメージの痛みが伝わり、悶えるしかできなかった。
そんな私の苦しみは生物改造ロボット達には関係ない。私を倒そうと躍起になり、攻撃を仕掛けに来た。フェーネの痛みと『戰麗』のデメリット効果が合わさって、余計にダメージを負ってしまった。
結果、外も内もダメージが計り知れなかった。でも、悪いことばかりではなかった。
新スキルも獲得できた。ま、おかしいモノだけど......あとは生物改造ロボットとの経験値が美味しい点は良かった。あわよくばドロップ品も欲しかったが落ちなかったのは残念でしかない。
二度と経験したくない体験。
結局、地下へ行くエレベーターを壊し、エレベーターシャフトを下る提案が最有力候補に上り、実施した。