研究所は危険がいっぱい
ふざけないでよ、私何か悪いことしました??? 全く身に覚えがないんだけど......
一日一善。いや......一日百善はやっていると自負している。
何が悲しくて強制的に変態の仲間入りしなくちゃいけないのよ。しかもこんな得体のしれない絶海の孤島で。
クッソ!! ケンバーから自分に降りかかる魔法を除去できる魔法を教わっていない。状態異常ではないので『清浄なる世界へ』の対象外だし。めんどいのがさっき、フィーネが言っていた研究所の内部について。
「罠に当たれば、当然自分は負傷する」
当たらないように回避しても、感覚が共有されている以上。どちらかが罠に当たってもダメージが入る。フィーネ的にはご褒美なのだろうが、生憎私にはそのような変態趣味は持ち合わせていない。一回、死亡しようかな......
「どこにリスポーンするかわからない......」
運よく、ボルス城に戻れるならいいが。私だけ戻っては意味がない。アリエスやフェーネが島に残ってしまう。それはダメだ。
「我慢するしかないか......」
フェーネからカードキーを貰い、指定の場所に置いた。
オートロックは稼働する。連動してカードキー本体にも蒼い線が浮かび上がる。
認証している動作なのかな〜
数秒待たずしてシャッター扉の様に上がり、開かずの扉は動き出した。
「うん? 入らないの」
フェーネは振り向き、私達が立ち尽くすのを見て不思議そうな顔をしだす。
「進んで扉が攻撃してくるかもしれない」
「もしくは......こちらの行動を制限する罠があるかもしれません」
「............二人とも、今までどんな人生を送ってきたの??」
扉には警戒すべし、なのがユミナ様の格言。
なんか、未来感が否めない。さっきまでファンタジー世界にいたのに、この研究所だけSF世界。変な気分だけど、異世界に入り込んだ感覚を味わっていた。
とりあえず、即敵の出現はなく一安心したので進むことにした。
「宇宙船の内部みたいな風景」
リアルで宇宙船が出てくる映画とかを見てきたから、今いる研究所の内部構造が宇宙船の船内と類似している点が多い。
「劣化は感じられない」
キョロキョロ見渡すが建物特有の経年劣化が見られない。
前方に真っ直ぐ通路が伸びている。生物感知が搭載されているのか、歩く度に天井のライトが眩しく光だす。
後方、つまり私達が歩き終えた場所のライトは消え、暗くなっていた。
「部屋は開きませんね?」
アリエスやフェーネが壁面に備え付けられている扉をいじるが、開くことはなかった。脱出のヒントがあればっと思ったけど、甘くはなかった。
「ライトは自動で動くし、どこかに動力源があるかもしれない」
扉を開ける電気と天井の電気系統は別なのかもしれない。地道に調べるしかない。
「エレベーターか」
研究所は地上二階、地下二階の構成だった。入り口があった一階の部屋は空振りだったが階段を登って二階に来た時には散乱した研究資料を発見し、ファイルの中に研究所の内部見取り図を見つけた。
その後、レーザーみたいな赤い線が迫ってきたり、機関銃持ちのドローンが迎撃に来たり、あらゆる毒霧が密集された部屋に閉じ込められたりと波瀾万丈の濃厚な経験をした。二階怖い。
ま、おかげで研究所の全体像を把握できた。
見取り図を元に探索を再開した私達。どうやら電力系統は地下一階にあるらしい。
しかし問題は地下に行く手段がないって事。
見取り図のおかげで地下に行くためのエレベーターは見つかった。でも、生きていないので動かすことは叶わなかった。地下に続く階段はない。八方塞がり状態。
「どうしようか......」
「破壊しましょう!!!」
妙にキラキラした瞳を出すアリエス。いつから思考が大雑把になったんだ?
「もしかして、疲れている」
「そんなことありません、ただ......」
「『ただ』?」
「早く帰って、ユミナ様をいじめた......いえ、なんでもありません」