古の脚色
でも、オフィの指輪を所持しているなら話は早い。
「勝利条件はどちらかのHPを全損した者が勝利で、いいかしら?」
待った、をかけるリーナさん。
「それともう一つ。勝った人に相手はなんでも言うことをきく、でよろしいでしょうか?」
「なんでも、ですか......」
「怖気づきましたか?」
「あっ、いえ......問題はありません。では、私もリーナさんに勝てばお願いしますね」
リーナは剣先を私に向ける。
持っているのは黒い刀身の片手剣。ガード部分には、鎖に似た細長いモノが巻き付いている。
「わたくしが貴女のような方に負ける可能性はありません。が、貴女が勝てば、貴女の望むモノを提供しましょう!!」
私も星刻の錫杖をリーナに向ける。
「貴女に恨みはありませんが、全力で行きます!!」
私の言葉が終わると共に、私達は行動を開始した——————
「..................許さない」
言葉は言った本人にしか伝わっていない。
リーナは目前の魔術師に対して悔しさと羨望の炎を眼に宿し、歯を食いしばる。
◇
戦闘フィールド外。
アイリスが組んだ境界内でユミナとリーナが戦闘開始していた。
両者を外野から見ているヴァルゴは隣にいるアイリスに目を向ける。
「で、アイリス......そろそろ、話してくれますか? 何を隠しています?」
ヴァルゴからの質問に、一瞬目を見開き、驚きを見せるがいつもの飄々とした表情に戻るアイリス。
「何も隠していないが......」
「ふ〜ん。では、みなさん。このダメ吸血鬼を拷問します。手伝ってください!」
「おいっ!? 物騒な事を言うな!?」
さすがにっとカプリコーンは制止する。
「ヴァルゴ......いきなりどうしたんですか?」
「アイリスが考えもなしにこんな茶番を計画するはずがありません」
「可愛い孫に試練っとさっき言っただろう。外の世界にはリーナ以上に強い存在がいる。それを”わからす”。それが妾が計画した事。他にはないが??」
「私達、何年の付き合いだと思っているんですか?」
「考えすぎじゃ。ヴァルゴはすぐ人を疑うな〜」
「そうですか。時にアイリス......ワタシの過去、どこまで脚色しました?」
静寂が漂う。
「逃げるが勝ち!!」
「逃がしません!!」
唐突に始まったヴァルゴとアイリスの追いかけっこ。それをただ棒立ちで戸惑い、走り去る両者の後ろ姿を眺めている星霊達。
「「「どういうこと???」」」