その瞳で何を見る
ちゃんと無事帰れました。
至高の百合の日をいうことで、連続投稿です。
「ごめん、真凪。少し外すね」
「ほ〜〜い!!」
手を振る真凪を後に私は白陽姫お義姉ちゃんの教室に向かう。
2年4組。白陽姫お義姉ちゃんが在籍している教室。
教室の扉を盾にして、顔だけ覗き込む格好をする私。
「何かご用ですか?」
「はひぃっ!?!?!?!?」
後ろにいたのは2年4組の教室の女子生徒さんだった。
「えぇ……えっと」
やはりなのか気心が知れた仲ではない人との会話は上手く言葉が出ない。
「すまない、彼女は私に用があるんだ」
教室から歩いてきたのは私の義理の姉でもある弓永白陽姫さん。木ッ菩魅烏学園の有名人である。
昼休みなのもあって廊下には生徒が大勢いた。男子生徒なら白陽姫さんの人間離れした美貌に釘付けになり、天を仰いでいた人もいた。『今日は人生で最良の日』と洩らしていた人もいる。
女子生徒なら自分たちの会話を忘れ、高貴と美貌な雰囲気が直視してしまいドキドキしていた。中には倒れてしまう人もいた。
誰もが教室から出た白陽姫さんを見ている。一瞬にして周りの視線を集める白陽姫さん。目の前にいる私はなんとも言えない想いを心に秘めていた。
「大丈夫か? せつな......??」
はい、結婚してください……って何プロポーズをしているんだ私は!?!?!?
自分が自分にツッコミを入れるのはなかなか現象。幸運だったのが今出してしまった言葉は全て心の中だった点。もし聴こえていたら……
『すまない。せつなは血のつながりこそないが私の妹だ。妹の素直な言葉は非常に嬉しいが私たちは女同士。申し訳ないが君を恋愛対象とは見てないんだ......すまないな』
きっとこんな感じの言葉を思いながら変な目で見られる。この上ない気持ちになる。
折角? ゲームの成果なのか分からないが昨日家でも少しだけ話せるまでになったのに。まだお互いよそよそしい関係が続いている。でも、台無しにしては本末転倒。今は少しだけでいいんだ。
「はい、お弁当だよ。お母さんから預かったの……」
新しいお母さんでもある梨子さんとは話せるんだけどな〜
でもって、白陽姫さんは今日私よりも早く登校していた。けど、お弁当を忘れて行ったので代わりに私が白陽姫さんに届ける任務になったのだ。
「ごめん、忘れていたよ。ありがとう」
「お母さんが『珍しいこともあるんだね』って言っていたよ」
「少し考え事をしていたから……せつな。ありがとう」
ま、眩しい……私の義姉は人間なのか。天使や天女ですって言われた方がまだ納得がいく。笑顔一つで私の肉体は消え去る攻撃を放っていた。しかし、改めて白陽姫さんを見ると……なんていうか。美しかった。
変な言葉を並べるよりシンプルな言葉が一番。なのでもう一度言います。美しい、これに尽きる。
「せ、せつな……」
「うん?」
「いや、なんでもない。お弁当ありがとう」
そう言い残して自分の席に戻る白陽姫さん。白陽姫さんの後ろ姿はなんだか寂しさがあった。
「お帰り〜」
「................一つ言っていいかな、真凪さんや〜」
哀れな目でまだコーヒー牛乳を飲んでいる友人を見る。
「友人として言わないと……真凪。その内、本当に糖尿病になるよ」
私の机に空箱のコーヒー牛乳だった残骸たちが残っていた。そして……
「二人も、真凪をどうするつもりなの」
教室の一角に弓永せつな、私の学園での全交友関係が揃っていた。
いまだにグデーっとした顔で何本目か分からないが未だにコーヒー牛乳を飲んでいる茶髪の新藤真凪。ちなみにゲームで彼女の赤髪だったのはゲーム内でいじった姿でもある。
左にいるのはお菓子の料理本を読んでいる水色のセミロングの楠木みはる。
右にいるのはブラックコーヒーを飲んでいた薄い紫のショートヘアーの九条奏。
「懇願されちゃってね」
「いやね、仕方がなくやった。だからあたしたちは無実」
「自ら自白しているの分かってる?」
三人とも一年からの同級生で私の友達。他にも交流がある人たちがいるけど、目の前にいる三人が一番付き合いが長い。だから自然と話せる間柄。
「で、せつな。噂のお義姉様とはその後、どうなの」
奏も真凪と同じで、ニヤニヤしていた。
「ご想像にお任せします」
奏がみはるに耳打ちし始める。
「聞きましたぁ、奥さん。『ご想像にお任せします』ですって。なんてハレンチな娘さん。一体何を言ってるのかしら、せつなさんは……」
おっとりとした口調で話し始めるみはる。
「ダメだよ〜 かなでちゃん。目を瞑るのが淑女としての作法なのよ」
「なるほど!! 勉強になります、みはる先生」
「そろそろ、怒っていい?」
「カルシウム足りないんじゃない? 飲みかけのコーヒー牛乳あげるよ」
「コーヒー牛乳ってカルシウム入っているの……」
「”牛乳”って記載されているんだから間違えなく入っているよ」
「気持ちだけ貰っておくよ」
ため息をする真凪。
「は〜〜あ。そうだよね、せつなは私の飲みかけなんていらないよね。は〜〜あ」
「もうぉおおおおおおおおおお!!!! 分かったよ、飲めばいいんでしょう、飲めば!!」
片手で飲みかけのコーヒー牛乳。もう一方の手は自分の腰に置く。さながらお風呂上がりのスタイル。
……あのさぁ、奏さんと真凪さん。携帯端末で写真や動画を撮るのやめてくれません。
飲み終えたら速攻で消去してあげるから待ってなさい
どっかの灯ちゃんに似ているな〜
弓永せつな→女友達に振り回せる系の女の子
弓永白陽姫→王子様系だけど根は乙女?
新藤真凪→せつなの友人A。脱力とマイペースの融合女子。周りからよく甘いものを貰える。
楠木みはる→せつなの友人B。おっとり癒し系女子。将来はパティシエ。
九条奏→せつなの友人C。体を動かすのが大好きな女子。意外にも観葉植物が大好き。
三人ともせつなが高校一年時のクラスで知り合いになり、一年生の五月に行われた林間学校のトラブルがきっかけで友達となる。