せつなは今日も女王になる
「ユミナ様、本日の行き先のご予定は......」
大きな柱が何本もある謁見の広間に、騎士であるヴァルゴの声が響く。
赤絨毯に膝をつき、王座に座っている私に礼の姿勢をとる。
「……素材を集めましょうか」
「かしこまりました。人選はいかになさいますか?」
「前衛担当レオ。私と同じで後衛担当のサジタリウス。回復担当でアリエス。そして、ヴァルゴ。私と一緒に来てくれますか」
「はっ! 私の命はお嬢様の物。お供します!」
私は慣れた手つきでステータス画面を操作。戦闘準備をした。
私のお抱えNPCで私の知る中で最高の鍛治職人のタウロスが製作してくれた、純白のドレスを装備。
流麗な桃色の長い髪が靡く。
メイン武器の黄金の錫杖、サブ武器の漆黒の両刃直剣の耐久値に問題がないか確認する。
素材集めなので、LUK値を底上げしてくれる女性専用のアクセサリー品で銀色のサークレットを装着。
緑と赤のオッドアイで全身をチェックした。
(問題は......ないようだね!!)
私は厳かな広間を出て、城内を歩く。
(なんで……)
城内には多種多様な種族が在籍している。全員が女性NPCとなっていた。
あまり見ない。私が通り過ぎるとみんな、何故か目をハートマークにしてふらふらと倒れていく。
全くもって不思議な光景だよ……うん、実に不思議な光景……
城の城門が見えてきた。門にはオレンジ色の髪で獣人族で職業が剣士で男勝りで女性NPCのレオ。レオと話をしているのは茶髪で人馬族で上半身が人間、下半身は人馬。遠距離武器が得意な女性NPCのサジタリウス。私のとは形状が違う錫杖を地面に置き、三角座りして魔導書を読んでいる。愛用のメガネをかけている金髪で元聖女で羊の角を生やしている女性NPCのアリエスが待っていた。
(なんで……)
「揃っているようね」
隣に付き従う青紫色の髪に『私の正装は騎士服のみ』と頑固者。一向に甲冑服以外を着てくれない女性NPCで騎士のヴァルゴ。
(なんで……)
私の存在を感知したのか即座に姿勢を正して、一列に並んだ三人。
「ユミナ様、いつでも出発できます」
(私はただ……)
「ありがとう、ヴァルゴ。レオ・サジタリウス・アリエス。今日は私のわがままに付き合ってくれてありがとう」
「「「勿体ないお言葉です!!」」」
礼の姿勢をとる三人。
「行きましょうか」
(ただ……義姉と)
外へ出る私たちの周りに鮮やかな花びらが舞う。舞ってしまうのはメイン職業である『星霜の女王』のせい。プラス厄介な条件がある。けど、『星霜の女王』の性能はなかなかによい効果を持っているので外すに外せない。
私たちは王城近く、森のステージでもある『隠森棲幽』に入る。
城から東に進むと煙を常時、纏っている槍を持った骸骨モンスター:シュペーア・ゲシュペンストが出現する。
コイツが落とす遺骨の残骸が欲しい。入手の確率が低いので元々プレイヤーが獲得できる幸運値だけでは出ない素材。なので外付けで幸運値を上げる必要がある。
幸いにも私が持っている錫杖はパーティーメンバーの数だけ幸運値が倍加する能力がある。さらに私が装備しているサークレットは装着者のラック値が2倍になり、追加効果で毎秒リジェネ発動されるアクセサリー。
「……皆さん、来ました。戦闘準備!!」
お目当てのモンスターが出た。あとは素材集めの時間に費やす問題だけ。
私たちは戦闘を始めた。
戦いの思考にしないといけないのに私は別の思考が巡る。
(私はただ、義姉と仲良く話すために始めたゲームなのに…………)
私の攻撃がシュペーア・ゲシュペンストの胴体に直撃。怯んでいる、シュペーア・ゲシュペンストにたたみかけるレオとヴァルゴ。
シュペーア・ゲシュペンストは砕け、地面にアイテムが落ちる。アイテム回収が終わった女性NPCたちは私の方を向く。全員が頬を赤らめ、瞳がハートマークになっていた。
見た目は鷹揚に笑っているが私の内心は真逆の表情。
(……なんでこうなったぁぁああ!?!?!??!?!!)
頭の中で絶叫しながら私、弓永せつな。VRMMORPG『オニキス・オンライン』で『ユミナ』として今日も女性NPCたちの女王をしていた。
次回は明日になります。よろしくお願いします。
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