9話:ホットドッグ屋
「みなさま、今日から宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願いします!」
八月一日。無事にホットドッグ屋のオープンに漕ぎ着けた。
町でホットドッグ屋を始めるにあたり、学校にも支店か、ホットドッグをメニューに入れさせて欲しいと要望があったのには驚いた。体育祭の後、かなりの数のホットドッグ販売の要望があったそうなのだ。
お父さまに相談した結果、学校には支店を出す方でお受けする事となった。
パンはカフェテリアで一緒に焼かせて頂き、四人並んで販売が出来る専用のカウンターを割り当てて頂けた。
洗い物等はカフェテリアにあるものを使うから、ソーセージが焼けて、パンやその他の具材を置いておけるスペースがあるだけの販売所だけどね。
夏休みの間、そこから一人料理人が町のホットドッグ屋へ来るの。そして、私の代わりに、私がいない時間も指導してくれる事になっている。
裏ではトマトやキャベツのカットといった具材の準備もするが、専用のパンも焼く。その分、ただの持ち帰り専門店より広い厨房を作っている。
「手も調理器具も、全て清潔に!
笑顔で迅速な接客を!
この二つは、必ず守って下さいね!」
「手も調理器具も清潔に!
笑顔で迅速な接客!」
「そう、忘れないでね。そろそろ時間ね。みんな、担当の位置について……
開店するわよ! 良い? オープン!」
町に教会の朝8時を報せる鐘が響き渡る。それを合図に、表から木戸が開け放たれると――――
何と、二十人ほどが開店を待ち構えていた。先頭は、ミレーと彼女の従兄弟だ。
「シャーリー、ホットドッグ屋さんのオープン、おめでとう! これ、お花。良ければ飾って」
「おめでとうございます。私からも、花束を」
「まあ、二人共! どうもありがとう。とってもキレイな花束ね」
嬉しいサプライズに驚きがおさまると、にこにこが止まらない。
「後ろもつかえているから、話はまたゆっくりしましょう。私はプレーンタイプに、トマトのトッピング。マスタードは少なめでお願い」
「私はベーコン巻きホットドッグに、レタスとチーズのトッピングで頼むよ」
「畏まりました! プレーンタイプにトマト、マスタード少なめがお一つ。ベーコン巻きホットドッグに、レタスとチーズのトッピングがお一つですね!
……お待たせしました! お気を付けてお持ち下さい」
「ありがとう! シャーリー、またね!」
「シャーリー嬢、ありがとう。それでは」
以前、学園でオーダーした事のある二人が一番に注文してくれた事で、注文の仕方とメニューの看板は立てておいたものの、不安げだった方たちがスムーズに注文をし始める。
会計口でオーダーと会計を済ませ、横にズレてオーダーした内容のホットドッグを受け取るのだ。
ホットドッグで、もっとボリュームのある物もという事で、さっき注文してくれた『ベーコン巻きホットドッグ』と、他に『ダブルホットドッグ』も取り入れてみた。これはソーセージが二本になる。
町なら、安くてお腹一杯になるものが売れそうだしね。
豚肉のソーセージが一番人気だが、羊肉のソーセージも根強い人気があると分かっている。町では、羊肉のソーセージのホットドッグも試しに販売している……
「羊肉のホットドッグ、玉ねぎとピクルスをトッピングが二つです! ありがとうございます!」
「羊肉のプレーンホットドッグに、プレーンホットドッグが二つですね! お待たせしました!」
なるほど。庶民は、牛肉より羊肉が安くて親しんだ肉なんだわ! 牛肉のソーセージは中止して、豚肉のソーセージが主力。それと、羊肉のソーセージがあれば良さそうね。
後でソーセージを頼んでいる店に牛肉のソーセージは止めて、羊肉のソーセージを卸してくれるように頼みにいかなくっちゃ。
初日だし、見慣れない食べ物であるホットドッグ。売れる時と売れない時間の差が大きかったものの、日を追うごとに順調に売上げが伸びていった。
料金と相談ながら、一つでお腹一杯になるボリュームから、小腹を満たすプレーンまで好みで選べるのが受けたのだ。
「あ、今日はシャーリーいるんだな!」
「あら、マックマッドさん! いつもありがとうございます」
「看板娘がいると、やっぱり華があんな!」
「私が看板娘? ふふ、ありがとう。お世辞でも嬉しいです!」
「いや、シャーリーが看板娘でなきゃ、いったいなんだよ?」
「……オーナー?」
「それは合っているが……間違っちゃいないが……」
時々お店に入ると、常連さんからは看板娘と言って可愛がってもらえるようになったよ!
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